閑話 シュバルツ家の事情
閑話となりました。こういったサブキャラに焦点を当てた話というのは、入りと終わりが難しいですね。
出来る限り時間軸を崩さずにやろうとしているせいか、どうにも設定が小出しになってしまいます。
本当は設定とか全部箇条書きで出したいんですが、出来る限り世界観を崩したくないという我が儘からこんな形に……すみません。
そんな本作品ですが楽しんでいただければ幸いです。
リジィー・スロード……かつて人間に滅ぼされた魔王が……スアー公国首都ブレマス、その国の象徴とも言える、巨大な城にて行われるパーティーに参加する為、その場所を訪れた次の日……
城の内部の者の多くは、明日行われる盛大なパ―ティーの準備に追われていた……
しかし、それはこの城で働く、下働きの者の仕事である。だから……リリアの一日は全くもって変わらなかった。
「あ~~~~もう!!何がいけなかったのかな!?」
リリア・ネガ・シュバルツは、自室でベッドに転がり暴れ回る。その衝撃を吸収し、包み込む様に体を覆うそのさまが、まるで慰めている様に思えて尚腹立たしい。
……普段ならそんな事思いもしなかっただろう、しかし彼女は昨日の失敗に対し、絶賛後悔中であった。だからこそ、そんなどうでもいい事にさえ怒りが湧いて来てしまう。
……彼女は、昨日自身の全てを賭けた告白をしたのだ。それを断られたのだ。……本来なら断られるはずの無い告白だった。むしろ断る様な人間がこの国にいるとは思えなかった。
「公王だよ!?公王!!この国の全部が手に入るんだよ!?……それに私も一緒についてくるし……ともかく、普通断らないでしょ!!」
公王という立場は、とても魅力的な話であるはずだった。だが、彼の色は薄い白色でしかなかった……
つまり、多少興味はあるがほぼほぼ無関心……という事だった。……公王となる事が出来る、という話を聞いての反応としては、普通有り得ない物である。
ただ……リジィーは自身にはやるべき事があると言っていた……
それは……公王の地位よりも優先される物らしい……彼はそれを教えてくれる気は無いようだが……
それならば仕方ないとは思う、それだけ……公王の立場を蹴ってまで……成し遂げたい事が彼にはあるのだという事だから……
理屈では理解しているつもりだ……これでも、人の内心を読む……見るのには長けているのである。
それでも、私の感情は別である。
「角度がいけなかったのかな?それとも手の置き方?……少し声のトーンを落とし過ぎたとか?」
リリアの考えでは、物事は大きく分けて二つに分けられる。
原因と結果……突き詰めてしまえば、単純に表されるその二つは。原因を改善すれば、結果を変える事が出来るという思考に基づいての考えだ。
だからリリアは失敗した原因を模索する。もちろん結果を変える為にである。
「肩を掴んだのがいけなかったとか?……思えば初めから警戒心が強かった……連れ出し方を間違えてしまったか……」
問題点を上げていくと切りが無い、しかしそれは、現時点で自身が出来る最高の行動だったはずだ。
……だからこそ、女性としての尊厳を傷つけられた様な気がしてしまうのだが……
ともかく、これ以上を求められるとしたら、今の自身には到底不可能であろう。ならば、原因を全て変えてしまうしかない。
「……やっぱり雰囲気って大事よね。そう考えると夜、月明りが照らす中がベスト。その上で考えるのなら、今日じゃなく明日に動くべきね。今もちょっと立ち直れていない心もあるし、それに加えて押し込んでいる印象を与えたくない。一日、間を空けた方が良いはず。そして丁度明日はパーティー……リジィーの事だから、途中でパーティーを抜け出すだろうから……其処に偶然会った風を装い……うん完璧!!」
思わず両手で握りこぶしを作っていた。それほど、自身の考えに自身があったのだから当然だ。
後は細部を細かく詰めていく必要があるだろう。その上で若干の修正は必要だろうが、今日一日を費やせば十分対処できるはずだ。
……リリアには、リジィーを諦める気など初めから無かった。それは彼に恋をしたというのもあるが、それと共に、この世界では、彼しか自身の事を、本当に理解してくれる人物がいないと思っての事だった……
だからリリアは行動する、それがたとえ叶わぬ願いだったとしても。叶える為に……
「リリア王女。公王様がお呼びです。」
「っひゃい!!」
突如鳴らされた爆音に驚き、考えに耽っていた頭を切り替えながら、裏返った声で返事をしてしまった。
その気恥ずかしさから、この部屋に現れたその人物に、ついつい文句を言ってしまう。
「……アリス。部屋に入る時はノックをしなさい。」
この部屋に突如入ってきて、その大きな声で此方を驚かせたのは、アリス・エレクシア……スアー公国正規騎士団、その団長である。
彼女の髪は薄い金髪……それを長く伸ばし、馬の尾の様に一つに括っている。その顔は凛々しく、まるで他者を切り付ける様な鋭い目が印象的である。
そして、チーム「コプレーション」。そのメンバーであるユリス・エレクシアの姉だという事もある。
……ただ、雰囲気的には明らかにユリスの方が姉だと思ってしまうのは、私だけでは無いはずだ……
そんな彼女は、扉付近で固まり、此方の様子を伺っていた。
「リリア王女。僭越ながら申し上げます。しっかりとノックをいたしました。しかしご返事が無かったので、状況を確認する為に中に入らせて頂きました。」
……すごい恥ずかしい……
考えてみれば、このアリス……スアー公国正規騎士団の団長である、アリス・エレクシアが、そんな初歩的なミスをする訳がないのだ。
それを確認もせずに、嫌味を垂れてしまった……これほど恥ずかしい事はあるだろうか?
……私の顔色を伺いながら、アリスは私の言葉を待っている。その色には不安が見て取れる。
当然か……私の不興をかってしまったと思ったのだろう。……その姿に尚、後ろめたさが私に圧し掛かる。
「アリス、昨日はご苦労。貴方には悪い事をしてしまったわね。」
その思いを断ち切るために、彼女には昨日の事について感謝を示す。
その言葉に、軽い礼を返しながら、アリスはその声を張り上げながら答える。
「ありがたきお言葉!!……ですが、少しばかり疑問があります。何故、リジィー・スロードとその一味が、武器を所持しながら城に入るという事を、部下に伝えさせなかったのでしょうか?恥ずかしながら、私の知恵ではその答えが出そうにないので教えていただきたいのですが……」
私よりも年上である彼女は、優秀な剣士である。その腕を買われ、女性ながらに正規騎士団に所属し、尚且つ団長の座まで上り詰めたのだ。
しかし……男性に好意を寄せた事は無い……という事実もある。だから、たとえ言ったとしても、その思いを理解できるとは思えなかった。
「……アリス、貴方恋はした事あるかしら?」
「……いえ、お恥ずかしながら、異性との縁は今まで無かった物で……」
「なら言っても解らないわ。……別に意地悪している訳ではないのよ。ただ、きっと貴方も恋をすれば解るわ。」
「……はぁ……そうですか?」
彼女には困惑が現れている。それを無視し、彼女には下がって貰う事にする。
「お父様が呼んでいるという話よね。後で向かうと言伝してもらえないかしら?」
「御意!!」
アリスはその体から、熱の様な色を発しながら部屋から出ていく。
その色を眺めながら考えるのは、どうしてもリジィーの事である。そして、その目的にも思いが行ってしまう。
公王になるよりも大事な事だというそれは、彼についている、二人の少女も知っている事だとも言っていた……
「ねぇリジィー。私には、こんなにこの世界が色鮮やかに……そして醜く映っている……貴方には、この世界がどう映っているの?」
呟かれたリリアのその問いは、誰にも聞かれる事無く虚空に消えていった。
◇◆◇◆◇◆◇
スアー公国ブレマス城……その広い城という空間にて、公王が活動出来る場所は酷く限られている。
来賓をもてなす応接室、休息をとる為の寝室、書類の作成及び雑務を行う執務室、そして……現公王の権力を表す様に作られた、豪華な玉座の間……其の4か所である。
それ以外の場所には、特別な理由が無い限り移動する事さえ許されない。これは国の規律により決まっている事なのである。
スアー公国現公王、アーノルド・ネガ・シュバルツは、執務室にある巨大な机、その上に山と積まれた書類に目を通しながら。自身の過去……一人の女性について思いを馳せていた。
彼は……現公王のアーノルド14世は、生まれながらにしての公王であった訳では無い。
彼はとある貴族家の出身であった。そんな彼は、若いながらに優秀であった。
剣や兵法などの武力はもちろん、内政にも秀で、周りの貴族と前公王に取り立てられ、その20という若さで公爵となった……いやなってしまった。
……当時の私はとても不安だった。当然だ、周りの期待と嫉妬が、まだまだ未熟であった自身に圧し掛かったのだ。それに対し何も思わない方がおかしいだろう。
だが、そんな不安を取り除いてくれる人物と出会う事が出来た。……それは一人の女性だった。
年齢は解らない、幾度となく聞こうと思ったが、女性に歳を聞くのは失礼だと窘められ、結局聞く事はできなかった。
それでも、外見の若く美しい姿とは裏腹に、落ち着いた雰囲気を持っていた事から、年上の女性なのだとは思っていた。
そんな奇妙で幻想的な雰囲気に引かれ、或いは一時の感情に流されていたのかもしれないが……
……私は本気で彼女を愛していた。
今でもその思いは変わる事は無い。出来る事なら、私の隣で、妻として支えて欲しい位である。
でもそれは叶わなかった……
私は運がとても良く……そして悪かった。
私の前に公王を務めていた方、前公王には子供がいなかったのである……
男に問題があるのか、女に問題があるのかは解らなかったが……前公王の世継ぎが生まれる事が無く時は過ぎ。
いよいよ、子を作れる歳では無くなってしまった段階で、養子として誰かを迎え入れ、その者に公王の座を継ぐことが決まったのである。
ただ、前公王が出した条件は厳しかった。自身の失敗も踏まえ、歳は30を過ぎぬ者、尚且つ、貴族位では最高位である、公爵位の者に限定したのである。
その条件に合致するのは、私、アーノルド・ネガ・シュバルツしかいなかった……
結果として、私は齢にして28という若さで公王となった。
……それが今から17年も前の話である。
……そして一生忘れられぬ年でもあった。
「グリフ、やったぞ!!次期公王だ!!これもお前が支えてくれた御陰だ!!ありがとう!!」
今でも思い返せる。次期公王になる事が決まり、喜び、誰よりも早く彼女に伝えたかった私は、急いで間借りしていた住居に戻ったのだ。
扉を開き、彼女の体を抱きしめながら、感謝と幸福の感情を彼女にぶつけた。
だが、それに対する彼女の反応は困惑した物だった。……その時の私は、次期公王になったという事を、嘘だと思われたと感じたのだ。だから彼女に自身の手にした、その書類を見せようとした……
「ううん、色で解るよ……アーノルド……ごめんなさい。私、貴方を騙していたの……」
その動きを遮り、彼女は私の拘束を解き、少し離れて視線を落としていた。
理解できなかった。彼女なら……長年私を助け、愛してくれた彼女なら、喜んでくれると無条件で思っていたからだ。
だが、そんな思いも、彼女の言葉で崩されてしまった……
「私……人型の魔族なの。歳も本当は100を超えているの……だからもうこれ以上貴方と一緒に居られないわ。」
衝撃的だった……人と変わらぬ姿をした魔族がいるという事は知っていた。しかし、それがこんなにも近くに……それも自身が愛した女性だと言われたのだ……
それと共に、彼女は私と別れるつもりなのだとも告げた。……当然だ。どこの国に、魔族を妻として置く王がいるだろうか……
理屈で考えれば、彼女の申し出を断る理由は無い。……だが感情は別なのだ。
「そんな事どうでもいい!!私は、グリフ!!お前の事を愛しているんだ!!国がなんだ!?お前が居なくなる位なら、私は国なんかいらない!!」
「駄目だよ……アーノルド……私は貴方の為になら命だって投げ出してもいい……でも、貴方が私に尽くすのを、私は許せない……だからお願い。……もう終わりにしましょう。」
「駄目だ!!私は……お前の事が好きなんだ!!愛しているんだ!!こんな書類でお前が去ってしまうというのなら、こんな書類なんか!!」
「待って!!」
激情に駆られるままに、自身の手にした書類を破り捨てようとした。それを彼女は慌てて止める。
離れた距離は再度縮まり、今度は彼女から私の体を抱きしめてくれた……
「……アーノルド……ありがとう。その思い、嬉しいよ……だから今日は、めいいっぱいお祝いしましょう。」
彼女の優しい声音に、その激情をすぐさま冷やし、彼女の体を抱きしめ返した……
今思い返せば、もうその時に彼女の答えは決まっていたのだろう。
その晩、珍しく彼女から迫ってきて、それに応え事が終わった後、疲れて眠ってしまったが……起きてみれば彼女の姿は其処には無かった……
彼女は、私の為にその身を引いたのだ……
……勝手な話だ。こんなにも愛している男性をほっぽり出して、人知れずどこかへ去ってしまったのだ……
怒りにも近く、嘆きにも近いその複雑な感情のまま、それでも彼女の思いを……公王の座に私が付くという事を、否定する事は出来なかった……
気が付けば、彼女が私の下を去った時から、既に7年の時が過ぎていた。
追われる激務に身を投じ、あらゆる問題の解決に従事していると、時が過ぎるのは早い物であった……
そんな折、一つの手紙が私の下に届いた。差出人の名はグリフ……今も忘れる事が出来ない彼女の名だった……
急いで封を切り、その内容に目を通す。要約すると、頼みたい事があるのだという……
今更なんだとは思う。私の思いを踏みにじり、別れの言葉も無く去って行ったのはあっちなのだ……
それに答える義理も何もないはずだった……
しかし、体はすぐに行動を起こしている。緊急で上位貴族を呼びつけ、外出許可を出してもらえる様に呼びかける。
急の事で渋る上位貴族達に、国の一大事だと告げ、半ば強引に取り付け、最低限の供を引き連れ、その場所に急いだのだ……
其処は小さな森であった……
その中に人知れず建てられた小さな小屋、そこが彼女が指定した場所である。
引き連れてきた者は不思議そうにその小屋を見ている。彼らにここで待機する様に指示し、私は躊躇う事無く、その小屋の中に足を踏み入れた……
其処には二人の人影があった。一人は小さい女の子、そしてもう一人は、年老いた老婆であった……老婆はベッドに寝たきりになり、その枕元に立ちながら、少女は此方を不思議そうに見ていた。
……何故だろうか……私はその老婆が、愛しているグリフであると解った。
扉の前から歩を進め、ベッドの傍らに立ち、彼女の言葉を待った。
その顔は、記憶にある物とは全くの別物である。しかし、それでも愛おしかった……
「アーノルド……来てくれたのね……ごめんなさい。本当は……こんな姿見せたくなかったんだけれど……もう……長くないみたいだから。」
その声は枯れ、自身の記憶にある声とは似ても似つかない。多分だが、彼女はこの姿を私には見せたく無かったのだろう。
「グリフ……その姿は?」
「うん、これが貴方と別れた答えよ……私の体は、子供を一人産むまでは、最高の状態を保ち続けるの……でもそのしわ寄せは、子供を産んだら一気に来ちゃうのよ……」
……だから私が必死に求めない限り、体を許して来なかったのだろう。そしてそれと共に、この少女が私の娘なのだと解った。……きっと歳は7歳なのだろう。
「……本当に馬鹿な女だよ。お前は……聞かせてくれ……何故お前はそうも私に尽くせる?」
瞳を開き続けても乾燥する事は無くなっていた。揺れる視界の中、それでも私はグリフに問いかける。
それに対し、既に皮の方が多いのではないかと思う顔を歪ませ、笑いかける。
「当然でしょ……愛してるからよ……だから、そんな色を出さないで頂戴……後、ごめんね。男の子じゃなかったよ……」
「もういい!!もういいんだ!!グリフ!!」
思わず叫んでいた。出来ればその体を力一杯抱きしめてやりたかった。だがそれも、彼女の今の枯れ木の様な体では叶わない。
ただただその場に立ち尽くし、どうしようもない感情を表す事も出来ず、瞳から流れ出る悲しみをそのままにしていた。
「おかあさん、このひとはだれ?」
そこで少女が……私の娘が口を開く。その声は疑念に満ちている物だった。
「リリア……この人が貴方のお父さんよ。今日から、この人と一緒に暮らすの……できる?」
グリフの声音は母親のそれである。そんなグリフの問いかけに娘は、出来ると元気よく返事をし、私を観察し続けている。
……先も言った通り、もう長くないのだろう。本当は、もう少し育つのを待ってから私に合わせるつもりだったのかもしれない。
ただ、それも不可能になってしまったのだろう。だから私に引き取って貰いに来たのだ……
「グリフ、私が引き取らないと言ったらどうするつもりだったんだ?」
思わず意地悪な質問をしていた。今までの時間の空白を埋める様に、彼女の骨ばった額に手を触れ、優しく擦りながら問いかける。
それに気持ちよさそうに目を細めながら彼女は答える。
「いう訳ないよ……だって子供が欲しいって言っていたの、貴方じゃない。遅くなってごめんね……」
「……馬鹿だよ……本当に……そんな……昔の事を……でも、ありがとう……グリフ。大好きだ。」
嗚咽が止まる事はもう無かった。瞳から流れ落ちる水滴は、頬を伝い落ち、彼女の頬を濡らす。
もう一生会う事は無いと思っていた女性は、その水滴を冷たそうに浴び、私に額を撫でられながら……静かに息を引き取った……
私のその後の行動は半ば事務的な物であった。
待機していた連れの者と合流し、彼らに娘を丁重に扱う様に指示をし、彼女の亡骸がある小屋に戻る。
そして、その小屋に火を放ったのだ。
突然の奇行に、周りの者が驚いたの様にしていたがそんな事はどうでも良かった。
ただただ私は、天に昇る黒い煙を眺めながら、その火が燃え尽きるまで、何時間もその場に立ち続けていた……
それが……この世界で私とリリアしか知らない、リリアの出自の話である。
印を押し終えた書類の束を、机に軽く叩く事で纏める。
今でも、グリフ以外の女性と結ばれようとは、決して思えなかった。きっと今の私の姿を見たら、彼女は私の事を馬鹿だと怒鳴り散らすのかもしれない。
それでも、やはり……感情というのはどうしても優先されてしまう……
そんな経験があったからかどうかは解らないが、リリアには、本気の恋をして、その相手と結ばれて欲しいとさえ思っている。
……周りの上位貴族が聞いたら怒るだろうが、最悪、駆け落ちしてくれてもいいと考えている。
「……それは、私があの時出来なかったが故の考えかも知れんな……」
誰もいない執務室の中、自嘲気味にその呟きがこぼれてしまう。
本来なら、公王が持ってはいけない考えだろうが、今まで必死に国に尽くしたのだ。それ位の我が儘位……それも愛する娘の為の物位、許してくれてもいいはずだ。
「その点、リジィー・スロードは中々に優秀だな。権力に恐れを持っていないし、何よりリリアはあの者を好いているようだ。劇的な結ばれかたをしてくれればいいのだが……」
そういう思いもあったから、わざわざリジィー・スロード個人に対して、周りの反対を押し切り、招待状を出したのだ。プライド侯爵の助力もあっての事だが、彼もリジィーには何かしらの思い入れがあるらしく。想像以上の助力を得られた。
それと共に、プライド侯爵の忠告にも懸念が浮かんでしまう。
「反逆者……か。リリアに危害が加えられなければいいのだが。」
その忠告の為に、先ほどからずっとリリアを待っているのである。一応アリスから、もう間もなく、此方に来る旨を伝えられていたが。……一向に来る気配が見えない。
考え事をしながらも、書類を片づける速度は変わらない。アーノルド・ネガ・シュバルツは子煩悩な父であり、優秀な公王でもあった。
という訳で、シュバルツ家……主にアーノルドさんの過去話でした。
アーノルドさんは世界が違えば主役になっていたかもね……割愛しましたが、グリフとの出会いは、襲われている所を助ける所から始まる予定でした。
妄想を働かせれば、短編で一本書けそうな気がするキャラの一人ですが、その予定はありません。
まだまだ出し切れていない設定が多々あり、小出しになっている現状ですが。楽しんでいただければ幸いです。
ではまた次回の機会に




