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リベンジ魔王  作者: 蚊家津
20/50

リジィーズブートキャンプ

今回……というよりかは昨夜からですが、レイアウトの変更を試してみました。


これで少しでも読みやすくなっていたら良いのですが、もし逆に読みづらくなっていたら。適当にメールか何かに文句でも書いてくだされば、前のレイアウトに戻します。


作者の環境がら、スマホによる確認が出来ないので、もしかしたら其方の方は読みづらくなっているかもしれません。そういった方も文句があればご報告ください。よろしくお願いします。

 魔王城の内部には様々な施設が存在する。

 サロスが普段活動している工場に始まり、料理を作る為の厨房や、様々な武器防具などを保管する武器庫、多種多様な道具やマジックアイテムを保管する道具部屋、価値ある金品を保管しておく宝物庫などなど、上げればきりがないが多くの施設が存在した。


 そしてこの修練所もその施設の一つであった。


 多くの者が一度に鍛錬を積める様に、とても巨大に作られたその場は、人間の体はもとより、昔の魔王の姿でも、端から端まで走り切るにはそれなりの時間が必要だった。

 壁には模擬刀から始まり、多種多様な武器が揃えられ、一定の区間ごとには、様々な大きさの、鉄でできた案山子が無造作に積み上げられていた。

 

 「よ~~し、準備体操は済ませたな?僕がさっき言った通り、これから君達には腕立て伏せをしてもらう、自身の限界だと思ったらそこでやめていいからな。」


 その広い空間に響き渡る声があった。少しばかり靄のかかった様なその青年の様な声は、並べられた男子奴隷の前、そこに立った石の人形から発せられていた。

 リジィーはそのゴーレムの先にいる人物に声を掛ける。


 「ご苦労ニルブニル、私もこの場を使わせてもらうが……いいかな?」


 その突如掛けられた声に、ニルブニルは慌てたように、無骨な石の体を回し、此方に向き直る。


 「リジィー様!?もちろんです。むしろ許可が必要なのは此方です!!」


 「いや、後から来たのは私だ……ところで、腕立て伏せをさせるのは、今の筋力を暫定的に測るためか?」


 きっと本体は必死に頭を下げているのだろう。それに苦笑を返しながら、世間話程度に自身の考えを聞いてみる。

 それに、ぶんぶんとゴーレムの首を縦に振りながら、ニルブニルは答える。


 「ええそうです!!それと共に成長を実感させる狙いもあります。」


 「ふむ、素晴らしい。やはりお前に任せて間違いなかったようだ。今後もこの者達の成長に貢献してくれ。」


 労いの言葉と共に、その場から離れ待たせていたブラウの下へ戻る。

 俺の背には、より一層、張り切ったニルブニルの声が掛けられている。

 ブラウは、俺の一連の行動を意外そうな顔で此方を見ていた。


 「……意外でした。わざわざ声を掛けるなんて……」


 俺はなんだと思われているのだろうか……部下の働きを纏め、その労に対し感謝を示すのは、上に立つ者の義務のはずだ……

 それすらも怠る、怠け者とでも思われているのだろうか……


 「……まぁそんな事はどうでもいい。ブラウ、体術の心得は?」


 その質問に、ブラウは首を振り答える。


 「なら、何が出来る?何でもいい、得意な事を言ってみろ。」


 「……料理なら多少は……」


 ……そういう事を聞いている訳では無いのだが……

 まぁいいか、そういった技術を持ち合わせていないのだと解釈しよう。

 俺は壁に掛かった刃が潰された刀を一つ手にし、ブラウに持たせてみる。

 それを頼りなく持った彼女は、少し重たそうに構えている。


 「振ってみろ」


 ……やはりまともに触れないか。

 刀の重さに振り回され、尻もちをついたブラウを他所に次の武器を手に取る。


 それは小さな短剣だった。


 リジィーの手の指を伸ばしたその全長、それよりも少し長いぐらいの刃のそれは、レンジャー職の者が好んで使う武器だった。

 何故なら、この武器の利点はその扱いやすさにあるからだ。

 いくら遠距離戦主体の弓を扱っても、どうしても近接戦をこなさなければいけない事がある。

 その際、身に着けていても弓の行動を阻害することなく、尚且つ、咄嗟に受け流しによる防御が可能であるこの短剣は重宝していた。


 もちろん刃は潰してある。

 刀より軽いこれならば問題なく扱えるはずだ。

 その短剣を手渡し再度降らせてみると、動きはぎこちないが問題なく振れる様だった。


 「よし、なら短剣を扱えるように訓練していこう。」


 「はい!!」


 快活な返事が心地良い、ブラウもやる気があるようだった。

 ……だがそれとは別にひとつ気になる事があった。


 「その服のままで大丈夫か?動きが阻害されそうなのだが……」


 それはブラウのメイド服だった。

 というのも、まず間違いないだろうが、スロノドールの趣味全開で作られたであろうそれは、明らかに装飾過多なのだ。

 目には映えるが、とてもではないが動きやすい服装……少なくとも鍛錬に励む服装では無かった。


 「問題ないと思います。こう見えて結構動きやすいんですよ、これ」

 

 その場でくるりと一回転して、その青い髪とメイド服の裾を揺らしながら、ブラウは可愛らしく言う。


 「……本当か?まぁ服が邪魔だと思ったら言ってくれ。他の物を用意させる。」


 一抹の不安があったが、ブラウが良いというのなら、それに従う事にしよう。


 「ではブラウ。早速だが掛かり稽古という物を開始する。……知っているか?」


 「いえ、知りません。」


 掛かり稽古という訓練方法について知っているかどうか聞いたが、その答えは予想通りだった。

 むしろ知っている方が驚く。

 というのもこの訓練方法は、俺のかつての二人の友……魔法を極めた友とは別のもう一人が、俺の訓練に用いた物の一つだからだ。


 「簡単に説明すると……二人一組で行う鍛錬だ。片方が一方的に攻撃し、もう片方がひたすら受けに徹する。攻撃側の目的は受けの者に有効な攻撃を加える事だ。もちろん、ブラウにしてもらうのは攻撃だ。」


 ざっくりとしたその説明に、ブラウは少しばかり戸惑った様だったが、それでも流れ自体は理解できたようだった。

 壁から自身が扱う武器を適当に取り、それを構える。

 

 「よし、理解したならさっそく開始しよう。俺が止めだというまで続ける。それまでは体力が尽きても攻撃し続けろ、もちろん俺を殺す気でな。」


 「……大丈夫なのですか?」


 「刃は潰してあるから大丈夫だ。……それとも、俺がブラウに後れを取ると思っているのか?」


 ブラウは首を横に振る事で答える。そのまま手にした短剣を両手で構える。

 ……両手で構える武器では無いのだがな。

 まぁそこらへんは追々自身で気付くだろう。


 後ろではニルブニルの指導の声が鳴り響いている。

 その声に応える様に張り上げられる、男子奴隷の声を耳にしながら、ブラウの鍛錬は開始された。


◇◆◇◆◇◆◇


 結果を言うのなら退屈極まりなかった。


 というのも、ブラウの動きが遅すぎる。それに力も弱い。挙句の果てにはフェイントを入れる事もせずに、ただただ愚直に突撃してくるだけだった。

 もう何度目になるだろうか、自身の手にした刀で弾き飛ばされ、地面に叩きつけられたブラウの姿を視界の端で眺め。失敗したかな……と内心で思い始めていた。


 実を言うと、俺の目的は二つあった。


 一つは単純に鍛錬としての目的、全力で人に掛かるというのは、想像以上に成長に繋がる物なのだ。だから、ブラウにはそれを今やって貰っている。

 そしてもう一つ、目的としては此方の方が大きいかもしれない。


 ……心を折りたかったのだ。


 別に廃人にしようという訳では無い、ただ、圧倒的な力の差を感じさせる事で、ブラウの心を軽く折りたかったのだ。

 かつて俺もそうだったのだが。一度挫けても尚、上に這い上がろうとした時の成長は、目覚ましい物がある。

 それを期待したのだ……


 だが、ブラウの根性は想像以上だった。


 体力は既に尽きているであろうに立ち上がり、此方を見据えるその瞳には炎が宿っていた。

 これ以上続けても折れそうになかった……


 気が付けば後ろから聞こえる、男子奴隷の声も絶え絶えになっていた。

 きっと、彼らも体力が底をついてきたのだろう。


 ……男子よりきついであろう特訓をしているのに、よくもまぁここまで粘るな。


 再度飛びかかってきたブラウの攻撃を、その場から動くことなくはじき返す。

 受け身すら取れずに、再度地面に叩きつけられたブラウの目には、まだまだ消えない炎が宿っていた……


 「ブラウ、そこまでだ。もう限界だろう?」


 「……ひぃっー……っはー……まだ……だい……じょうぶ……です……」


 必死に空気を肺に取り込みながら、掠れた声でブラウは答える。

 ……なぜこうも、俺の指示に融通が利かない者ばかりなのだろうか。


 「始めに言っただろう、終わりだと言ったら終わりだ。いい加減俺も疲れて来たのでな。」


 もちろん嘘である。こうでも言わないと、ブラウはまだまだ続けそうな気がしたからだ。

 その俺の声を聴いた途端、まるで糸が切れた人形の様に、前のめりに地面に倒れこんだ。

 予定とは違う結果になったが、その根性は十分魅力的な個性だった。


 彼女に休んでいる様に指示を出し。俺はニルブニルの方の様子を見に行く。


 ……そこには死屍累々の惨状が広がっていた。

 

 男子奴隷の全員が、仰向けやうつ伏せ問わず、床に転がっていたのである。

 ニルブニルはその全員を眺めながら、思案に暮れているようだった。


 「あんまり無茶をさせるな、ニルブニル。成長してもらう前に潰れられたら困る。」


 「……一応気は遣ったんですけどね。皆妙にやる気があるみたいで、さっき僕が強制的に休む指示を出さなければ、たぶん今も続いていたかもしれないんですよ。」


 此方もブラウと同じ状況の様だった。……焚きつけたのは俺だが、まさかここまで効果的だったとは。

 ニルブニルにはしっかりと、体調と体力の管理をする様に指示を出しておく。さっきもニルブニルには言ったが、潰れてもらっては困るのだ。

 

 しかしこれでやる事が無くなってしまった……

 

 ニルブニルも手持無沙汰に修練所の内部を見回している。

 だからだろうか、何となくその提案を口にしていた。


 「ニルブニル、俺と戦ってみないか?」


 「……本気ですか?リジィー様。言っておきますが、粗雑に作られたこのゴーレムでも、今のリジィー様には負けないと思いますよ。」


 「解っている、だからこそだ。今の自身の力量を把握して置きたいんだ。」


 俺の突然の提案に、ニルブニルは困った様に進言してくる。それに俺は、自身の考えを余すこと無く伝える。

 実際、それは気になる所ではあった。弱いにしても、善戦出来る弱さなのか、問答無用で敗北する弱さなのかで全然違うのである。

 それを理解したのであろうニルブニルは、それでも問題点を指摘する。


 「僕の……10魔族全員の忠誠は揺るぎませんが。この場にいる奴隷達は……それにブラウもですか……リジィー様が負ける姿を見たら、まずいんじゃないんですか?」


 「その程度で揺らぐ忠誠なら初めからいらない、それに悪事を企てた者がいるのなら、お前たちが私を守ってくれるのだろう?何も問題あるまい。」


 ゴーレムは石の塊だ、その表情からは何も読み取る事はできなかった。

 それでもきっと、ニルブニルは俺の事を、しょうがない人だと思っているのだろう。

 少しばかりの沈黙が続いたが、やがてニルブニルは承諾をする。


 「ありがとう、ニルブニル。もちろん全力で掛かって来い……ただ殺さないでくれよ?また500年ほど待たなくてはなるからな。」


 「もちろんですよ、リジィー様。出来れば、無理を悟った時点で負けを認めてください。それが一番互いに問題は残らないと思うので。」


 その言葉に返事を返しつつ、ニルブニルから離れ距離を取る。互いにある程度の距離を取った所で、それぞれの武器を持つ。


 ニルブニルの……ゴーレムの持つ武器は大きな斧だ。刃は潰されていたとしても、その重さだけで簡単に殺傷できるだろう。

 対する俺の武器は刃を潰した刀。そして体に隠し持った短剣一本である。

 

 ……斧を相手にするのは心許なかった。


 気が付けば、男子奴隷は床に転がりながらも、視線を此方に向けていた。

 後方からも一つの視線を感じる事から、ブラウも同じ状況なのだろう。


 その視線を受けながら、先手を仕掛ける事にした。


 「スピードスペル・マジックショット」


 放ったのは初級魔法。初歩中の初歩であるその魔法は、牽制程度の意味しか持たない。

 事実、ニルブニルはそれを防御する事も、回避することも無く受ける。しかし、衝撃を受けたはずのその体はびくともしない。


 だがそれには構わず、距離を詰める。


 俺の動きに合わせ、ニルブニルが動き出す。俺の動きの到達に合わせ、丁度重なる様に斧を振る気なのだろう。

 しかし俺は足を止めない、一定速度を保ちつつ、半分ほどまで距離を詰めた後、一気に全力を出し加速する。

 ニルブニルは斧を振る速度を速め調整する。この程度なら許容範囲なのだろう。


 そして、そう対処してくれる事を望んでいた俺には都合が良かった。


 「っなぁ!?」


 ニルブニルの驚愕の声が響いた。当然だろう、俺が尚も加速したのだから。

 無詠唱によってその効力を発揮した初級魔法、ブーストスピード……

 その力は、対象の速度を増加させるものである。

 

 だが、それは諸刃の剣でもある。


 何故なら、いくら肉体の速度を上昇させたとしても、それに思考や判断がついて行かないと無駄だからだ。

 魔法が力を発揮したタイミングが一番危ない。足をもつれさせた時点で、その驚異的な速度に地面で肉を削ぎ落とされる事になるのだから。


 だからこそ、生物に……特に自分自身に過剰なブーストスピードを使用する者は少ない。

 もちろん、適度であれば行動を速める事が出来るので、効果的ではある。


 しかし、俺が今使ったのは前者の方、過剰なほうなのだ……


 何故なら、そうでもしない限り意表を突けないだろうから。

 適度であれば当然、魔法に精通しているニルブニルは何かしらの方法で対処する。

 だから、その対処の暇を与えない速度が必要だった。


 残り3分の1ほどの距離など一瞬だった。


 斧はまだ振り下ろされている最中、そのがら空きの胴に擦れ違いざまに一太刀をいれ、通り過ぎる。

 まさに奇襲による一撃だった。


 それを成功させた興奮と共に、自身の現状をどうするべきか困った。


 ……止まらないのである。当然だ、止まれるわけが無い。

 実を言うとそこまでは考えていないのである。

 いかに有効打を入れるか……それしか考えていなかった……


 「スピードスペル・ストップタイム」


 だからそのニルブニルの魔法は助かった。

 気が付けば、体の動きが遅くなっていた。


 「リジィー様。とりあえず一度止めた後に、スロウタイムを重ね掛けして、加速の処理を上回る様にして置きました。1分後位にスロウを解除するので、それまでに加速を切っておいてください。」


 ニルブニルの機転の御陰で、どうにか難を逃れた俺は。スロウタイムが切れたのを確認し、自身が思いの外善戦出来た事に興奮しながら礼を言う。


 「いや~助かったニルブニル。あのままだと、体のあちこちを骨折するとこだった。」


 「……するとこだった――じゃないでしょう!!僕が怪我を負わせるのならまだしも、自分から怪我を負いに行ってどうするんですか!!リジィー様!!もうこれ以上僕の……僕達の不安を増やさないでいただきたい!!」


 「うん、すまなかった。それは謝罪しよう。だがなニルブニル、戦場とは何が起こるか解らない物なのだ……さっきの行動だって、予測出来なかっただろう?」


 「……誰があんな特攻紛いの事をするんでしょうか?予測出来ないんじゃなくて、しなかっただけです。」


 「それがそもそもの間違いだ。現に今する者が此処にいるではないか。」


 「…………忘れてた。この人生粋の戦闘狂だったんだ……。リジィー様、昔の体ならまだしも、今の貧相な人間の体では昔の様な戦闘を控えてください!!お願いします!!」


 ……戦いに対する心構えを説いていたのに、気が付けば泣きそうな声で懇願されていた。

 何がそんなに怖いんだろうか?強者と対峙し、その一撃で散る事が出来るのなら。これほど幸せな事は無いのに……


 だが、俺に忠誠を誓う者からの進言を蔑ろには出来ない。善処しようと告げ、善処では無く約束してくださいと、未だに懇願を続けるニルブニルに背を向け、ブラウの下へ戻る。

 彼女は未だに床に伏しながらも、その顔に興奮の色を浮かべていた。


 その彼女の前に腰を下ろし、彼女に立てるか問う。

 何度か体のあちこちを動かそうと、もぞもぞと動いていたが、答えは首を横に振る物だった。

 ならばこれ以上出来る事は無いだろう。彼女の最低限の回復が終わるまで待つことにした。


 「すごいです!!あんな……あんな風に戦えるんですね!?」


 他にやる事も無かったので、計画の問題点などが無いか頭の中で再度確認していた時、ブラウのその声は掛けられる。


 「当然だ。ブラウもいずれ、あれ以上に戦えるようになるはずだ。」


 それはリジィーの色眼鏡の無い見解だった。

 というのも、自身が人間になって解ったが。この体の成長速度は、魔王の体の比ではないのだ。ならばいずれは、昔の魔王の体すらも超えられるはずだった。

 そして性別は違うが、ブラウも人間である。ならば経験を積めば相応の力量に成長するはずだった。


 「はい!!頑張ります!!」


 その考えを知ってか知らずか、覇気に満ちたその声は修練所に響き渡った。

 遠くでは、ニルブニルが今日の鍛錬を終わらせる事に決めた様で、男子奴隷の全員に指示を出していた。


 その光景を見て、今日のブラウの鍛錬も、終了にしようかと考えながら。

 リジィーは、ブラウが回復するまでの間、他愛の無い会話を楽しむのであった。



という訳で、レイアウトの方はどうでしたでしょうか?


文句が出ない様なら、暫定的にこのままで続けてみます。あったのなら確認次第戻します。


今後とも、魔王一行の行動を楽しんでいただければ幸いです。


ではまた次回の機会に

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