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リベンジ魔王  作者: 蚊家津
14/50

魔王は計画を修正す

ここまで見てくれている方には感謝しかありません。


依然、誤字脱字と文章の繋ぎが可笑しい部分が多々ありますが。楽しんでいただければ幸いです。

 かつて人間に滅ぼされた魔王、彼が根城としていた魔王城、その玉座の間。

 今、巨大な玉座を前に、左右に分かれる様に10魔族の全員が集結している。そして、その列から外れ、玉座の前に跪く影が三つ……

 その三つの影の前に鎮座する巨大な玉座に、リジィー・スロードは腰かけ、頭を抱えていた。


 「なんで……なんで隷属させろって言ったのに滅ぼしちゃうんだよ……」


 「「「本当に申し訳ございませんでした!!」」」


 そのどうしようもない結果に謝罪を返すのは、フエン、ルウワーフ、スロノドールの三人である。

 彼らは、リジィーの前に跪き、出来る限り低く頭を下げている。


 「うん、フエンはいいんだ。ちゃんと隷属させてきたし……でも、俺が欲しかったのは、人手……なんだよ。……それが犬手って……しかもすごい多いらしいし……」


 頭が痛かった。最近その痛みが強くなっているのは気のせいでは無いだろう。

 せめてフエンがゴブリンにあたってくれていれば、もっとどうにかなったかもしれない。次点で鬼か……よりによって一番いらない所にあたったような気がする。

 だが、もう終わってしまった事なのである。これ以上うだうだ言っても何も変わらないだろう、思考は切り替え、次の手を模索しなくては。


 「はぁ……うん、三人ともご苦労、不殺を制限付けなかった俺のミスだ。そう思わないとやってられない……」


 「「「本当に申し訳ございませんでした!!」」」


 少し諦めに近い感情を吐露し、それに対し、再度三者の謝罪が返ってきたのを最後に、彼らを列に戻らせる。

 計画は大幅に狂ったと言わざるをえない、これから、大掛かりな作業が必要になると考えていたからだ……

 なので、他の作業の進捗を確認し、修正案を練らなくてはいけないと切り替える。そのために、各自に確認を取り始める。


 「サロス、汝に渡しておいた設計図の見解はどうだ?」


 「はい、効果自体は渡された設計図、その全てが再現はできます。しかし、魔力消費の抑え方まではうまくいきませんでした。すいません。」


 「いや、良い。なら後で渡すリスト、その上部に記載されている物から順に作ってくれ、その中でチェックを入れている物は、書かれた個数分を至急作成する方針で頼む。」


 その指示に対し、サロスの了承が返ってくるのを確認し、次に移る。


 「ロロス、ゴーレムの進捗は?」


 「恙無く進行中です。とりあえず、超大型以外は書かれた個数分確保、今は、その最後に残った超大型の作成に掛かりっきりの状態です。」


 「解った。しかしロロス、楽しんでいる所悪いんだが、その超大型ゴーレムの作成は一端停止だ。理由は追ってはなす。」


 ロロスの承諾と共に、次に移る。


 「ニルブニル。マジックアイテムの確認作業は終わったか。」


 「はい!!何とか終わらせました!!」


 何故か誇らしげなドラゴンの姿がそこにはあった、そこまで難しい事は頼んだ覚えは無いのだが……まぁ本人が満足しているのならいいのだろう。

 その纏めた紙を受け取り、ざっと目を通す。そこから、自身の考えに少しばかりの確証を得られた事を確認する。


 「最後にアグリウス、ヨル、……リナシー。各員のサポートご苦労であった。」


 アグリウスからは、リナシーの指示が無かった事に対する彼女の反応を聞いていた。

 完璧に忘れていたのである。せめて名指しでサポート指示を出しておけば、結果は変わったのだろうが、アグリウスにはいらない苦労を掛けてしまった。


 三者の謙遜の言葉を聞き、次の議題に移る事にする。


 「さて、諸君らには一度、私の考えを聞いてもらいたいと思う。というのも、これはまだ仮説の段階なのだ。出来る事なら諸君らの意見も聞きたい。もちろん、否定してくれても構わない……良いな?」


 全員の肯定の声が玉座の間を揺らした。リジィーはその声を聴き自身の考えを話し始めた。


 「私は常々考えていた。何故人間は進歩しなかったのかと……魔法技術に関してはシュリの慧眼の御陰で、ほぼほぼ確証に近い部分には辿り着けた。だが問題は生活技術である。」


 リジィーは、かつて人間に滅ぼされた魔王は、自身の考えを語り始める。


 「何故、500年前から進歩しないのか……答えを言うのなら、私は人間共の上層部、そいつらが意図的に進歩を阻害しているのではないかと考える。」


 それは、人間としてのリジィーが見てきた世界でもあった。国を統べる者にこびり付き、その体から甘い蜜を吸い続けている、ゴミとすらいえない存在がいる事を。ああいう奴らが昔から居たとするのなら、やりかねないとさえ思う。


 「理由はいくつかあるが……今大きいのは、このニルブニルが纏めてくれた紙だ。この魔王城から持っていかれたのは、そのほとんどが戦いで猛威を振るう物ばかりである。」


 そして、ニルブニルの纏めてくれた紙が、害虫共の考えを明確にしてくれた。自身にはそれが事実である様に思えて仕方が無かった。


 「私の城から、各国が強力なアイテムを持って行ったはいいが。その所為で互いが互いに手を出せなくなり、結果として人間共の勢力争いは一応の終わりを見せる。しかし、その後に出てきたのは別の不安だ。それは下の者達が技術を得る事で、上の者を快く思わない者達が決起し、反乱が起きるのではないかという物だ。自身達がまともな統治をすれば、出るはずの無い不安を上の者は持ったのだろう。そして、それが意図的に技術の進歩を阻害するという行動に移り、結果として今まで技術が進歩しなかったのだと判断した。」


 それが、リジィー・スロードが見て来た世界で、魔王が出した答えだった。

 だが、これはまだ確定したという訳では無い、何故なら、まだまだ情報が不足していると言っても、間違いがないからだ。


 「……諸君らはどう思うかな?」


 それに対する答えは沈黙だった。当然か、自身でも明確な反証などが返ってくるとは思っていなかったのだ。彼らは俺よりも人間という種族の知識が無いのだから。

 では何故聞いたのか?それは、この沈黙が欲しかったからである。

 沈黙というのは、消極的な肯定であると、リジィーは考えている。それを10魔族は知っているからこその、この反応なのだ。


 全員が、自身に明確な反証が無いから、現状ではそれが正しいと思うという。結果が、魔王は欲しかったのである。


 「よし、ありがとう諸君。とりあえず、目下この仮説を確定させる為に、情報を集める事にしよう。それにあたり、フエン、ロロス、ルウワーフ、スロノドール、リナシー、ヨル……諸君ら6名には人間世界に潜入してもらう事にする。」


 仮説を立証する為には情報が必要不可欠だった。其の為に、リジィーは10魔族を人間世界に送り、情報を得るつもりだった。

 自身が動いても良かったが、リジィー・スロードは人手をどうにか工面する方向で動くつもりであった。


 「それに伴い、6名には人間世界の常識について学んでもらう。これはシュリに頼む、自身が見てきた事と、私が注意した事を教えればいい。」


 シュリと生徒となる6名の了承を聞き、残ったものに指示を出す。


 「サロスは先ほど言った事を続けてくれ、ニルブニルはゴーレムを用い、サロスの手伝い。アグリウスは引き続き連絡係と皆の纏めを頼む。」


 当然、返るのは肯定の言葉のみである。


 「さて、私は自由に行動する事とする。緊急時は以前と変わらず。基本はアグリウスを通すように……以上だ。」


 「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」




 魔王城玉座の間、その大きな玉座に腰かける一人の人間と、彼を取り囲む10の魔族は、未だにその鋭い牙を隠したままである。だが、その牙は時が来たとき、一瞬で獲物の喉に突き刺さり、その命を刈り取るであろう。


 かつて人間に滅ぼされた魔王が復活した事を、まだまだ、人間達が気付く事は無い。 


◇◆◇◆◇◆◇


 「さて、どうするべきか……」


 魔王城、玉座の間、今は誰もいなくなってしまったその部屋で、鎮座する巨大な玉座に深く腰掛け、リジィー・スロードは考えを巡らす。


 考えの種は、人手をどうするかである。


 まさか、3人の内2人が失敗するとは思ってもいなかったのである。その穴をどう埋めるべきかを考え続けていた。


 (3人の話だと、この近辺にいるのはそいつらだけだって話だし……人間世界で探した方が速いのかな……)


 思考は纏まらず、ただただ回り続けるだけである。

 と、そこで玉座の間、その扉がノックされたような気がした。


 「……入って良いぞ。」


 依然思考を続けつつ、許可を出す。すると中に入ってきたのは、見た事が無い魔族だった。

 しかし、その特徴的な体躯から、すぐにフエンが隷属させた魔族である事が解った。

 一言で表すのなら、狼。それ以外に表現のしようが無かった。


 その狼は玉座の前、リジィーの前まで歩み寄り、フエンと同じ様に、頭と耳、そして尻尾を低く下げるという服従の表現を現した。

 それっきり狼は動かなくなる。


 「……ああ、そうか。何か用があるなら話していいぞ。」


 フエンの話では、既に俺が、彼らの主であるという事を伝えているらしかった。つまり、俺の許可が無いと自分からは行動しないという事なのだろう。

 事実それは正しかったようで、その頭を少し上げ、狼は話し始める。


 「リジィー様。初めまして。俺は……私は先日から貴方に隷属を誓った部族、ウルフ族の族長を務めさせていただいている者です。以後お見知りおきを。」


 「不敬が無い様に徹底するのは良い事だと思うが、自身から名乗らないのはどうなんだ?自身で判断を下せない人形は、配下としてほしくは無いのだが。」


 「申し訳ございませんでした!!私の名はフールと申します。何卒ご容赦を!!」


 (フエンは一体どんな風に俺の事を伝えたんだ……)


 別に絶対に許さない、というほどにこの程度では怒り狂わないのに、こんなにびくびくされると調子が狂ってしまう。

 頭をかきながら、面倒だなと思いさっさと要件を聞く事にする。


 「で、何の用だ。」


 「はい、我々は一体どのような行動をすればいいのでしょうか?なにぶんこの城に来てから日が浅いので、できれば指示を頂きたいと思っておりました。」


 ……なんも考えてなかった。これがゴブリンとかだったら、いろいろとやって貰いたい事はあったが、その犬の手足では、それが出来そうには無かった。

 

 「……何でもいい、自由に行動したまえ。自身が私の為になると考え、それを明確に成す事が出来るのなら。それが私の逆鱗に触れる事では無い限り許そう。」


 だから、投げやりな指示になってしまうのも許される事だろう。きっと、この境遇に立つ人なら全員同じ選択をするであろうし……

 フールは俺の指示を受け、この部屋から出ていく。ふと、その背中に質問を投げかけてみた。


 「……フール……だったか?汝に聞きたい。この辺りで使えそうな魔族はいるか?」


 突然の質問にその体の毛を逆立てながら、一息で此方に飛びながら向き直り、彼は頭を下げながら答える。


 「すみません、存じ上げません。なにぶん、縄張りに関してはうるさいほうだったので……他者の所に入る事も、入れる事もありませんでしたので……」


 「そうか……なら、簡単に隷属させる事ができ、尚且つ、使い勝手が良さそうな種に心当たりは?」


 続けられる質問に、フールはしばしの沈黙。その後に考えを纏めたのであろう。その口を開く。


 「始めに、リジィー様の事を侮蔑するつもりは、さらさら無いとご理解お願いしたい。ここから遠方の地に、人間という種がいるらしいのですが。彼らは金品にて同族の命を売り買いしているらしいのです。そういった者を買い、リジィー様の目的に使われてはどうでしょうか?人間相手なら、よほどの事が無い限り、反乱を起こしても我々は元より、リジィー様が信頼されております、10魔族の方々が取り押さえられますので。」


 「……やはりそれが一番手っ取り早いよな……」


 フールの奴隷を買うという考えは頭の中にあった。其の為の資金も潤沢にあり、それ自体には特段問題が無かった。

 しかし、自身の名がそれを邪魔していた。当然だ、基本的に奴隷を買う者に良い噂が流れる事は無く、それが有名な者であればあるほど、瞬く間にある事ない事が囁かれてしまうのである。

 結果として、考慮の対象から外していたが、其方の方面でも思考を巡らしてみる事にしよう、


 フールにはそのまま下がって貰い、リジィーは静かに思考に耽る。


 やがて、考えを纏めたリジィーは静かに立ち上がり、宝物庫を開く、其処から取り出したのは、万年筆型のマジックアイテムと、大きな世界地図であった。


◇◆◇◆◇◆◇


 奴隷を売るという行為は、クルガ帝国を除き、スアー公国、シオン王国、マクジ共和国の3国では、半ば黙認されている行為であった。

 というのも、基本的に奴隷として売られる者は、何らかの問題がある者ばかりであったからだ。

 別に体に異常があるとか、精神に異常があるなど、そういう事では無い。その家系に問題が多かったのである。


 没落貴族の子供なのである。


 何をとち狂ったのか、今までの華やかな生活を忘れられない、没落した貴族はいつからか、奴隷として自身の子供を売り始めたのである。

 もちろん、それだけでは無い、人知れず野盗に襲われた者が、その身を奴隷として落とされる者もいるし、エルフ族などの、人間と変わりない容姿をしている魔族は、それが差も当然であるかの様に、何者かに蹂躙を受け、奴隷として売られる事もある。


 しかし、それにも負けない位に多かったのが、没落した貴族の子供である。

 彼らは一様に名前を捨て去られ、番号で管理される。そして、彼らを買う人物が現れるのを、日に一度出される、乾いて固くなった小さなパン切れを齧りながら、待つのである。


 マクジ共和国にあるその奴隷市場も、他に無数に存在する奴隷市場と何の変わりも無かった。


 一応、客や商人が行きかう通路は清掃されているが、周りに置かれた檻と、その中に入れられている商品は薄汚れていた。

 商品の年齢は様々である、年端もいかぬ子供から、リジィーと変わらぬほどの歳の者まで、種族を問わず様々な商品が並んでいた。


 その商品を品定めしながら歩くのは、多くの裕福な人間である。彼らの瞳にあるのは色々な感情ではあるが、その多くが情欲に塗れていると言っても過言では無かった。

 これは当然だろう、何故なら彼らは、自身の歪んだ欲望を満たす為に、奴隷を欲するのであるから。

 給仕が欲しければ、然るべき教育を受けた者を雇うし、護衛が欲しければ、腕っぷしに自身がある者を雇う。

 わざわざ奴隷を買って、育てる必要は無いのである。だからこそ、彼らが求めるのは、欲望のはけ口としての奴隷である。


 今日も奴隷市場では、多くの奴隷が仕入れられ、売り捌かれていた。


 「……う~ん、やっぱ目的には噛み合わないよな……」


 その独り言は、周りの喧騒に掻き消されてしまい、それに反応を示すものはいなかった。

 フードを目深に被り、仮面で顔を覆ったその男は、周りの商品を見回し、ため息をつく。

 わざわざ、ここまで足を運んだ意味が感じられなかったからだ。


 周りに並べられている商品は、総じて若く、容姿こそ、そこそこ優れど男の目的には合致しなかった。

 というのも、彼が欲しているのは、それなりに力仕事をこなせる者であったからだ。


 しかし、周りの商品からはそれが感じられない。当然か、そもそも市場というものは、より多くの客が求める商品を仕入れる。結果として、歪んだ情欲のはけ口としての商品が、大量に仕入れられる事に繋がっているのであろう。


 フードの男は……リジィー・スロードは人の隙間を縫いながら歩いていく。

 擦れ違う他の客も、商人もその不審な姿をした男が、リジィー・スロードだとは、誰も気が付かない。

 当然だ、そのために顔を隠しているのである。簡単にばれてしまうようでは困る。

 きっと、このままこの場にいたとしても、誰も気が付かないではあろうが、それでも、リジィーはこの場を去る事にする。

 どうにも、こういった雰囲気が苦手でならなかったからだ。目的の物が見つからないなら、こんな所に長居する必要も無いだろう。

 そう見きりを付け、奴隷市場を去ろう歩みだした時。それはやってきた。


 一つの大きな荷馬車が、リジィーの横を通り抜けて行き、それを追うように動かした目線、その視界の端で止まったのである。

 それは、奴隷を輸送する為の荷馬車であり、幕で囲われたその中には、大きな檻が入れられているのであろう。複数の人間の気配がした。

 一瞬、その中に目的に合う商品がいるかもしれないと思ったリジィーは、その荷馬車から商品が下ろされるのを、遠くから眺めて待つ。


 やがて、荷は下ろされ、檻の中身が露わになる。しかし、その中にあった物はリジィーの目的を満たすとは思えなかった。

 すぐに興味を失い、リジィーは再度歩き出そうとした時、その檻の方から怒号が聞こえて来た。


 「ほう、なかなか骨がある奴らじゃないか。」


 感嘆とも驚きともつかない呟きが、リジィーの口から漏れ出した。

 檻の中に入っていた者達が逃げ出したのである。


 全員が一斉に、個別の檻に入れ変える為に開けられた大きな檻から、その開けた者を突き飛ばし、逃げ出したのである。

 驚いたのは、逃げ出した事に対してでは無い、その連携の取れた動きにである。


 まず、突き飛ばした者は先に外に出るものの、真っ先に周りを取り囲んでいる護衛に取り押さえられる。しかし、それに後続の者が体当たりをかましたのである。

 そして、抑えられた者を助け起こし、それぞれが個々に離れて逃げれど、互いが互いに助けに入れる様に、ある程度の距離を保ったまま、一つの塊になって走り始めたのである。


 その子供達は、俺の方へ駆け抜けてくる。しかし、それに対し何の動きを見せない俺を、敵とは判断しなかったのか。構う事無く全員が、両脇をすり抜けていった。

 だからだろうか、一人の子供と擦れ違う時、俺は確信する事が出来た。この連携を取る為に、輸送される檻の中で恐怖に怯える他の奴隷たちを纏め。知恵を授けたのであろうその者が、この少女であると。その青い髪の少女は、俺に目もくれずに走り抜けていく。

 少しばかり、興味を持った俺は、彼女達の脱走を見届けようと、姿を追った。

 彼女たちの努力は実を結び、出入り口のもう一歩手前まで辿り着いた。


 しかし、脱走は見事に失敗する事になった。当然だ、誰が好き好んで商品を逃がす馬鹿がいるだろうか。出入り口は真っ先に固められる場所であった。

 其処に詰めていた、大勢の屈強な大人に、取り押さえられたのだ。もちろん、この計画を主導した青い髪の少女も含まれている。


 彼女たちはこれから、その反骨精神を、ありとあらゆる手で砕かれることになるだろう。商品にはそんな精神は必要ないのだから……

 しかし俺は、今という現状に負けず、それを覆そうとする精神を持った者達を好んでいた。

 取り押さえられた子供たちに怒鳴り散らしながら、檻へ入れる様に指示を出している者に声を掛ける。


 「すまない、その者達を買いたいのだが。」


 「へっ!?今何と…………いや、旦那。こいつらはまだ商品として教育してないんですよ。今のこいつ等の動きを見たでしょう。何をしでかすか解った物じゃない……」


 「構わんよ……それに、その青い髪の少女が良ければ……の話だがね。」


 そう言いつつ、リジィーは地面に押さえつけられている、その少女に近付き、屈みながら仮面で覆った顔を近付ける。


 「それで、君の答えはどうなのかね?君の一言で、周りの仲間達の運命は決まる訳だが……」


 「ップ!!」


 答えは仮面に吐きかけられた唾だった。その商品にはあるまじき行動に血相を変えた商人は、すぐに此方に駆け寄り謝罪する。


 「内の商品がすいません!!見ての通り、まだまだこいつらは人間であるつもりなんですよ。気に入られたのなら、先に売買契約を済ませれば、教育内容を旦那が決める事も出来ますんで。それが終わるまでは待っていただけませんかね?」


 「いや、いい。ますます気に入った。予定とはちょっと違うが、思わぬ収穫だ。この者達なら私の考えを満たしてくれるだろう。」


 「……はぁ……旦那が良いのでしたら、良いですけど……全員ですか?教育は済んでないですが、きっちりと商品分の代金はいただきますよ?」


 「よい、金なら捨てるほどあるからな。後、輸送の為の檻と荷馬車も欲しいな。少しばかり此処から遠い所に住んでいるのでな。」


 商談はとんとん拍子で進んでいった。

 やがて、先ほどこの子供達が運ばれてきた荷馬車と檻が用意され、檻に押し込まれた子供達を乗せ、荷馬車に乗ったリジィーは、馬車を転がし始める。

 後ろでは、即金で渡された金貨を重そうに持った商人が、見送りに出てきていた。

 それに軽い礼を返し、人気のない所を探し、リジィーは馬車を転がし続ける。




 馬車の荷台、そこに積まれた檻の中。幸か不幸か、かつて人間に滅ぼされた魔王に気に入られた少年少女を乗せ、馬車は揺れ続ける。

 幕が張られた檻の中は薄暗く、その全員が、これから自身に、降りかかるかもしれない空想に恐怖している中、この中で一番気に入られたであろう青い髪の少女は、膝を抱えて座り、ただ虚空を凝視し、静かにその時が来るのを待ち続けるのであった。




どんどん、ネームドキャラを出していますが。個々のキャラを、皆さんがしっかり把握する事が出来ているか不安を持ちながら、次回に続きます。


次回もよろしくお願いします。

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