良くて悪くて 1
「……名無し。」
降り立った妖精にルーミアはそう口にした。
「チルノちゃん、ルーミア、今あなた達が戦うことじゃないはずですよ?」
「…チッ、二体一は流石に今の私には面倒なのだ。」
そう言い、ルーミアは両手を上げて降参する。
「全く、珍しく本気のチルノと戦えると思ってたのに邪魔されたのだー。」
「…ふー、大ちゃん助かったよ。ネツを庇いながらじゃ勝算はなかったから。」
「ふふ、この程度で返せない恩があるからね、チルノちゃんには。」
そう言いつつ緑髪の妖精は俺に視線を向ける。
「はじめまして人間さん、私は妖精の長的なものです。名前がないのでみんなからはそのまんま『大妖精』って呼ばれています。気軽に大ちゃん、と呼んでもらっても構いませんよ?」
「いや、俺からすれば恩しかないし敬意をもって今は大妖精って呼ばせてもらうよ。それよりも『今戦うことじゃない』ってのはやっぱりあれか?」
と俺は空を指さす。そこで先ほどまでバタバタだった二人もようやく紅く染まった空の異変に気づいた。
「…妖気が混じってるのだ。多分妖怪絡みだ。」
「確かに、しかもこれはちょっと危険かも。普段は襲ってこない妖怪も襲ってくるのは多分これだ。そんな妖気、人間が大丈夫じゃないはずだけど。」
「…そう言えば人間さんは何ともなさそうですね。」
と大妖精とルーミアはパチリと俺を見る。
「あー、まず俺は熱也って言うんだ。気軽にネツって言ってくれ。……それより俺が大丈夫かって話だが、特に何も異常はないな。」
「まー、確かに昔からネツって変に頑丈だったね。そんなにほっそりしてるのに。」
「ふっ、惚れたって幼女に興味はないぜ?」
「冷やすよネツ?」
ニコッと片手をかざすチルノに俺は慌ててブンブン首を振って拒否した。
「…さて、ひとまず人里の方行ってみるか?」
「そうだね。方向的にも通りそうだけど、覗く程度はしといたほうがいいかもね。」
「……ルーミアさん、人は襲わないでくださいね。」
「もうそれはいいのだ。敬語もさん付けもいいのだ。」
「…OKルーミア。じゃあひとまず人里の方に行って話を聞いてみるか。」
「はい!」「だー。」「了解」
そして俺たち四人は人里の方に歩を進める。