集落Ⅰ
「つきました。ここが集落です。」
「そうか………思ったよりも………」
「ひどいですよね。」
「いや、そういう訳じゃ。」
「いいんです。貧相なのは事実ですから。」
そう、ここまでとは思っていなかった。
建物は立派だが、金属の類いが一切見当たらない上、色彩の鮮やかさが無いのだ。
「すまない。」
「いえ、気にしないでください。」
「それにしても…「おいルル!お前どこいってたんだ!お前のせいで集落中大騒ぎだ。って人間!ルル、お前まさか」
「違う!この人は人間じゃないわ!」
「でも人間にしか………いや、純血のやつらだったら死んでも自分をハーフとは言わないだろうな。」
「そうよ、全くゾルムはいつも早合点しすぎなのよ。」
「けどなルル、お前が無断で一人で村の外に出てたのは変わらないんだぞ。」
「いや、それは………」
先程からしゃべっているこの少年、見たところエルフと獣人のハーフに見える。それにどうやらルルさんと親しいようだ。
「だから、食べ物取りに行っただけっていってるじゃない。」
「今はダンジョンから出てくる魔物が増えてるから、戦士たちが帰ってくるまで村から出るなって言われただろうが。」
「でも食料がもうほとんど無いじゃない。」
「だからってなぁ。」
話を聞く限りはルルさんが悪そうだが
「まあ、ルルさんが外に出てくれたお陰で俺は会えたんだそのぐらいにしてやってくれないか。」
「ルル、結局だれなんだこいつ」
「この人は………そういえば名前聞いてなかったわ。」
そういえば言ってなかったな
「カイルだよ。」
「カイルさん、冒険者らしいの。」
「ハーフなのに結構いい装備してるし、もしかしてA級以上か!それなら頼みがある。この集落の近くにはダンジョンがあるんだ。頼む、この集落はずっと苦しめられてるんだ。攻略してくれないか。」
「ゾルム、突然そんなこと言っても」
「それはいいがまず休ませてもらえないか。」
「そうか、助かる。
お~いみんな~、ハーフのA級が来てくれたぞ!あの憎き迷宮も今日で最後だ~」
「ごめんなさい、ゾルムは昔から賑やかで。」
「気にしていないから大丈夫だ。」
「じゃあ行きましょう。」
「憎き迷宮か………」
「なにか言いましたか?」
「なんでもない。」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて、他のいえと比べると幾分か立派な家に案内され男性と向き合っているのだが、集落内である程度力を持っている者だろう。
「貴方がA級の冒険者ですか。」
「あなたは?」
「これは失礼、私はこの集落の長でルルの父であるキリルです。」
「私はカイルです。」
「どうやら、食料を持ってきてくれたそうですがね。」
「味気ない保存食だが。」
「いえ、助かります。近くのダンジョンが活発化しているせいでまともに食料もとれないのです。ダンジョンも攻略してくださるとか。」
「ああ。」
「しかし、食料は宿泊の礼だとしてもダンジョン攻略の礼は出来ません。」
ふむ、ダンジョン攻略が目的だから礼はなくてもいいが集落の長としては借りは作りたくないのだろう。
「ではダンジョンの情報をいただけますか、私の目的は元々ダンジョン攻略ですから。」
「その程度で良ければいくらでも差し上げます。あのダンジョンにはここをハーフの隠れ里としてから長い間苦しめられてきました。どうぞよろしくお願いします。今夜からは我が家に泊まってください。」
「わかりました。」