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第八話 子どものためにも親は人脈と財産を作る

パーティーが無事終わり、数日たった。

とうとう粛清の準備が整ったので、哲人てつひとも宰相さんの手伝いから解放……されるはずだったのだが。

「ただいまー」

「哲くん、おかえり」

「だうーだ、だ!だっだ!」

まだ毎日執務室に通っている。

ちょっと手伝っていたら、気になることがあったらしく、そのまま宰相さんのヘルプとして働いている。

粛清が終わって私たちが旅立つまでの間だけという約束になった。

「やっぱり誤魔化してたよ、あっちこっち」

哲人は勇人を抱き上げて、そのままソファに座り込んだ。

勇人は嬉しそうだ。

「そうなんだ。ま、やらない人ってよっぽど真面目か潔癖症か、もっと未来を見据えて遠くの利を取れる人でしょうね」

「やっぱり目先の金の方が魅力はあるんだろうね」

哲人が手伝っているのは、貴族から提出された目録の中身チェックだ。

一年分だから、かなりの量になるが、きちんと帳簿を確認すれば、おかしなところはすぐ分かる。

もちろん、紙ベースだから書き間違う可能性もある。

なので、私は哲人に助言した。

「修正個所が大量ね」

「赤ペンが唸るぜ」

間違ってるよと言えばいい、と。

あくまで、『間違えている』のであれば、不正にはならない。

提出した物が誤っていること自体はプライドを傷つけるかもしれないが、不正して失脚するよかマシなはず。

計算してチェックするだけなら、覚えれば簡単なはずだから、とルドク王子にもやり方を教えているらしい。

良かったね、これで毎年厳しいチェックができて、国庫が潤うよ!



今日、私と勇人は冒険者組合に行ったのだが、ちょっと驚いた。

冒険者組合を中心として、あの話が尾ひれをつけ、なんか私の魔導士様っぷりが広まっているらしい。

もちろん、勇人の誘拐阻止事件のことだ。

なんか遠巻きにされたから、貴族への仕返しの噂でも広まったのかと思った。

あいつに手を出したら悪夢を見るらしいぜ、みたいな。

あれ、でも拷……質問したときの色々の方が酷かったっけ?

あの色々のせい?

むしろそれが広まってるからそうよね。

少し前に、試験のときの魔獣を売ったお金を受け取りに来たときには、特に目立つこともなかったのに。

子連れなのは目立ってたかもしれないけどね、依頼しに来たのかーみたいな目線だった。

でも、この日は違った。

「おい、あれが……」

「子どもを連れてるんだ、間違いない」

「あの子どもも魔法を使ったんだってな」

「マジか、あんなに華奢な女が……」

「魔導士だってよ、お前挑戦してみろよ」

「無理無理、俺は回復要員だっての」

「俺らのパーティに誘えないかな」

「旦那は宰相の右腕なんだって?」

時間帯が朝だったのもあって、人が多かった。

そしてこそこそと、こちらを伺いつつ声を交わしているのが聞こえた。

勇人が魔法を発動させたのもなかなかすごいらしかった。

子どもは、感情に連動して魔力を暴発することはあっても、具体的な魔法になることはほとんどないんだとか。

それとどうやら、哲人が宰相さんを手伝っているのも噂に広がりを持たせているらしい。

私たち有名人だね。


今回は冒険者組合の受付に用があった。

私たちの旅は、まず南のダンジョンに向かう予定だから、ダンジョンの情報が欲しかったのだ。

で、ダンジョンに行ったことのある人を紹介してもらえるよう頼みに行った。

向こうに行ってから情報を集めてもいいだろうし、私たちのステータスやレベルを考えると何も情報がなくても大丈夫かもしれないけど、先に分かるならその方がいい。

南の森にいるというエルフの情報もあればいいな。

敵は減らしたいから、文化的にNGなこととか知っておきたい。

「では、ご依頼という形でよろしいんですね?」

「はい、その方がこちらも聞きやすいです。知りたいことを先に掲示することもできるので、無駄がないですし」

「かしこまりました。では、こちらの用紙に記載して、またお持ちください」

「分かりました」

依頼用紙を受け取って空いている机に向かう。

勇人は、お城でない場所が珍しいのか大人しくきょろきょろしていた。

条件は簡潔に……

・南のダンジョンに行ったことのある人

・ダンジョンと、南の森の情報を知りたい

・ダンジョンや森で出る獣や魔獣の種類と強さなど、できるだけ具体的に

・エルフの文化なども分かればなお良し

・森やダンジョンの地図があれば買い取る(応相談)

こんなものか。

内容を確認して再度受付に向かおうとしたら、いかついおじさんに声をかけられた。

「おう、あんたが噂の魔導士か。何の依頼だ?」

こ、これは、私が想像したテンプレのあれ?

勇人は、おじさんの顔を凝視している。

ちょっとお母さんが暴れても大人しくしててね、勇人。

と思ったら少し違った。

「討伐なら、どんな依頼でも俺ら『裏山の蜂』に任せてみろよ。なんだったら道案内でも受けるぜ」

親切な売り込みだった。

なんだなんだ、いい人ですか。

「あら……討伐じゃないんです。南のダンジョンに関する情報が欲しくて」

「お、ダンジョンか。あんたらだけで行くつもりか?」

「えぇ、私と夫と。この子はおまけです」

「子連れで行けるのか?噂からするに大丈夫だろうから止めはしないが……情報が欲しいと。確か、ダンジョンから帰ってきたパーティがいたんじゃなかったか?」

「あとは、総合レベル7になるパーティなら知ってるかもしれねぇな」

「タツテのとことかな」

「そうだな」

いい人が多いなこの冒険者組合。

とにかく、その情報を持つ人を募集する、と説明したら波が引いた。

それらしい人に声をかけてくれるというおまけつきで。

ありがたいけど、なんでそんなに協力的なんだろう。

依頼を出してから、ベルータさんに聞いてみた。

「勇者様ですから、当然では」

「あ、そうだっけ」

忘れてた。

そういえば、私たち勇者ご一行様なんだっけ。

それらしいことはあんましやってないから、どうにも忘れそうになる。

情報募集の依頼は、受付に振るいをかけてもらって、私が聞きに行くことになった。

嘘じゃないか、魔法で確認できるって安心ね。


そんなわけで、『宰相の手伝いもできる賢い勇者ご一行様には優秀な魔導士がいる』と噂が広がっている。

微妙に間違ってる。

いや間違ってはいないのかな。

魔王様も魔導士の一種ではある……のか?

どちらにしろ、一般的には『勇者』が好意的に受け取られていてよかった。

使いっ走りとか下僕みたいに考えてる人が多かったりしたら、意識改革からやらなきゃいけないとこだった。

貴族の一部の人たちみたいにね。



さて、粛清は数日で決行となるらしい。

ほとんどの貴族が代替わりと軟禁という処遇になるが、実行犯のナスイダ男爵は借金が残ったまま、黒幕のジクイタル侯爵は、爵位が下がって子爵となり、領地も減らされる。

どうやら、勇者関連だけでなく、横領の元締めみたいなこともしていたらしい。

そっちの方で足がついたので、爵位まで下がってしまうんだとか。

ザルな納税システムのでかい穴を抜けていたから、意外とつかまえやすかったんじゃないかしら。

とにかく、納税関連のごたごたも片付くし、私たちとしてはお返し(呪い)もかなり効果があったと聞いているので満足した。


そう、私の呪いはかなり効果的だったようだ。

もうね、泣きながら助けてくれって宰相さんのとこに駆け込んできた貴族が何人もいたくらい。

宰相さんなら、名声があがりつつある魔導士の私に、『呪いのような夢をなんとかしてほしい』と頼めるんじゃないかって、藁をもすがるような思いで来たそうな。

でもそれ、私が原因ですからー!

もちろん活用しました。

証拠固めに。

呪いを解いて欲しければ……ってな具合で脅したら、ぺらぺらと語ってくれたそうな。

自分の罪も、周りの罪も、入れ知恵をしたらしいジクイタル侯爵のことも。

そして、もう隠していることがなければ、夢を見なくて済むように調整した。

そのためだけに、私も執務室に出向いたのはちょっとめんどくさかった。

何人かは、もう一回泣きついてきた。

初めから全部話せばいいものを。



あとは、私たちが関わってどうこうするものでもないし、そろそろ旅に出ようか?

そんなふうに話し合って一息ついたころ。

「そうよ!がんばって勇人!」

「よしよーし、そうだ!」

私と哲人は、勇人を応援していた。

勇人は、両足を投げ出して座った状態のまま、両手を前についてこちらに来ようと上半身を揺らしている。

手は前に出るのよ。

とすとすとす、ぺたん。

手だけが前に出て、そのままうつ伏せに寝転んでしまう。

「両足を立てるのよ!」

勇人は、ハイハイの練習をしている。

うつ伏せから両手を使って座ることができるようになったから、次はハイハイだ。

前に行こうという気持ちはあるから、きっともう少し。

こっちをキラキラした目で見つめながらうつ伏せになる様子はものすごく可愛い。

「だうー!」

思い通りに動けなくて拗ねる勇人はもっと可愛い。

ハイハイを教えていると、来客があった。

「あの、ルドク殿下と、ノト様が来られたのですが」

サンナさんが応対して、待たせてくれている。

ノト様って誰だ。

「ノト……魔法師長の女性だったっけ」

「はい、その通りです」

哲人は知っているらしい。

この国では、魔法を使うプロを魔法師という。

そのトップっぽい魔法師長って偉い人なんじゃないか?

廊下で待たせちゃ悪いだろう。

ん?もちろんルドク殿下も待たせちゃ悪いと思ってるとも!

「入ってもらえば?邪魔なようなら、私と勇人は寝室にいるし」

「いえ、あの……ヤエ様にお会いになりたいそうなのです」

「へ?私?」

「たたーた!」

勇人はまた座ったところからうつ伏せにつぶれた。


部屋に入ってもらった。

ノトさんは、ルドク王子より少し年上の可愛い感じの女性だ。

「では、これらの魔法は公開の許可を出していただけるのですね!」

「はい。便利な方がいいでしょうし、何人かにはもう教えましたしねぇ」

「なんと素晴らしい!!私でも、新しい魔法を作り出すのに数年かかるというのに!簡単に公開していただけるなんてっ!」

可愛い感じの、魔法オタクな女性だった。

私が作って何人かのメイドさん教えた魔法は、オムツの中だけ洗浄する魔法、お湯を除菌して保温する魔法、汚れを防ぐ魔法の3つ程度。

子育てしてたらどうしても欲しいと思う魔法だ。

もちろん、本当はもっとたくさん作れるし、カスタマイズして便利にできるけれど、あんまりいじくっても使いにくい。

みんなが魔語を理解できているわけじゃないから、覚えやすく簡単なものにしたのだ。

そしたら、特に防汚魔法と除菌+保温魔法が有用だと広まったらしい。

結果、ノトさんにも話が行って、私に国内での公開を許可してくれと言いに来ることになったわけ。

これで(魔王様)の名声がさらにうなぎのぼりになるというわけね。

……それでいいのかしら。

まぁいいか。


さてと、私の自慢は置いといて。

魔法公開に関する話だ。

この世界では、魔法は魔法師団体の学校のようなところで教えてくれるものだそうだ。

学びたい人は誰でも学べる学校で、必要なものだけを学ぶことができるらしい。

もちろん、コースを組んで一通り学ぶこともできるけれど、それをするのは貴族やお金持ちの商人の子どもくらい。

普通は、必要な魔法を数日で、少しずつ学ぶ形になっているそうだ。

文字や計算などを学ぶ基礎学校は別にあって、こちらはそもそもお金持ちでないと入れない。

庶民なら、読み書きできなくても日常生活はできるようになっているわけね。

基礎学校は午後のみ、魔法学校は午前のみなので、並列で通う子どもたちもいる。

さすがにそれは、貴族の中でもエリートな子どもたちだけらしいけれど。

私の新しい魔法は、魔法学校で魔法の呪文を配布して教えてもらうことになる。

そのために、教える方法をまとめないといけないんだそうだ。

魔語は難しいから、学ぶといってもとにかく丸暗記。

文字にして覚えやすいようにするけれど、現代語で魔語の発音を書くので、場合によったら間違って広まってしまう。

本来、魔語に文字はない。

というわけで、普通の文字で発音を書いたものを誰かに読んでもらって、無事に発動するならそれでよし、発動しないなら呪文を少し考え直すんだそうだ。

昔は口伝のみで教えていたらしいので、少しはマシなんだろうけど。

「めんどくさいですね」

「規則ですので仕方ありません。では、明日の昼過ぎに、私の部下を連れてまいります。今日はまず確認だけさせていただきたかったので」

「はい、分かりました」

「それにしても、本当に旅に出られてしまうんですよね……。このように優秀な方が国におられれば、我が国の魔法学も進歩するはずなんですが、ヤエ様だけでも残られません?」

「評価していただけるのは嬉しいですが、私は哲人と勇人と一緒にいます」

「ですよねぇ。いっそのこと、勇者様の旅立ちをちょっと待っていただいて研究を」

「ノト。それは無理だ」

王子様が入ってきた。

まぁ、国としてそれは薦められないよね。

「えぇー。ルドク殿下だって思ってるでしょう?魔法が進歩すれば国の生活が変わるんですから」

「思っても言えない立場だが、奥方にそれを頼むのは筋違いだと考えているぞ」

そもそも魔王様に頼むのは間違っていると思うよ。

魔王様に助けられる人間の国……根底が崩れてしまう。

あ、でももう手遅れじゃないか。

じゃあいいのかな?

いや良くないよ、めんどくさい。

「どうしてですか?」

ノトさんが聞いた。

「そもそも、勇者様も奥方も、この国の、むしろこの世界の人間ではないのだ。ほかの世界から、この世界を助けていただくために無理やり呼び出されたのだから、それ以外の要望を突きつけるような傲慢さは持ち合わせていない。そもそも、この世界の問題を自分たちで解決できないことが問題なのだ」

「ルドク殿下……」

ふむふむ、王子様は潔癖気味だけど、ちゃんと考えてる人なのね。

普通はおかしいと思うよね、自分たちの問題を自分たちで解決できないなんて。

哲人は笑顔で頷いている。

王子様のこういうところが気に入ってるのかな?

でも、この部屋だからいいけど、ほかで同じようなこと言っちゃうのは考えた方がいいかも。

「っと、この話は内密に。父上や兄上なら問題ないが、一部の貴族は問題視するだろうからな。世界を敵に回すような発言をする王子など」

「はい……」

ノトさんはちょっと驚いていたが、大人しく頷いた。

王様も同じような考え方なのかしら。

聞いてみないと分からないけど、聞く機会なんかあるかなぁ。

「もちろん言いませんよ。どこかで本音を吐きだした方がいいですし、愚痴くらいなら私が聞きますよ」

哲人が優しそうな笑顔で言った。

私は黙って頷いておいた。

実際この部屋なら外に漏れないし、肩肘張って頑張ってるならどこかで吐き出したいよね。

それを哲人が受け入れるなら私は何も言わない。

尊敬されるのが嬉しいのか、兄貴分なのが楽しいのか、成長するのを見ているのが良いのかは分からないけれど。

どっちにしろ、こうやって懐かれるのか。

そういえば、向こうの会社でも、部下の人たちから慕われてたもんね。

聞く耳を持つ上司って、それだけでありがたい。

哲人は王子様の上司ではないけれど。



次の日、ノトさんとその部下のタジノスさんがやってきた。

タジノスさんは、私たちより一回り上くらいの男性だ。

実力主義だからこういうことになるらしい。

それでも、王都の魔法師の中でもすごく優秀な人、つまり国のトップクラスの人ってこと。

いいのかな、こんな人に実験してもらって。

実験している部屋には、哲人と私、ノトさん、タジノスさんのほかに、魔法師の人が数人いる。

記録係だそうだ。

その人たちも興味深そうに見ていた。

「では、読みます」

実験用に用意した人形が、タジノスさんの前にある。

こっちにも、子どもが遊ぶ用の人形ってあるのね。

すべて布で作られているから、優しい雰囲気だ。

ノトさんが結界を張って、失敗に備えている。

勇人はいつも通り抱っこひもで私の前。

まだ一人で置いておくのはちょっと、ね。

「<洗浄、オムツの中の汚れ>」

ふわりと人形に魔法がかかる。

オムツの中には、泥を入れてあった。

ほどくと、真っ白で綺麗な布だけ。

「成功みたいね」

ノトさんが笑顔で言った。

タジノスさんはほっとしたようだ。

うまく発音できないと、発動しないどころか魔法が暴走することもあるんだとか。

だから、一番魔法を使えるノトさんが結界役で、次に魔法を使えるタジノスさんが発動役。

そうやって、国として配布の許可を出すわけだね。

めんどくさいけど、しっかり確認しておかないといけないところだ。

「では、次。……<不純物除去、加温、保温、器の中の水、温度は80度>」

そう、これはちょっと工夫した呪文だ。

コップとかデカンタとかポットとか、水が入っている容器って色々なのよね。

だから、見ている器の中という言い方にした。

すごい便利。

ノトさんが、ポットの中のお湯をカップに注いだ。

ふわり、と湯気が上がる。

除菌されているかどうかは、見た目で確認。

実は、最初に入っていた水は泥水だった。

今は透明なお湯。

除菌ってイメージがこちらには無いようで、『除菌』って教えたら上手くいかなかったから、『不純物除去』に変えてみた。

うん、上手くいったようだ。

最後に、防汚ね。

用意した人形にかけるらしい。

「<汚れにくくする、目の前のもの>」

これも呪文を工夫した。

者でも物でもなく、もの。

防汚ってこれまた言葉が難しくて発音しづらいとのことだったので、『汚れにくく』にしたら言いやすくなったらしい。

短い方が楽かと思ったんだけど。

さて、では紅茶をかけてみましょうか。

ぱしゃり

「まぁっ……」

「ほう」

汚れにくくする程度は、呪文を唱える本人のイメージによる。

タジノスさんは、まったく汚れないイメージにしたようだ。

紅茶をはじいて、汚れどころか水も染み込まない。

「素晴らしいですね」

「どの魔法も、生活に役立つものばかりです」

「これを大した値も付けずに公開されるなんて……」

関心された。

とにかく、これで公開の準備は完了ね。


最初、すごい数を提示されて意味が分からなかった。

なんの数字ですかと聞いたら、魔法の買い取り価格だと言われた。

なので、その10分の1を受け取ることにした。

受け取らないという選択肢はないけど、庶民のさがなのか、大金も貰いづらい。

前に貰った支度金が10万ザウ。

こないだ王都で遠慮なく買い物したら、全部で5万ザウになった。

感覚で言ったら、1ザウ=10円くらいかな。

1000万ザウとか、どうやって使うっていうの。

それでも、100万ザウ、要するに1000万円。

わお、お金持ち!

地球でもそんなに貯金なかったよ!

家買って引っ越して貯金は年収の半分くらいしかなかったよ!


実験も終わって、部屋に戻ってきた。

はぁ、新居どうなってるかなぁ。

もう一月近く経ってる。

親にも心配かけているだろうし、仕事もどうなってることやら。

私は育児休暇中だけど、哲人が失業してたら大変。

というか、そんな長いこと行方不明なら、普通捜索願を出されて失業もしてるよね。

どうしよう、それならいっそこっちで永住した方が生活しやすいかもしれない。

お金にも仕事にも困らないもの。

うぅぅ、迷う。

「だった、たったったーた」

勇人が、リビングの床に座ったままぴょんぴょんしながら前に進んでいる。

「え?勇人、前に進んでるよ!」

「すごい、いざってる!」

「たた!た!」

そうね、迷ってる暇はないわね。

「すごいわ、勇人」

「たーだー!」

私たちは、前に進もう。


感想ありがとうございます。

少しずつですが、返信させていただきます。


また、評価やブックマークもありがとうございます。

ランキングに載って驚きました。

楽しんでいただけるよう、頑張りたいと思います。

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