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勇者の陰に英雄あり ~手柄をすべて譲った俺は、悪神の加護を手に理不尽な世界を叩き潰す~  作者: 日向ぼっこ
第五章:罪人たちの凱歌

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073.夜明けの空

パリィィィィィン……ッ!!!


 ソリダリスの広場に、凍てついた時間が砕け散る音が響き渡った。

数ヶ月もの間、神の呪いを封じ込め、ガルシアを閉じ込めていた氷の檻が、眩い結晶の雨となって朝日に溶けていく。


「……ガルシアさん!!」


 真っ先に駆け寄ったのはノエルだった。

膝から崩れ落ちそうになるガルシアの身体を、彼女はなりふり構わず抱きとめた。

かつて触れることさえ拒んだ死の冷気はもうない。

そこにあるのは、確かに脈打つ、温かな生命の鼓動だった。


「……よぉ。

 ……心配、かけすぎたな」


 数ヶ月ぶりに発せられた声は、ひどく掠れていたが、紛れもなく俺自身のものだった。

俺は震える左手で、ノエルの柔らかな背中をゆっくりと抱き返した。

彼女の流す熱い涙が俺の首筋に触れて、ようやく現実に帰ってきたことを実感させてくれる。


「おせーんだよ、バカ野郎」


 呆れたような、だがどこか泣きそうな声を上げて、レオンが歩み寄ってくる。

その隣には漆黒の聖剣を鞘に納め、満面の笑みを浮かべたカイルが立っていた。


「……おかえり、ガルシア」


「ああ。

 ……あんなところで寝てたら、背中が凝って仕方ねえよ」


 俺はカイルの差し出した手を掴み、ノエルに支えられながらゆっくりと立ち上がった。

右腕にはまだ、あの戦いの名残である黒い氷の紋様が深く刻まれている。

だが、それはもう俺を蝕む呪いではない。

世界を守り抜いた、誇り高き「魔王」の勲章だ。


 ふと、広場の隅に目をやると、道化服を纏った女が、満足げにこちらを見ていた。


『――くくっ。

 やはり面白い、最高に愉快なバカじゃ。

 神の猛毒を食らって、なおピンピンしておるとはのぉ』


「ロキ……。

 お前のおかげで、退屈しない死後(?)体験だったぜ」


『ふん、暇つぶしは終わりじゃ。

 わらわは次の「面白いバカ」を探しに行くとしよう。

 ……達者でな、魔王ガルシア。

 そして、神を捨てた勇者カイルよ』


 ロキは三日月のような瞳を細めて笑うと、花びらのように風に舞って消えていった。

もう、俺たちに神の介入を許す隙はない。


 俺は大きく息を吸い込み、ソリダリスの街を見渡した。

ボロボロになった城壁は修復され、広場には活気が溢れ、かつて俺に石を投げた民衆が、今は心からの歓声で俺の生還を祝っている。


「……カイル。

 これからどうする。世界はまだ、混乱の真っ只中だろ?」


「そうだね。

 やることは山積みだよ。

 でも、今の僕らならどこへだって行ける。

 神様の脚本なんてない、自分たちの物語を作りにね」


 カイルが空を指差す。

そこには、かつての偽りの黄金色ではない、どこまでも透き通った、本当の青空が広がっていた。


「……そうだな。

 ……よし、まずは飯だ!

 ノエル、とびきり美味いもんを作ってくれ!!」


「はい!

 もちろんです、ガルシアさん!」


 ノエルが花が咲くような笑顔で応える。

俺は右手の黒い紋様を見つめ、不敵に笑った。


魔王と勇者。


相容れないはずの二人が手を取り合い、神を堕としたその先に続く、新しい世界の夜明け。


俺たちの戦いは、今、本当の意味で始まったばかりなのだから。




ついに完結です、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!

これからも新作や続編?を書いていくつもりですので、引き続き応援していただけたら嬉しいです!



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