043.太陽の暗転、列強の非道
上空を覆う漆黒の氷壁が、悲鳴のような軋みを上げ続けている。
俺の魔力は、数万の軍勢が絶え間なく放つ砲火を受け止め続け、もはや感覚が麻痺し始めていた。
視界が赤く染まり、指先から熱が失われていく。
だが、俺が膝をつけば、この下にいる五千人の命が消える。
それだけが、俺をこの玉座に繋ぎ止めていた。
「ハァ、ハァ……
まだだ……
まだ、耐えられる……」
氷壁の維持に全神経を注ぐ俺の脳裏に、不吉な予感が走った。
敵の砲撃音が、一瞬だけ止んだのだ。
嵐の前の静けさ。
それは、次に来るのが単なる数押しの攻撃ではないことを意味していた。
◇◇◇
一方、連合軍の本陣。
カイルは、軍の中央に設営された魔導通信の天幕へと呼び出されていた。
天幕の中央には、不気味な文様が刻まれた杖を持つ数人の宮廷魔導師たちが円陣を組んでいる。
彼らが唱える呪文に呼応するように、空中に巨大な魔力の鏡が浮かび上がり、そこには遠く離れたシトラス王国の玉座にふんぞり返る国王、ルイン・シトラスの姿が映し出されていた。
「カイルよ。
戦況は膠着しておる。
我が王国の威信を、これ以上泥に塗ることは許されぬ」
鏡の中から響く国王の声は、安全な王宮に身を置きながら、戦場の血を娯楽のように捉えている冷酷さに満ちていた。
ルインの手元の地図には、ソリダリスの「非戦闘員区画」
――最も多くの避難所が集まる場所が、赤く印を付けられている。
「その聖剣の光で、ここを直撃せよ。
魔王の盾とて、内側から民が崩れれば維持できまい」
カイルは耳を疑った。
「……陛下、何を仰るのですか!
通信越しとはいえ、正気とは思えません!
あそこには戦う術を持たない人々がいる。
そんなことは、勇者の、正義のすることではありません!」
「黙れ。
勝利こそが正義だ。
……者共、始めよ。
不甲斐ない勇者に代わって、その力を引き出してやれ」
国王が冷たく言い放つと、通信を維持していた宮廷魔導師たちが一斉に杖をカイルへと向けた。
「ぐっ、あ、あああぁぁぁッ!!」
カイルの左手の甲にある「あざ」が、異常な熱を帯びて拍動を始めた。
魔導師たちは禁忌の魔術で勇者の力を強制的に外部から活性化させたのだ。
カイルの意志とは無関係に、聖剣が眩い、しかし禍々しいほどの光を放ち始める。
「やめろ……
僕の体……
動くな……ッ!!!!」
カイルの叫びは、冷笑を浮かべる鏡の中の国王には届かない。
操り人形のように剣を構えさせられた彼は、意に反して、ソリダリスの最も脆い急所へとその光を放ってしまった。
◇◇◇
俺は、空を裂いて降り注ぐ「黄金の閃光」を見た。
それはこれまでの砲撃とは一線を画す、圧倒的な純度の魔力。
カイルの、勇者の聖剣の輝きだ。
――ガァァァァァンッ!!
漆黒の氷壁が、内側から食い破られるように粉砕された。
光の柱は真っ直ぐに、ノエルたちが守っていた避難所を飲み込んでいく。
「……カイル
……お前……っ!」
俺の視界の中で、かつての親友が放った光が、俺の守るべき場所を焼き払っていく。
混乱と悲鳴が伝わってくる。
俺の中で、何かが決定的に音を立てて崩れ去った。
あいつは、本気で俺を
――俺たちが築いたこの場所を、殺しに来たのだ。
「……救いなんて、最初からなかったんだな」
俺の魔力が、絶望に呼応してドロリとした漆黒の闇へと変質していく。
勇者の光が、俺の中に残っていた最後の「情」を、跡形もなく焼き尽くした瞬間だった。
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