第39話:正義の騒がしさ
保安局5階、人狼対策課にて。
「レイカさぁぁぁん!僕のパトカーで見廻りデートにいきませんかぁぁぁぁ?!」
と、盛大にスライディングをかますのはウルフ対策課の課長、ビリー・フルムだ。彼がスライディングをかますと、ウルフ対策課の紅一点、レイカ・ラッセルが容赦なくビリーの背中をヒールで踏みつける。
「ねぇ、誰でもいいから倉庫からバッド持ってきてくれない?」
レイカの顔は穏やかだが、殺意マシマシだ。
「姐さん!気持ちはわかりますけどその殺意押さえてくださいぃ!仮にも課長なんですこの人!……ってジルさんも見てないで手伝ってくださいよぉ!」
殺意剥き出しのレイカを制止するのは新人のシニト・カノだ。
「ガンバレーオマエナラデキルサー」
「適当?!……はぁ、こういう時に限ってジンさんいないし……この課にはまともな人いないんですか……」
シニトがため息をついた時、扉が突然開く。入ってきたのはウルフ対策課副課長ジン・ラッセルだ。
「ジンさぁぁん!助けてくださぁぁい!また課長と姐さんがぁ……」
がジンに助けを求めるとジンが言う。
「課長も姉貴もやめてくれ………そしてジル、なぜ今お前は俺のデスクの上のもん全部どけて布団を敷いて寝る体制なんだこの野郎?」
「あぁジンさんいたんですか。」
ジルはそう言うとそのまま布団をかぶって寝ようとする。
「待て待て待て待て!」
ジンが突っ込むとジルはアイマスクをつけたまま言う。
「なんですか……あぁ、わかりました。"ジンさんおやすみなさい"」
「ちげーよ挨拶とかの問題じゃなくて……ったく、こんなクソ大変なときにこいつらは……」
ジンはため息をつくと書類を机に置く。
「あら、ジン。また面倒な仕事押し付けられたの?」
レイカはヒールでビリーの背中をぐりぐりしながらジンに聞く。
「あぁ、それがな……」
ジンの後ろから白髪の少女――エルがひょっこり顔を出す。エルは手錠をジャラジャラと揺らしながらため息をつく。
「……お腹すいた。何もたい焼きまで没収することないのに……」
「……しょうがねぇだろ。一応お前は容疑者なんだ……」
「お腹すいた」その言葉にレイカが反応する。
「あら。こんな可愛い子がお腹を空かせているなんて……街を守る一刑事として見逃せないわね。」
レイカはそう言うと冷蔵庫から白い箱を取り出す。
「たい焼きじゃなくて申し訳ないけれど……これ、有名店のケーキ好きなの食べてね。」
レイカはそう言うとお茶を用意し始める。
「ち、ちょレイカさん!仮にも彼女被疑者ですよ?!そんなお茶なんか出しちゃって……」
シニトが言う。
「うるさいわね……第一、証拠が曖昧じゃない。近くにいただけで被疑者扱いなんて……ねぇ?」
レイカはジンを見る。
「まぁ、なぁ……結局上の命令だからな。相手は四大財閥が相手だ。犯人捕まえている形でも保たねぇと上の首がつながらんのだろう。」
ジンが言う。
「もぐもぐ……保安局も大変だね。そんな足しにもならないプライドのために、こうして善良な市民を留置しなきゃいけないんだから。」
エルがチョコレートケーキを頬張りながら言う。
「そうよねぇ……第一うちの部署の『お上』がしっかりしてくれなくちゃね?」
レイカが床で死体のように転がっているビリーを見る。
「あぁレイカさんが俺をゴミを見るような目で見ているぅ……」
ビリーが苦しそうに(そしてどこか嬉しそうに)声をあげる。
「ったく、課長はとっととこいつの事情聴取してくださいよ。一応仕事なんですから」
ジンがため息をつきながら椅子に座る。
「まっかせなさぁい!このビリー、仕事とあらばどんなことも成し遂げよう。あわよくばこの後レイカさんとディナーに……」
ビリーが言い終わらないうちにレイカの鉄拳がビリーの頭に飛んでいた。
「ほら、早く仕事に行ってください変態課長。そして今日は確か残業という素晴らしい予定があるじゃないですか」
「……レイカ、目は笑ってるのに心は笑ってない」
エルは若干退いていた。




