20 花祭り④
肩にポンと手が置かれた。と思ったら、その手にかかる体重が一気に増える。
驚いた身体がビクッと跳ね、反射的に振り返ったその先。
目の前に、短めの黒髪があった。
「やっと、見つけた……」
「ユーリ、さま……?」
息を切らしながら顔を上げた彼は、走ってきたのだろう、苦しそうな表情をしている。
その彼の安堵した瞳を見て、押さえていた涙が込み上げてきた。ぼろぼろと零れて落ちる雫が、ユーリさまのシャツの袖に染みをつくる。それを見た彼は、私を優しく抱きしめてくれた。
「無事で良かった。カトリーアが珍しく憔悴していて、聞けば君がいなくなったと言うから……」
「ごめんなさい。探しにきてくださって、ありがとうございます」
ユーリさまは私を抱きしめる腕にギュッと力を込めると。
「本当に、心配した」
そして腕を解き、私の顔を見て言った。
「行こう。俺も皆を置いてきてしまったから、早く戻って安心させなければ」
「はい」
でも、そういえば。
「すみません、私、道が分からなくて。大通りはあのとおり、割り込めるような状況ではないですし……」
「大丈夫だ、俺が分かる。ほらこっちだ、行くぞ」
「ありがとうございます……」
差し伸べられた手に自分の手を重ね、私たちは大通りとは反対方向へ歩き出した。
「アリアさまぁぁぁぁぁぁぁ! 良かった、無事で……!」
半分涙目のカトリーアさまの熱烈なハグを受け止めて、皆を見渡す。平服に身を包んだ、護衛らしき人も数人居た。申し訳なさそうな顔をしている。
「はぐれてしまってごめんなさい。以後、気をつけます」
「いいえ! 私の方こそ、手を離してしまってごめんなさい。アリアさまは王都に不慣れだというのに、ごめんなさい、怖い思いはしなかった?」
「大丈夫でした。ユーリさまがすぐに助けに来てくださったので」
「私が不甲斐ないばかりにごめんなさいアリアさま」
「大丈夫ですよ、カトリーアさま」
「まあまあ、何もなかったから良かったんじゃない?」
止まらないカトリーアさまのごめんなさい連呼に割って入ったのはヘレンドさまだった。それでやっと、カトリーアさまが鼻を啜りながら顔を上げる。
ありがとうございます、とヘレンドさまに感謝したのも束の間。
「それで、ユーリ。さっき戻ってきた時、アリア嬢と手を繋いでいたけれどもしかして何かあったぁ?」
「そんなわけあるか!」
「なにもないです!」
とんでもない爆弾発言。私とユーリさまは即答で否定するが、ヘレンドさまはにたにたと意地悪な笑みを消そうとしない。ああ、今、絶対私の顔、赤くなってる。
それを見てけらけらと笑った殿下が面白そうに言う。
「ユーリったら、アリア嬢とはぐれたと聞くや否や、速攻で駆け出してさ。いやぁ、あんなに焦るユーリは久しぶりに見たよ」
「ラギまで……。本当に、君達が想像するような事は何も、決して! 無かったからな。またはぐれてはいけないと思ったら、自然と手が出ていただけだ」
心なしかユーリさまの顔も赤い気がする。
「ふ〜ん。なんだ、つまんないの」
「何だそれは」
本当に何も無かったんだけどなあ。私も、差し出された手を自然と取ってしまっただけだし。
「ほら、この話はここまでにして、店に行くぞ。早くしないと混む」
「あ、それはやだなあ。しょーがない、ここまでにしといてあげる」
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