ラウル、奴隷を買う
誤字報告ありがとうございます。
「こんにちは。」
「お、ラウルじゃないか。元気か?」
奴隷商人の店は、ラウルが盗賊から解放されてから伯爵夫人に買われるまで、生活していた場所である。前世では奴隷の取引は禁止されていた。いまでも倫理的に奴隷を買うことを躊躇してしまうこともある。しかしこの世界では、多く場合、奴隷になる前より生活が良くなっていることが多い。
ラウルの場合でもそうであった。この店に来るまでは、生きていける最低限の食事しか与えられなかった。この店に来て、初めて朝昼晩と食事を食べることができた。ラウルにとっては天国のような場所だったのである。
「はい、元気です。えーと、王都で倉庫業のような仕事を始めることになりまして、そのための人材を紹介していただきたいのですが。」
「若いのに、相変わらず忙しいようだな。」
「ええ・・・、まぁ。」
奴隷商人のおっさんは、そういって部屋の奥に消えていった。しばらくして数人の男達を連れてきた。どの男も力がありそうで、がっしりとしていた。
「あ、すみません。倉庫といっても力仕事はないのです。実際の荷物の搬入搬出は別の者にやらせます。仕事の内容は、倉庫への物資の入出庫管理と、在庫管理。あとは、売り上げの計算と発注などをお願いしたいのですが。」
「んー、それだと、当然文字の読み書きもできないと駄目か。少し高くなるぞ?」
「あ、はい。大丈夫です。」
再び、おっさんは男達をつれて奥へと消えていった。そして代わりに連れてきたのが人族の女性であった。歳は20才後半くらいだろうか。
「こちらは計算もできて、文字の読み書きもできるぞ。」
「計算もできるのはすごいですね。ではこの方にします。」
「わかった。」
おっさんは、すぐに契約魔法の準備に取りかかった。
契約も無事に終わった。早速、彼女を王都へ送ろうと思う。
「えーと、お名前はルーナさんでしたっけ?」
「はい。ご主人様のことはなんとお呼びすれば宜しいでしょうか?」
「俺はラウルです。好きに呼んでくれていいですよ。」
「それでは、ラウル様と呼ばせていただきます。」
「わかった。えーと、これから魔法を使いますが、とても珍しい魔法なので秘密にしているのです。絶対に秘密を守ってもらうために、奴隷であるあなたを迎えることにしたのです。誰にも絶対に口外しないようにお願いできますか?」
「はい。」
前もって、魔法を使うことは伝えた。ラウルは早速王都へと転移した。周りの風景が一瞬にして変化していく。転移先は王都の検問所の少し手前である。ラウルはいいが、ルーナさんはこれからずっと王都で生活することになる。正規のルートで検問所から入った方がいいだろう。
「・・・。」
「転移の魔法です。絶対に秘密ですからね。これは命令ですからね。」
「・・・。」
(駄目だこりゃ。)
ルーナさんは驚愕の顔のまま動かない。
知らなかったのだが、検問所では税金を取られた。前回来たときは馬車の中にいたのでわからなかった。通行税のようなものだろうか。検問の担当者からは怪訝な目で見られた。まぁ、まだ20代後半の女性と子供がトコトコと歩いてきたものだから当然かもしれない。
検問所を抜けると、またしばらく街道が続く。地図上では、検問所から先が王都となっている。しかし、まだ建物などは見えてこない。半時間ほど歩いていると、やっと建物が見えてきた。
ラウル達はまず商業ギルドを訪れることにした。倉庫となる建物を紹介してもらおうと思っている。ギルドに到着すると受付へと並ぶ。
「はい、次の方~。」
「こんにちは。」
「あら、挨拶ができて偉いねー僕。」
「・・・。」
(うっわ・・・、久しぶりに子供扱いされたよ。)
「すみません、倉庫として使用できる物件を紹介して欲しいのですが・・・。」
「えーと、後ろのお姉さんと変わってもらえるかなー?」
(駄目だこりゃ。)
ラウルは受付の女性の目前に、商業ギルドカードと伯爵様から頂いた短刀を置いた。
「ん? これは何かなー?」
女性はギルドカードを確認すると、見るまに顔色が変わっていく。
実はラウルのギルドカードは現在Cランクである。それも、特に重要人物にだけ特別に記載される、VIPの記号がカードに記載されている。これを見せると大抵すぐに奥の部屋へと案内されてギルドマスターが直々に対応するのだが。
そして短刀は旦那様から頂いたもので、伯爵家のお客人の証拠である。これを持つものは貴族と同じ権力を持つともいわれている。
受付の女性は素早い動きでその場に立ち上がり、上半身を腰から90度に曲げ最大限の礼儀を見せた。
「た、大変失礼致しました。ギルドマスターをすぐにお呼び致します。」
「いや、そこまでする必要はありません。物件を紹介していただきたいのですが。」
「は、はい。物件ですね、少々お待ちください。」
女性は、急いで物件の情報がまとめられているファイルを取りにいった。




