護衛任務
「ん、・・・うーん。」
ラウルはゆっくりと目を覚ました。今日は護衛任務の出発日である。
窓の外を見ると、山と空の境目が少し白く明るくなってきている。もうすぐ日の出のようだ。この世界では、暗くなると寝てしまうので、みんな早起きである。ただし約一名を除いて・・・。ニーナはいつも、シルフィに起こされるまで部屋から出てこない。
ふと手元を見ると、先日買った盾がぼんやりと光を発している。昨日寝るまでの間、ずっと魔力を送り続けていたので、ウトウトしながらも自己修復に必要な魔力は送れていたようだ。 ゆっくりと持ち上げてみると、目の前にメッセージのウインドウが開いた。そこには・・・、
【『スヴァリンの楯』が自己修復を希望しています。実行しますか? はい。いいえ。】
上記のように表示されていた。ラウルは早速「はい。」を選択する。すると、盾は手のひらからゆっくりと浮かんでいく。
「え!?」
ラウルは浮遊する盾を眺めながら興奮していた。
(すごい、浮遊魔法は初めて見た。さすが、国宝級だな。。)
動きが止まったかと思うと、ベッドの上に魔法陣が浮かび上がった。次の瞬間、目が開けられないほどの眩しい光がラウルの目を襲う。目が見えるようになると、ベッドの上に盾が落ちていた。念のため鑑定してみる。
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スヴァリンの楯
失われた古代文明の遺産、魔法の盾。高度な魔法技術が使用されていて、敵の攻撃を反射する機能『反射』と、敵の攻撃を吸収する機能『吸収』をもつ。その価値は計り知れない。
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自己修復が終わり、鑑定結果も正常に表示されるようになったようだ。
(これはすごい盾が手に入ってしまった・・・。)
三人が起きてくると、宿屋で朝食を頂く。
皆の準備が整ったのを確認して、宿代を精算した。もう宿に泊まることはないだろう。
西門に到着すると、すでに冒険者が何人か待っていた。馬車も今回は長距離走るため、少し大きめの種類が用意されているようだ。その馬車が三台並んでいる。
冒険者の中にひとり、何処かで見たような気がする者がいる。相手も気がついた様子で、睨んでくる。
(うわぁ、最悪だ・・・。もう会うことはないと思っていたのに。。)
その冒険者は、ラウルが一度ギルドで絡まれたとき、異次元に閉じ込めたことがある。たしか初めて異次元空間に、生きた人間を収納、取り出しに成功した瞬間だったと思う。あの時は実験に利用して悪かったとラウルは考えていた。謝る気はさらさら無いようだが。
「てめぇ、何処かで見たと思ったら、おかしな魔法を使うガキじゃねーか!」
「さあ、記憶にございません。人違いではありませんか?」
「しらばっくれているんじゃねぇ!」
短気な男は殴りかかってきた。流石に武器を抜くことはしないらしい。ニーナが超加速を使用する。そして、瞬時に男の後ろに回り込み、膝の裏を軽く蹴った。それだけで男はバランスを崩し、地べたに正座をするような格好で倒れた。
今日からパーティに危険が迫っている場合、相手に危害を加えても良いと少し命令を変更しておいた。以前のままだと、シルフィ以外が危険な場合は、人相手に攻撃できなかったからである。
「ちょっと、突然殴りかかってくるのは非常識ではありませんか?」
「くっ・・・、何だこの女、いつの間に後ろに・・・。」
見た感じ、この男は脳筋タイプの戦士らしい。鑑定してみると、素早さ(AGI)はニーナが勝っているが、流石に力(STR)ではこちらがかなりの差で不利のようだ。ラウルはまったく力(STR)のステータスには、ポイントを入れていないのだから当たり前ではあるが。
「てめぇ、妙な空間に俺を閉じ込めただろうが!」
ラウルはたった今、気がついたような顔をして答える。
「あ! あー、あの時の冒険者さんでしたか。しかし、あの時はCランクを強制されて、自分のパーティに無理矢理引き込もうとしたあなたが悪いんですよ?」
「新人は先輩の言うことを聞いていればいいんだよ!」
その時、後ろから声がかかった。
「ちょっと、なにやってんのよ?」
「リサ・・・。こいつが生意気に、言うことを聞かないから教育してやってんだよ。」
どうやら、同じパーティの女性らしい。
「どうせ、無理難題を押しつけたんじゃないの?」
(その通りです。)
「ただ、俺のパーティに入れって言っただけだ!」
「なんでこんな子供を?」
「アイテムボックスを使えるんだよ。」
「なるほど、それは欲しい人材だねぇ。。でも、無理矢理は駄目だよ。」
「くっ・・・。」
どうやらこの男、リサと呼ばれていた女に頭が上がらないらしい。
「それに、もうパーティ組んでいるじゃない。そこから引き抜こうなんて、無理に決まってるでしょう。諦めなさい。」
「ちっ、わぁったよ。」
「あなたも、うちの者が迷惑かけたみたいで、すまなかったねぇ。」
「いえ、諦めてくれるなら問題ありません。」
「でも、もしパーティが解散することになったりしたら、うちにいらっしゃいね。」
そう言ってその女性は笑いながら去って行った。
(結局は、勧誘していくんかいっ!)
丁度そこへ、依頼主である商人がやってきたようだ。




