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これからのこと

 リビングでお嬢様と向かい合って話をしていた。ニーナは自分の部屋に引きこもっている。

 現実世界とは切り離しているので、魔物に襲われることもない。今日からは、この家がラウル達の拠点になる。家を建ててから数時間経つが、MP量は減っていないので問題はなさそうだ。


「私の家よりは狭いけど、トイレやお風呂はこっちの方が優れているわね。」

「そうですか? 残念ながら現実世界には持って行けないのですけどね。」

「そうなの。」


 お嬢様はこの家の魔道具が気に入ったようだ。


彼女(ニーナ)と同じ家に住んでいて危険は無いかしら?」

「ああ、それは大丈夫です。お嬢様を守るように命令していますから。そして、お嬢様に危険が迫っているとき以外は、人には危害を加えないようにとも命令しています。そもそも、ニーナ自身にはお嬢様に何の恨みもないはずです。組織から解放された今、襲う理由がありません。」

「そう、それならば安心です。」

「まぁ本来は、異次元空間に監禁するために俺に預けられたのですが、ここまで広く快適な家になると、もう監禁とは言えなくなってしまいましたね。」

「少し話はしましたけど、もう十分に反省しているようなので監禁はしなくてもいいと思います。犯罪奴隷になった事で、十分に罰を受けたと思いますし・・・。」


 それから二人は、これからのことをまったりと話した。


 シルフィの家系は、もともと宮廷魔術師として王都で勤務をすることが多かったらしい。先祖代々魔術師の家系なのだそうだ。シルフィも、学園卒業後は王都で宮廷魔術師団に所属したいと思っていたらしい。それが、何故か冒険者になってしまったのだ。正直戸惑いもあるだろう。


「シルフィは、本当に俺についてきて良かったのですか?」

「ええ、大丈夫です。ずっと側に居られるだけで嬉しいですから。」

「そうですか・・・。」

「はい。」


 (うー、照れくさい。)


「俺はいままで女性とお付き合いしたことがありません。それなのに、いきなり婚約者ができるなんて、驚きですよ。なので、シルフィを幸せにしてあげられるのか、不安もあります。」

「私だって、殿方とお付き合いしたことはありませんよ。私はラウルの側に居られるだけで幸せだと感じてしまっています。これからも、ずっと一緒なのですから、ゆっくりとお互いのこと知っていけば良いと思いますよ。」

「はい。」


 そして、二人は見つめ合い、次第に甘いムードに・・・、ならなかった。


 まだ10歳の二人は、背景に薔薇が飛び交うような雰囲気にはならず、そのままお互いの部屋で休むことになった。現実世界ではすっかり夜が更けて、辺りも静まりかえっていた。


(コンコン)


 ラウルの部屋の扉がノックされる。

 少し緊張したようすで扉を開くと、そこには寝巻き姿のニーナが立っていた。


「え? どうしたのだ?」

「ご主人様、遅い時間にすみません。外が明るくて眠れなくて・・・。」

「あー、そうだった。」


 ラウルが創造した世界は常に明るかった。これでは、寝るのは大変そうである・・・。

 

(これは、イメージで夜にできるものなのか?)


 ラウルは上に向かって『夜になれっ』と、心の中で闇夜のイメージをする。すると、時が移り変わるように周囲が闇に包まれた。想像以上にこの異次元空間は操作が可能のようだ。


「なんとか夜になったみたいだ。」

「なんでもありですね。。」


 ニーナはもう驚きもせず呆れていた。


 皆が寝静まった頃、ラウルはひとり考えていた。これからのことを。

 

 シルフィとの婚約が決まり、五年後には結婚することになった。つまり、五年後にはラウルは伯爵家の人間となる。将来、家を継ぐのはお嬢様なのか、ラウルなのか不明だが、貴族になることは間違いないだろう。

 一般的には、貴族は世襲制で子供が代々継いでいく。平民が貴族になるには、国王様から叙爵されるしか方法はない。ラウルのように平民を婿として迎え入れることは、例外中の例外である。ただ、ニルバーシュ伯爵家に限って言えば、奥様が平民だったらしいので、前例はあるということになる。


 今現在の目標は、いざという時にお嬢様を守ることができるように、レベルを上げて強さを手に入れることだろうか。勇者のような、飛び抜けた強さは必要ない。たったひとりの女を守ることができれば、それでいい。まずはレベル20を目標に明日から頑張っていこうと思う。



 翌朝、ラウル達は冒険者ギルドへ依頼を受けに向かった。ギルド内は朝の混雑でごった返していた。少し時間をずらして来るべきだったかもしれない。


「すみません、ラウル様ではありませんか?」


 突然、ギルドの受付の女性から声がかけられた。何事だろう?


「もし、こちらに来られたら、ギルドマスターの所まで案内するように言われております。一緒に来て頂いてもよろしいでしょうか?」

「わかりました。」


 ラウル達は言われるがまま、女性の後ろをついて行った。二階のギルドマスターの執務室へと通されると、ギルドマスターのガイルが座って仕事をしていた。


「あ、ラウル君。よく来てくれたね・・・ん? どうしてあなたがこちらに?」

 

 ガイルはお嬢様を見つけて不思議そうに聞いてきた。


「あ、私は今、冒険者のシルフィという者です。私の身分などは気にせず、ひとりの冒険者として接していただければと思います。」


「そうでしたか。それでは、ラウル君に指名依頼をしたいのだがどうだろうか?」

「指名依頼ですか?」


 指名依頼とは、依頼者が直接冒険者を指名して依頼をすることである。


「なぁに、危険な仕事ではない。今回の緊急討伐依頼の際に、後方の補給部隊の任について欲しいと思っている。」

「つまり、補給物資を運んで欲しいということですか?」

「うむ。聞いたところによると、アイテムボックスを使えるのだろう?」

「わかりました。ただし、俺はいま三人でパーティを組んでますが、依頼も俺個人としてではなく、パーティとして受理させてもらってもいいですか?」

「ああ、かまわない。」

「では、その依頼、受けさせていただきます。ゴブリンの集落が気になっていたので、丁度いいです。」

「ありがとう、そういって貰えると助かるよ。」


 こうしてラウル達の次の仕事が決まった。




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