どうしてこうなった
応接室には、旦那様、イブ様、シルフィお嬢様、ラウル、ニーナが揃っていた。。
どうしてこうなった?
それを説明するには、少し時間を遡る。
「まずは、ラウルから犯罪奴隷を切り離す。そして、この屋敷の地下にある牢獄に、一生閉じ込めておけば大丈夫ではないか?」
「それは嫌です!」
「・・・、それは何故じゃ?」
俺は返事に困っていた。
少し黙っていると、ドアがノックされる。
(コンコン)
「どうした?」
「私よ、ちょっといいかしら?」
ドアの向こうからイブ様の声が聞こえた。
旦那様はすぐに許可を出して、奥様を部屋の中に呼んだ。
「かまわない、入っておいで。」
イブ様がドアを開けて入ってくる。
「あなた、シルフィもいないのに、ラウルと話しをしても何も解決しないわよ。」
「何故じゃ?」
「今回の件は、あなたが勝手に決めてシルフィに相談もしなかったのが原因じゃない。」
「そんな、わしは当主だぞ。勝手に決めて何が悪い!」
「そんなことを言っていると、本当にあの子はラウルを追いかけて、家を出て行ってしまうわよ?」
(なんか、話の次元が違っていませんか?)
「そ・・・、そんな馬鹿な!」
「あの子が一度言い出したら、本当に何を言っても聞かないのは知ってるでしょう。。」
「く・・・。」
(どうやら心当たりがあるようで。)
「くそっ、一体誰に似たのやら・・・。」
「間違いなくあなたですわ。。」
「なにぃっ!」
「あら・・・、思い当たることしか無いんじゃなくて?」
「・・・。」
(怖い・・・、この奥様、マジ怖い。ここは空気に、空気になりきるしかない。)
「ラウル・・・、ごめんなさいね。娘が学園から戻ってくるまで少し待ってくれないかしら・・・。」
「は、はい。奥様。」
そして、現在に至る。
要するに、家族全員で話し合うことになったのだ。
ニーナも出すように言われたので、異次元から呼んで壁際に立たせてある。
一応、動くなと命令している。
お嬢様が学園から帰宅した。この部屋に全員集合である。
この部屋には殺気が立ちこめている・・・気がする。
尋常な状況ではない。
「それで、父様。ラウルを護衛に戻してくれるの?」
お嬢様が話し始めた。
「その方向で話していたのだ。まずは、ラウルから犯罪奴隷を切り離す。そして、この屋敷の地下にある牢獄に、一生閉じ込めておくという事にしようとした。しかし、ラウルが反対したのだ。」
「それで誰が彼女の主人になるのかしら?」
「それは、ワシでいいじゃろう。」
「あら、あんな若い子を犯罪奴隷にして・・・、何をしようというの?」
「なっ・・・、何を言っているんだ! 主人になるだけで、一度も会うつもりはないわ!」
(もう止めてください。夫婦で喧嘩しないで・・・汗)
そこに、お嬢様が追い込んできた。
「ラウルはどうして反対なの?」
「それは・・・。」
仕方がない、本心をそのまま伝えることにしよう。
「彼女は組織の奴隷として存在していて、自分の意思では何も決める事ができませんでした。
今回の暗殺だって、組織の命令であって、彼女はそれに何も考えずに実行するだけの機械だったのです。それに、暗殺に失敗した場合は、仲間から殺される予定でした。それほど彼女は酷い環境にいたのです。
そんな組織から、犯罪奴隷となって初めて自由になれたのです。確かに、主人となる者が酷いものであれば、また彼女は地獄を見ることでしょう。しかし、俺が主人である限り、最低でも人を殺さないといけないという地獄からは救ってあげたい。そう思うのです。
そして、自由になれないという点で、一生地下の牢獄に閉じ込めるのも反対でございます。」
「そう・・・、随分と彼女にやさしいのね。。ここ数日ずっと一緒にいたらしいじゃない? 仲良くなったの?」
「いいえ、普段は異次元空間に閉じ込めていますから。。顔を見ることもありませんよ。戦闘の時にだけ外に出して戦わせていただけです。まぁ、最低限の食事は与えていましたが。」
「そう・・・。エミリとか言ったかしら? あなた本当に異次元空間に閉じ込められていたのかしら?」
お嬢様の質問にニーナは答える。
「今は、ご主人様から『ニーナ』という名前を頂いてます。まず、お嬢様を命令されたとはいえ暗殺しようとしたこと、誠に申し訳ありませんでした。深く後悔しております。私は、ずっと異次元空間のかいて・・・、じゃない、最低限の環境が整った空間にいました。」
(今絶対、快適な空間と言いかけただろ。)
「あら、名前まで付けてもらったの。随分とかわいがっているようじゃない?」
(えっと、殺気を感じるのですけど。)
イブ様がそこに追い込んでくる・・・・。
「ラウルはニーナと私の娘、どちらが好きかしら?」
それを聞いたお嬢様、真っ赤になって慌てて言い返す。
「ちょっ、お母様。何を言っているのですか。」
「あら、あなただって聞きたいのではなくて?」
「う・・・。」
「おい、おまえ! 何を言っているんだ」
二人の目線が、俺を突き刺す。
旦那様も怒り始めている。。
「えーと、何の事でしょう?」
「簡単な話よ、うちの娘はラウルに恋をしているわ。ラウルはどうしたいのかって話。。」
「お母様!!」
突然ばらされた告白に、お嬢様、さらに顔を赤くして奥様を責め立てる。。
ラウルも突然の告白に呆然としていた。
「そんな、お嬢様が元奴隷の俺なんか好きになるはずがありませんよ。。何を言っているのですか。」
「あら、逃げるの?」
「・・・。」
(くそ・・・、奥様苦手だわ。。)
「嫌いな訳がありません。ご恩がある家のお嬢様です。死んでもお嬢様だけは逃がすつもりでいました。」
「それは、好きと取っても良いのかしら?」
「大切な方であります。」
(お嬢様、リンゴのように真っ赤ですよ。。)
「私も、ラウルのことお慕い申しています・・・。」
(あ・・・、駄目だ。俺も今きっと、顔が真っ赤だ・・・。)
これに怒ったのは旦那様。
「ちょっと待て! 元奴隷に大事な娘をやるわけにはいかんだろ!」
「元平民の私に、無理矢理に結婚を迫ったのは何処のどなたかしら?」
「・・・。」
(おい、旦那様。。奥様平民だったのですか。)
「おい、シルフィ。。こんな奴の何処が好きなんだ?」
「それは・・・、寝室でお姫様抱っこをされた時、もうこの方しか見えなくなりました・・・。」
(その言い方は誤解を招く。。)
「なにーーーーーーーーーーー、寝室だと!?」
「ちょっと、ラウルさん? 詳しく。」
今度は夫婦で責められる。。
「修学旅行の時ですよ! 火事で急いでたので、寝室に飛び込んで抱きかかえて外に避難したのです! 決してやましいことはしていませんから!」
「まぁ、それは素敵ですわね。」
そんな流れを壁際で黙って見ていた女がいた。
(あー、どうでもいいから、早く部屋に戻してくれないかしら・・・。というか、私のご主人様代えられてしまう可能性もあるの? それは困る・・・。こんな快適な生活、いまさら手放せないわ。。)




