はじめての依頼任務3
ラウル達は急いで村まで戻ってきた。
早速村長に報告をする。
「村長、森の奥にゴブリンの集落ができていました。この村に襲ってくる可能性もゼロではありません。どうするかはお任せしますが、避難することも視野に入れておいた方が良いです。」
「なんと!? 集落ができておりましたか・・・。」
「とりあえず、これだけ狩ってきましたので、依頼書に完了のサインをお願いできますか?」
ラウルは駆除したゴブリンの耳を村長に見せた。ゴブリン討伐証明のための部位は耳である。正確な個数は数えていないのでわからない。約30匹分くらいはありそうだ。
「おお、確かに確認しました。ありがとうございます。」
そう言って村長はサインをしてくれた。
「俺達はこのままギルドに戻り、討伐隊が出せないか聞いてみますので。」
「そうですか、お願いします。村でも代表者会議をして今後の対応を決めたいと考えております。」
ラウル達は挨拶を終わらせ、村長が手配してくれた馬車で領都を目指す。馬車は休憩もなく走り続け、その日の夜には領都に到着した。御者に今晩のお酒一杯分くらいのチップを渡して別れた。
ギルドはまだ営業している時間だった。早速、ラウル達はギルドへ入っていった。
受付は冒険者が戻って来る時間帯なのか、長い行列ができていた。今まさに襲われているという訳でもないので、大人しく受付に並んで順番を待つ。
10分ほど待っていると、やっとラウル達の番になった。
「依頼完了の処理をお願いします。それと、追加の情報があるのですが、今此処で言ってもいいですか?」
「はい、追加の情報とはどのような内容でしょう? 場合によっては上を呼んでまいりますが?」
「村から北に行った先の森で、ゴブリンの集落を見つけたのですが。」
「少々お待ちください、ギルドマスターに報告します。」
やはり重要な要件に当たるようだ。
少しすると、二階のギルドマスターの執務室へと案内された。
「ああ、君が情報をくれたラウル君だね。貴重な情報をありがとう。俺はギルドマスターのガイルだ。よろしく。」
「はい。」
「早速だが集落を見つけたときの状況を教えてくれるか?」
「はい、ゴブリンの討伐任務で訪れていた森の奥で、100匹ほどのゴブリンの集落を見つけました。奥にはゴブリン・ロードと思われる個体もおりました。」
「ゴブリン・ロードだと?」
「はい。」
「遠くから見ただけなのだろう?確かなのか?」
「はい、俺は鑑定スキル持ちなので。」
「なんと!? 鑑定スキルか。それならば間違いはないだろう。間違いであってほしかったけどな・・・。」
ゴブリン・ロードはギルドマスターから見ても脅威なのだろう。
「わかった、緊急討伐依頼を出そう。しかし・・・。」
ギルドマスターのガイルは、そこまで言って語尾を濁した。しばらく考える仕草をしていたが、静かに語り出した。
冒険者ギルドにも報酬を出すための資金は貯蓄されている。今回のような場合、難易度が高いために高ランク向けの依頼になるだろう。そうなると、高ランクの冒険者の依頼料は高い。正直、報酬が足りなくなる可能性があるらしい。
つまり、スポンサーが必要だということだ。ガイルはどうやら領主様に相談に行くつもりのようである。それならば、ラウルが行った方が話が早いかもしれない。
「わかりました、俺が領主様に話してみましょう。」
「何を言っている、これはギルドマスターである俺の仕事だ。」
「そうですか? では状況の説明の為にも、俺もご一緒しましょう。」
「う・・・うむ。説明して貰えるとありがたいが、かまわないのか? 領主様はいきなり追い返すようなことはされないとは思うが・・・。」
「あ、それは大丈夫だと思います。」
「うむ。。」
ガイルはラウルが領主家の元使用人なのを知らないのだから、当然の反応だろう。
それに、ラウルはすでに伯爵家の客人でもないので、以前のようにはいかないだろう。今回はお願いをする立場なので、より一層礼儀を尽くしていくべきだろう。
明日の朝、ラウルとガイルは、馬車で貴族街へと向かうことになった。領主の家を出て数日なのに、少し早すぎる出戻りで恥ずかしい思いも少しある。状況が状況なだけに、仕方がないとは思うが。
ラウルは受付に戻ると、本日分の報酬を受け取って宿へと戻った。
翌日、屋敷に着くとガイルを先頭に玄関まで歩いて行く。扉の前に立つと静かに扉が開き、メイド長が屋敷から顔を出した。ラウルの方をチラリと見て、話しかけてきた。
「アポイントは無いようですが、緊急の要件でしょうか?」
「はい、冒険者ギルドのギルドマスターをしております、ガイルと申します。至急お耳に入れたい案件がございます。領主様はご在宅でしょうか?」
「畏まりました、旦那様に確認してまいります。申し訳ありませんが、ここでしばらくお待ちください。」
流石に俺が居るとはいえ、初対面のギルドマスターを屋敷に入れるかどうかは、判断できなかったのかもしれない。大人しくラウル達は待つ。しばらくすると扉が開いた。
「旦那様がお会いになります。応接室までご案内致します。」
「ありがとうございます。」
こうしてラウルは、旦那様と久しぶりの再開をすることになった。当の本人は少し緊張しているようだ。ガイルの後ろを付いていくラウル。その後ろから呼ぶ声が聞こえた。
「ラウル? ラウル!!」
「え? お嬢様。」
「ラウル、今日は一緒に学校へ行けるのですか?」
「申し訳ございません、自分はいま冒険者として活動しています。学校にはテストの時には行けると思いますが。」
「え・・・、どうして? ラウルは私の護衛でしょう? 何故、一緒にきてくれないの?」
「お嬢様・・・?」
ラウルは、何かお嬢様の様子がおかしいと感じていた。
「お嬢様、どうかしましたか?」
「ねえ、ラウル。一緒に学校にいきましょう?」
何か、ねだるように上目遣いで問うてくる。
何故か目もウルウルしている気がする?
すると、侍女のエミュさんが後ろからお嬢様を引っ張っていく。
「駄目ですお嬢様! 学校に遅れてしまいますよ!」
「嫌よ! ラウルと一緒に行くのです! ラウルは私の荷物持ちで護衛なのよ?」
「お嬢様、ラウル様は今は冒険者で、お仕事で忙しいのです。」
「何故? ラウルは学生なのよ? 何故、冒険者なん・・・って・・・の・・・、ラウルーー!!」
お嬢様が引きずられるように遠ざかっていく。少しすると、叫ぶような声で俺の名前が聞こえた。
(どうしちゃったんだ、お嬢様は?)
ラウルはお嬢様の姿を見送ることしかできなかった。




