決めなければならない事
校長の長い話も終わり、ようやく夏休み前の集会が終わった。
明日から、もとい今日から高校に入学して2度目の夏休み。
やっと帰って夏休みを満喫できる。俺は嬉しすぎて少しにやけた。
「はぁ~、やっと集会も終わったな!なぁコータロー、このあと飯食いに行かね?」
「飯・・・か。別にいいけど、お前と二人で行くのか?」
こいつと二人で食べに行くことは何回もある。ただ、つまらない。
「大丈夫!今日はほかのやつも連れて行くからよ」
なぁ!と結城は他の二人に呼びかけた。
それに反応し女子2人が答える。美紀と晴奈だ。
名前は知っていてもそう話したことがない。
「あ、その前にちょっと用事済ませていくから先に行っててくれないか?」
俺がそう頼むと、わかったと返事をしてくれた。
場所は体育館から移り教室。
「-----ので、しっかりと気を付けること!いいか?」
毎年同じような注意事項を聞きうんざりする。もう高2なんだぞ?わかるよそれぐらい。
はーい。と、返事をするクラスのメンバー。それを聞いて担任は解散と唱えた。
「終わったぁー!コータロー、先行ってるからな!」
そう言って結城はは美紀と晴奈を引き連れて教室を出て行った。
と、重要なのはここからだ。
くどいと思われるかもしれないが、オレンジジュースの件だ。気になる。
絶対あそこには誰かがいるんだ。間違いなく、あの女子生徒以外に。
そこで、俺は考えた。昨日奴が言った望みを叶えてやるということを何に使うか。
"タイムトリップ"
これで、あの場所に今の俺が行けばあの空間には俺が二人存在することになる。
つまり、視野が広がるってことだ。
「そこで、誰も見つけられなかったら同じなんだけどな・・・」
呟くくらいだ、それでも一目のいないところで呟いた方がいいのか?
今、教室には俺を含め5人。・・・まぁ、大丈夫か。
しかし、やつの名前を決めてないな。なんでもいいか・・・。
目に見えないから「インビジブル」ってとこか?いや、長いな。両端をとって
「イル、俺を過去に戻せるようにしてくれ」
そう呟いた瞬間、時間が再び止まったような気がした。
ボクの名前は「イル」なのかい?
まぁ、インビジブルから取った。って、とこかな?
こいつ、完全に読んでるな。胸糞悪い・・・。
「どうでもいいだろ。ところで、過去には戻れるんだろうな?」
もちろん!今すぐにでも戻れますよ?
ただ、過去に戻れるタイムリミットは10分。
10分か。あの会話のやり取りは10分以内に済んだっけか?
「回数制限とかはあるのか?」
俺がそう問うと、3回だけできます!と答えてくれた。
こいつは本当に何がしたいんだ?悪いやつ、とかじゃないのか?
とりあえず、過去に戻ってみてみるか。あの現場を。
「じゃあ、もう帰っていいぞ。用は済んだんだし」
あ、わかりました~。くれぐれも変なことには使わないでくださいね?
では。
そして、また気づかなかったが時間が止まっていたらしい。
あの時、止まったという感覚は本当だったみたいだ。
「さてと・・・過去に戻ってみるか。・・・・どうやって?」
ここで、重要なことに気付いた。どうやって過去に戻るんだ?
途端、体が絞られる感覚、内臓などが飛び出るんじゃないかというくらいに締め付けられ体中が熱くなった。
すぐに教室を出て、水道の方に向かった。
「・・・あれ?水道がない」
普段ならあるはずの水道が、ない。
辺りをきょろきょろ見回す。そして、俺はおかしな点に気付いた。
「1-B?俺のクラスは2-Dだぞ?・・・違う、去年1-Bだった・・・まさかっ!?」
そう、多分そのまさかだ。どうやって過去に戻るんだ?と思っているところ勝手に飛んだらしい。
「一回を無駄にした。くそっ」
しかし、教室には誰もいない。運よくみんなが帰った後の教室に飛んだみたいだ。
「どうしたものか・・・10分経たないと戻れないのか。」
暇で仕方なかった。誰もいないであろう学校にただ一人。何もすることがない。
ただただ心臓の鼓動が聞こえるだけだった。
そしてまた、体が熱くなり焼けそうになる。
次こそは把握した。戻ったんだろう。教室を出てドア上部を見る。
「2-D・・・戻ったのか」
額から汗が流れ落ちる。
「楠君はまだ教室にいるの?」
学級委員長の桃山瑠奈が聞いてきた。俺はビクッとしてしまった。
「あ、あぁ・・・まだいると思う。鍵は俺が閉めておくから帰っていいぞ?」
委員長は、そう。と手を口元にあてニコッと笑った。
どうやら、学級委員長は残りの3人と一緒に帰るらしい。この教室に残るは俺一人。
とりあえず、もう一度過去に戻ってみるか・・・。
あの日のことを思い出せ。あの日を・・・
「うあっっつ!!あっつ!」
この感覚はいらないんだよ!と、思っていたら感覚は消えあの日の現場にいた。
「成功してる・・・」
「誰なんだよ・・・気のせい、なのか?」
"俺"だ。"俺"が今喋ってる。どこを見て喋ってるのか・・・もはや独り言だ。
ん・・・?でも、イルの声が聞こえない・・・。
「誰なんだっ!・・・出てこいよ!隠れてこそこそするなよ!!」
でも、この時の"俺"は反応している・・・。なんで、俺には聞こえないんだ?
まて、それより探さなきゃならない。
目を凝らして、遠くまで見るがいるかもわからない。
「ヤバい!"俺"がこっちへ来る!」
そうか、あの女子生徒の手か・・・隠れるしかないな。
俺は近くのトイレへ駆け込んだ。
「気づかないとでも思ってんのか?」
やっぱり、来た。はやくどっか行ってくれ・・・。
「この子・・・止まったままだ。・・・そういやさっきまで耳障りだった蝉も鳴いてない」
手の存在元を確認すると"俺"は元の位置に戻った。俺も静かにトイレからでて最初の位置に戻った。
その時、上の方で何かが動いた気がした。階段を上って行ったのか?
すぐに俺も登ろうとしたが、動くとこの時間の"俺"に気づかれてしまう。
どうすればいい・・・残りの一回を使うしかないか。
ちょっと待てよ。俺がさらに過去に移動することによって
この空間に存在する俺の数は次、俺が過去に戻るのを含めると3人になるのか?
現状で過去の自分と今の自分が存在するから、そうなるのか?
だと、したら今イルと話してる"俺"を除いて、2人目の"俺"を使うことはできないのか?
もし、この思考をそのまま引き継いでくれているのなら、2人目の"俺"はきっと動いてくれる。
次がラストだ。奴の正体を暴いて見せる。
「うっ...熱ぃ」
気が付くと、また教室に戻っている。額から汗が流れ落ちる。
「楠君はまだ教室にいるの?」
学級委員長が・・・あれ?これさっきも聞いたよな?これを聞く前に飛んだのか。
少し違う反応をしてみよう。
「いや、もう帰るぞ?だから、悪いが鍵は閉めといてくれないか?」
桃山は少し俯き、わかった!と答えた。
「ちょっと~、楠が閉めたあげなよ!」
委員長の隣にいた遠山楓が俺に強く言う。
それの同意を求めたのか紫裕子も強く言ってきた。
まぁ、少し別ルートを楽しめると思ったから言ったことであって、やることがあるから残っておかなくてはならない。
「あぁ、わかったよ。俺が閉めとくから先に帰ってていいぞ」
委員長は、そう。と手を口元にあてニコッと笑った。
「笑うのはどのパターンにもあるのか?」
そう呟いたはずだが、少しだけ聞こえたらしい。
「楠君、なにかどうかした?」
が、具体的には聞こえてなかったらしい。
そして、彼女らは教室を出て行った。
「さぁ、最後の一回だ。次こそ見つけなきゃな。」
俺は深く深呼吸をし、あの日のことを再び思い浮かべた。
性格に、もっと、違うアングルから。
「あっっつ!!」
どうにもこの感覚にはなれない。体が本当に焼けてそうで嫌な思いをする。
「誰なんだよ・・・気のせい、なのか?」
きた。1人目の"俺"だ。確かその角には2人目の"俺"がいるは・・・いた!
2人目の"俺"は何を考えているのか、動いてくれるのだろうか?
「誰なんだっ!・・・出てこいよ!隠れてこそこそするなよ!!」
きたぞ・・・確かこの後に見えたはずだ。
2人目の"俺"視線をこちらにやる。俺も後ろを振り向くが誰もいない。
どうしてだ?確かにあの時はなにか動くものを見た・・・。
「っ!?もしかして、2人目の"俺"が見たのはこの俺だったってことか?」
あはは。だから言ったでしょ?君にボクは探せないって。
「その声はイルなのか!?どこにいる!早く姿を現せ!」
大声を出せないからいつも以上に小さな声を出す。掠れていてなんと言っているのかわからないくらいだ。
それはダメだよ。君はやっぱり面白いね!
過去に戻る力を使い、ボクを探そうとするだなんて・・・。
でも、言ったでしょ?君には僕は探せない。
もう、諦めなよ。絶対に無理だから。でも、気に入った!これから君にはこういう風に能力を与えるよ。
能力?確かに過去に戻る力はあった。でも、それ以上のことなんてできないだろう。
でも、悔しいが過去に戻れるようにした以上認めざるを得ない・・・。
「それは、条件付きか?そして、なぜ俺にまとわりつくんだ」
俺じゃなくてもいいはずだ。
君が面白いからだよコータロー。
そして、条件というか選択肢をあげる。簡単なことだから君にはすぐに決断できるよ。
①この世界を抜け出してゲームの世界に入り込む。
②能力なんか諦めてこの世界で平凡に暮らす。
「随分と変な選択肢だな」
でも、俺はゲームの世界に入ってみたいと思っていた。ずっと。ずっと。
しかし、そうすれば元の世界には戻れない可能性だってある。今いる友達を捨てて一人で旅立つか?
それとも、もうそういう考えを捨てて今まで通り平凡に暮らす、か。
「仮に①の選択肢を選んだ場合、帰る方法はあるのか?」
それは、コータロー次第だよ。少なくとも帰る方法は・・・ある。と、言うことにしておこうか。
「わかった。そして、後一つ。決断しなければならない期日はいつまでだ?」
この過去に戻れる現象が終わるまで。
つまりは残り30秒。頑張って決めてね!
残り30秒か。仮に①を選んだとして周りの人たちは俺が急にいなくなったことに対してどう思うんだ?
最初からいなかったことになっていて、みんなは今まで通りに生活するのか?
それはそれで辛い。まだ、話してない女子とかいるんだぞ!?もっとうまくやれるかもしれないのに・・・。
でも、ゲームの世界に入ってみたときの俺を幾度なく想像した。
絶対に楽しい。間違いなく。夢の様な世界に行けるかもしれない。
でも②を選んだ場合は・・・この夢は消える。イルはもう俺の前には現れないと言ってもおかしくはないだろう。
でも、やっぱり・・・この世界が俺の住める世界なんだ。
30秒が経ちました。では、この現象はお終いです。
決断されたようで、なによりです。では------
戻る時は体が焼けるような感覚はなかった。




