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知られている事

みんなは思ったことがないだろうか?

「この世界で魔法が使えたらなぁ・・・」とか「ゲームの世界に入りたい!」とか。

はたまた「俺の言うこt...」おぉっと、ちょっと言い過ぎたかな?ともかく、こういう考えを持った人はたくさんいるはず。

少なくとも俺はそう考えた側の人間だ。


2043年7月の下旬を過ぎた頃、俺は喉の内側がくっつくんじゃないかと言わんばかりに喉に水分がなくカラカラだった。

「あ~、暑ぃ・・・喉が渇いた!」

そうボソリと呟くと聞こえたのか「水飲んで来いよ」と、隣に座っている水野結城(みずのゆうき)が呟いた。

しかし、思うが学校には水しか出ない。水ではなくジュースが蛇口から出ないものか幾度なく考えた、が出ない。

そこで、考えたのが「これはジュースだ!」と思いながら飲むこと。俺はそれを久々に---

「まっず!!やっぱ水かよ・・・ジュースは持参しろってか・・・はぁ」

隣では「ぷはぁ」と一息ついて満面の笑みを浮かべているやつがいる。見たことないやつだ。

そんなに喉が渇いてたんだな、こいつ。

「・・・ん?」

俺は鼻に違和感を感じた。嗅覚をどうかしてしまったのか?

オレンジの匂いが漂っている。誰がオレンジを食べているわけでもない。なのに、だ。

蛇口のすぐ下を見る。そこにはオレンジ色の液体が流れていた。

そして、隣に目を移すとそこにいた彼女は階段を上っている。

「・・・ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

いきなり声を掛けられただからだろうか、ビクッとして振り返った。

「な、なに?」

「君、オレンジジュース・・・飲んでたよね?この蛇口で」

そう言うと彼女は、「何言ってるの?この人」と言わんばかりの顔をしている。

「え・・・?オレンジジュース?水道水を飲んでたんだけど・・・」

「い、いや・・・でも確かにオレンジジュース、流れてただろ!?」

彼女は絶対に嘘をついている。俺はこの目で見たんだから。

「飲んでないってば!薬飲まなきゃいけなかったから、水しか飲めないの!」

しかし、俺は確実にオレンジの液体を見たんだ。ふと、視線を蛇口に戻す。

蛇口から滴り落ちるのはオレンジの液・・・いや、透明感のある"水"

何かの見間違えだ、と思い目を擦る。


「オレンジじゃない・・・!?いや、でも確かに・・・」

「何言ってるの?だからオレンジジュースなんて飲んでないからね~」

どこのクラスの人か知らないけど、またね。と言い残し去って行った。

しかし、あの瞬間(とき)見たのは紛れもなくオレンジジュースだった。


あの瞬間(とき)でしょう?確定事項ではないはず。


誰かがそう言った。俺はすぐさま辺りを見回した。

だが、その言葉を発した持ち主は見当たらない。

「誰なんだよ・・・気のせい、なのか?」

だが、確かに俺は見たんだ。蛇口から滴り落ちるオレンジ色の液体を。


だから、その見たのが本当にオレンジジュースだと言えるの?

その後流れていたのは"水"なんでしょう?


また聞こえた。

「誰なんだっ!・・・出てこいよ!隠れてこそこそするなよ!!」

さっきよりも早く反応し辺りを見回したが誰もいない。違う、誰かはいるんだ。が、見えない。

辺りを目を凝らしてよく見る。・・・見えた。壁から少しはみ出てる手が。

しかし、その手は微動だにしない。俺を馬鹿にしすぎている。

「気づかないとでも思ってんのか?」

走ってその手のもとへ駆け寄る。----そこにいるのは

さっきオレンジジュースを飲んだだろう、と疑いを掛けてしまった相手だ。


ははは。残念、違ったみたいだね。

君には、ボクを探せない。


探せない?声は聞こえるのにか?ふざけるな!

いや、待て。それよりおかしいぞ・・・?

「この子・・・止まったままだ。・・・そういやさっきまで耳障りだった蝉も鳴いてない」

オレンジジュースに気を囚われすぎて、いつ止まったのか気に留めなかった。

俺だけの空間が止まったのか、全体的に空間が止まったのか・・・。


全体も止めれる。と、でも言っておこうかな・・・。ははは。


「・・・っ!お前、本当に誰なんだよ。この学校のやつ・・・じゃなさそうだな」

俺の考えてたことに答えやがった。発言していないのに。読みやがった。

「誰なんだ、と聞いてる。名乗るぐらいできるだろ?」

いつも小さい俺の声が、やけに大きく聞こえる。


んー、そうだね。名乗ってあげようか?楠幸太郎(くすのきこうたろう)クン


こいつ・・・

「なぜ、俺の名前を知っている!」

いや、知ってるってことは・・・俺の身近にいるのか?それとも監視されている?

だが、監視する理由なんてないだろ。


知ってるから知ってる。じゃダメかな?

あ、ちなみにボクには名前はない。君が好きなようにつけていいよ"コータロー"


馴れ馴れしい。

「俺がつける?まさかだとは思うが・・・これで会うのが最初で最後。って、ことはなさそうだな」

そして、この接し方だもんな。その可能性は無きにしも(あら)ずってとこだな。


え、そんなことあるわけないじゃん。しっかり見届けさせてもらうよ。

君の今後を、ね。


俺の今後。なにもなく、ごく普通の生活を送るだけなのに見届ける?

見届けるなら、もっとスポーツ万能でイケメンなやつを見届けろよ。

平凡で過ごしてきたやつには今後も平凡でいさせてくれよ。本当に、頼むから。

「というか、それより・・・あのオレンジジュースはお前なのか?他に見当たらない。時間も止まってるみたいだし、残るはお前ぐらいだな」

これを聞いてさっさと元の空間に戻してほしい。


そうだねぇ。もし、そうだとしたらどうするんだい?

たかが蛇口からオレンジジュースだよ?気に留めることなんてないでしょ?


「そうだとしたら、俺が飲むときに流出されるのを違う味にしてくれ。もちろん、俺が望む味にだ。それが叶うほど簡単じゃないだろうがな。」

ただ、蛇口から流れる飲み物が変われば・・・。と、望んでいた俺には少し胸が高鳴ることだった。

いくら相手がどこの誰か知らないやつであろうと、その望みを叶えてくれるかもしれない。

という希望を持たせてくれる存在かもしれないから。

でも、相手は全く知らない存在。

「当然、無償で叶えてくれるわけではないだろ?」


いえ、べつに無償で構いませんよ?

あ・・・もう、出来ますよ。って言ってるようなものじゃん!


こいつ、バカなのか?それともこれもあえてなのか?

「じゃあ、今からこの蛇口から流出されるものを炭酸飲料に変えてくれ」

了解しました~と言い、口元が素早く動いた。


いいですよ?蛇口をひねって飲んでくださいな。


俺は恐る恐る言われるがままに行動した。

蛇口をひねる音と、俺が唾を飲む音が響き渡る。なんだ、この緊迫感は・・・。

滴り落ちた水滴。見た目じゃわからない。それを口に運ぶ。

「・・・っ」

喉が刺激され、俺は目から涙が少しだけでた。炭酸が強すぎた。

しかし、もう一度飲むとそれはただの"水"に変わっていた。

「お前、本当に変えれたんだな。」


もちろん、お望みされたことなので叶えたまでですよ。

とまぁ、今回は短めだったんですけど。


「お前は、誰のところにも現れてるのか?」

こいつがもし、誰の前にでも現れるようになっているのなら多少は噂になってもいいはず。

が、俺は聞いたことがない。だから、一応聞いてみる。


いいえ?君が初めてだよ?

そもそも、生まれたのは昨日だし。あはは。


「生まれたのが昨日・・・?なのに、そんなに喋れたりできるのか」

いや、人口知能が備わったロボットか?宇宙人か?異世界人か?それとも、冗談か?

いや、そんなことはもうどうでもいい。はやく---

「元の世界に戻してくれ。俺は早く授業を終えて家に帰りたいんだ。」


元の世界?ここは、別の次元なんかじゃありませんよ?


「俺の言い方が悪かった。時間を流してくれ。止めるのはやめろってことだ。」

そのくらい察せよ・・・ったく。


わかりました。これだけは伝えておきます。

君がなにをしようとボクの目は誤魔化せません。では・・・。


そう言い告げた後、後ろにいた"俺に疑いを掛けられた彼女"は歩き始めた。

記憶は残ってるのか聞くために、声を掛けようとしたが発するのをやめた。

蛇口に視線を移す。不思議に思えた・・・こんなことが可能なのか、と。

そして、そのまま視線を下にやると一枚の紙切れが落ちていた。

「まだ、信じられないようなら一つだけ・・・願いを叶えてあげますよ。明日の放課後までにしたいことを呟いてみてください。その変わり、保証はできませんのでご注意を。・・・かぁ」

こいつは利用するのか、無視しておくのか・・・しかし、水道の件では

なにかと驚いてしまった。時間を止めることができ蛇口からは炭酸飲料・・・。

もし、俺が幻術をかけられているのだとしてもだ、夢を見ることができるのではないか?

と、考えてしまう。相手のわからないはずなのに、少しだけ期待してしまっている自分がいる。


でも、試してみる価値はあるかもしれない。

今日が終われば明日から夏休み。家に引きこもっても、どうにもならない。

二日・・・いや、三日か?部屋から出なくても大丈夫だろう。

もう、決めてあるよ。明日の放課後が楽しみになってきた・・・。

「でも、まだ信じるのには早いな」

俺はそう呟いた。が、俺の発した小さい声は蝉の声に掻き消された。


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