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エリス・ミドル  作者: 飴色茶箱
20/91

2011年3月12日 国道4号

2011年3月12日 


「すみません。急に無理言っちゃって・・・昨日何度も電話したんだけどやっぱりつながらないんです」


亜理紗から電話がかかってきたのは朝食をとっている時だった。ものすごく深刻な声をして泣きながら一緒に仙台まで行って欲しいと言ってきたのだ。

「いいのよ、気にしないで。でもよくあなたの両親が許してくれたわね 知らない人と仙台まで一緒に行くのに」

「大丈夫です。私がきっちり説得したからパパもママも分かってくれました。」


「そう。安心したわ」


知り合いの闇医者、高橋一真に借りたランサーエボリューションⅧで

亀井絵栗珠と福永亜理紗は首都高にのって東京をでようとしていた。

後ろには違法だがガソリンタンク20リットルが2本。一真の手配により手に入れたものだ。

首都高は通行止めとラジオで放送されていたが実際は動いていた。

そのため道はとてつもなく空いている。

間もなく埼玉に入って一回目のガソリンスタンドに寄った。

「レギュラー満タンできるかしら?」

「はい!大丈夫です」

どうやらガソリンはまだ入れられるようだ。


出る時は死者1000人と伝えていたラジオが夜には街ごと人が消えたとか不可解な情報を流していた。

「なんだか怖いですね。」

「そうね、くれぐれも油断だけはしないことね」

国道4号をひたすら北上し宇都宮を抜けた。

北へ進むほどにコンビニからは物が消えていく

途中モスバーガーで夕食を取ったがここでも品数が限られていた。

「はい!亜理紗さん!海鮮かき揚げバーガーでよかったかしら?」

「わ~い、ひさしぶり、ひさしぶり。これ好きなんですよ」

出発して6時間。亜理紗はすっかり亀井絵栗珠と友達のように仲良くなっていた。

「絵栗珠さんはなんで私を、その遺産相続の試験に出そうと思ったんですか?」

「そうね~亜理紗ちゃんが面白い存在だと思ったからかな。中学生アイドルで、陸上の800メートル走で全国4位。テレビに出るだけでも自分を売り込むのにはいい番組だと思うわ!」

「それは、私にとってはメリットがあるけど絵栗珠さんにはどういうメリットがあるんですか?」

「そうねぇ、亜理紗ちゃんが優勝できるように手伝ってあげるから賞金の半分を私にくれる?」

ああ、こういうことか・・亜理紗は思ったが悪くない提案だと思った。

たとえ優勝できなくても上位に食い込めばテレビにも沢山出られる。それに絵栗珠とあってから亜理紗はもっとこの女性と一緒に居たいと思い始めていた。彼女の仕草一つ一つが洗練されて美しく、こんな大人の女性になりたいと思ったからだ。これが憧れなのか、尊敬なのかわからなかったが初めて経験する感覚であることは間違いなかった。


コンビニには水やおにぎりが殆ど無かったので、お酒の専門店に入ってみた。

「わあ、やったあ。水がケースで売ってる」亜理紗が嬉しそうに言った。

「おばあちゃんに買っていきましょう。水道が使えないかもしれないから」

「はい!」

「これって、何ケースも買っていいんですか?」

亜理紗が店員に聞いた。

「大丈夫ですよ」


「わ~い!よかった・・・よかった・・!」亜理紗が笑顔で喜んだ。

「念のためカップラーメンも買っていきましょうか」

絵栗珠が提案した。

「そうですね。おばあちゃんおなか空いてるかもしれないですよね」

水とカップラーメンを車に積み込み再び出発した。


北上するにつれ渋滞が激しくなってくる。途中崩落している道路があり4号線から少し迂回することもあったが13日の午前4時には仙台に入ることができた。東北自動車道が普通に使えたら4時間で行ける距離だが・・東京から出発して14時間無事、青葉区の下愛子に到着した。

「あったあああ。よっかったああ」

亜理紗の祖母の家は何事もなっかったかのように建っていた。

「よかったわね。今はまだ4時だし、車で朝が来るまで待ちましょ」

「そうですね、おばあちゃんもきっと寝てるよね」

そう言って亜理紗は絵栗珠を見た。流石に休憩なしで運転してきたせいか少し疲れているようだ。

「絵栗珠さん、ごめんなさい。私、何もできなくて・・・ただ助手席に座っているだけ・・」

「いいのよ。家が無事でよかったわね」

「はい!ありがとうございます」

埼玉でガソリンを満タンにしたのだが、すでにメーターは半分を切っていた。

ガソリンの予備タンクがないと帰れないところだった・・そうおもいながら絵栗珠は眠りについた。リズミカルに揺れる余震を感じながら。


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