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74.同人

「ね、ウィル、お願い。お願いったらお願い。一生のお願い!」

「一生のお願いをそんなことに使うな!」

連日、ライラにお願いされ続けている。

僕の前世での同人活動のサークル名兼ペンネームが「ステテコパンダ」だとバレて以来、ずっとこの調子だ。

「何も、フルカラーの気合い入ったイラストでなくても良いのです。下絵のラフ画で結構なのです。ですから、何とぞ何とぞ」

両手を合わせて拝んでくるライラ。

ライラは、僕にイラストを描かせようとしているのである。


「だって、前世では壁やコルクボードにポスター貼ったり、本棚にキャラグッズ飾ったり、ベッドにぬいぐるみ置いてたりしたのよ。なのに、寮の部屋ったら、アラベスク模様の壁紙が続いているだけなんだもの」

前世でのライラの部屋は中々のオタク部屋だったようだ。まあ、僕も大概人のことは言えないような部屋だったが。

「っていうか、僕の絵を部屋の壁に飾る気?!」

「誰も入ってこないから平気よ!」

「そういう問題じゃない!」

「そりゃあ、ウィルは家族と一緒に豪勢なタウンハウスに住んでるんだから不満なんてないでしょうよ。独り身の侘しさなんてわからないでしょうよ」

ジローっと軽く睨まれて、ついにライラの熱意にほだされてしまった。

「……わかったよ。じゃあ、ライラのイラストでも描いてあげる」

「それはちょっと……。だって自分のイラストなんて萌えられないし。そんな人がいたら、それはナルシストだわ!」

注文が多いなあ。

「だから、ね、……わかるでしょ?」

お願い、と大きな瞳で僕を見上げているライラは、文句なく可愛いかった。普通の男が見たら、きっと何でも叶えてあげたくなってしまう程の破壊力はあるだろう。しかし、要求している内容はえげつない。

「ウィリアムとギルバートの絡んでる絵なんて絶対に描かないからな」

「そこを何とか!」

ウィリアム×ギルバートの絵を書け、書かないの押し問答を暫くした後―――折衷案として、ギルバート様の単体絵を描くことになった。



それから数日後、ラフ絵で良いとは言われたが、一応水彩で色彩したものを用意する。

この絵でも眺めているうちに、現実のギルへの関心も高まりますように……と、願掛けをしておいた。

そうして渡した絵は、ライラに大変喜んでもらった。

「ありがとう!!!ギルバート様かわいい!!!ハァハァ!!大事にするね!!!!」

大変……喜んでもらった。

喜んでもらったのは良いのだが……。


「アルベルトに見せてくる!」

えっ、ちょっと待て何それ聞いてない!

あっという間に駆け出すライラ。

必死で追いかける僕。

なんて事だ、あの絵が見られてしまう!!しかもギルの絵だぞ?!アルベルトに見せてもいいの?!

走っている途中、ギルとルークとすれ違った。一方は嬉々として、片方は必死の形相で走る姿は異様だったに違いない。


「見て!ウィルに描いてもらったわ!」

間に合わなかった!

ライラは貰ったばかりの絵を自慢気にアルベルトに見せびらかしている。

「ふーん。」

一方、アルベルトの反応はとてもうすい。

無感動、無関心なその態度に、ギルの絵だったから気を悪くしたのかな?と思ったのも束の間。

次のアルベルトの言葉は僕を絶望の淵に落とし込んだ。


「……で、ウィリアムは描いてもらわなくてよいのか?」

…………。

「お願いしたけど描いてくれないのよ」

当たり前のように答えるライラ。でも待って、何かがおかしい。ギルの絵を見て、どうしてウィリアムの話が出るの?


「ちょ、ま、アルベルト、一体どこまで知ってー……」

頭痛と悪寒とものすごく悪い予感がする。

額から滝汗が流れてきた。


「攻め……が、ウィリアムで、受け?がギルバート様でしたでしょうか。前世で、挿絵ばっかのうすい本を描いていたらしいですね、ウィリアム様は」

アルベルトが、僕の目を見ないで答えた。


「NOォ―――――――――――ッッッ!!!!」

マンガに出てくるアメリカ人のように頭を抱えて僕は絶叫した。


以前ライラは、「アルベルトには何でも話している」と言っていた。

そうか。

そういうことか……。

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