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68.応援(アルベルト視点)

3回目更新です。次は今日の夜によろしくお願いします

「ウィリアム様にちょっと話があるのですが?」


今日も今日で、書類の山に埋もれてるウィリアムに話しかける。賃金も貰えないのに真面目だなぁと思う。

「……アルベルトか。またここにいるのか」

声をかけられて反射的に顔を上げたウィリアムだったが、相手が俺だとわかるとあからさまにがっかりした雰囲気を出す。エレノア様を待っているのがまる解りだ。

「ああ、ディーノ様に報告がてら。まあ、大したことじゃないが」

「お前、ディーノに報告があるって言えば、生徒会室に来れると思ってるんだろう。休憩所にするなよ」

「まぁまぁ、それより、だ。ディーノ様に渡したアレ、量産する気はありませんか?」

「ディーノに渡した……」


***


昨日の事だ。

購買品を納入しているところにディーノがフラフラと現れた。

何故こんな業者しか出入りしないような場所に生徒会長様が……と思い、思わず物陰から観察していると、何やらフワフワしたものが付いている半円状のものを握りしめて、繁々と見つめている。仕切りにうんうん頷いて、ソレを近くの木の幹にそっと嵌めた。


「これを好きな子の頭に……ウィリアムの考えが解らない。全く解らないのに、此処にも捨てにきたのに、捨てられない」

腕を組んだまま大きな独り言を呟くと、ディーノはその木の幹に嵌めた物を持って帰っていった。


頭に嵌める、か。アクセサリーの一種みたいなものか。半円状のものについていたフワフワのあれは、動物の耳みたいだったな……。

海の向こうの大陸のジャングルの奥に暮らしている狩猟民族が、狩りの際に自分たちを鼓舞するために動物の擬態をすると聞いたことがあるが……。

それをアクセサリーにした訳か。催し物とかのお土産に女性や子どもに人気が出そうだ。ディーノは、ウィリアムがどうとか言っていた。きっと、猫のぬいぐるみ同様にあれも作ったんだろう。


***


「ああ、アレってあれか、やだなぁディーノがイライラしてたから癒されるように渡しただけで、秘密だって言ったのに」

「いや、癒しというよりは逆に悩みが深くなっているように見えましたが」

「量産って何でそんな話になったんだ?」

「人気が出そうだと思いまして。子どもがつけたら可愛いですよ。イベントでつけたら、非日常感が増して特別な日がさらに特別になりますし。仮面舞踏会でつける仮面ともまた趣向が違って面白い。あんな物考えてるのに隠すのはよしましょう」


「萌えと癒しからの発想で作ったけれど……そっちの用途のが健全だな。了解!今あるの全部あげるよ。参考にしてくれ」

ウィリアムが机の上にざっと動物耳が付いてるカチューシャを出す。猫、ウサギ、犬と色々あった。素材はふわふわ、出来も申し分ない。

ライラもたまに言うが萌えとは何だろうという疑問は無視する。

「アイデアを無料で提供するなんて、馬鹿がする事ですよ。御礼は売上げの1割。フェラー商会に任せなさい」

「片手間に作った物だから何にも考えてなかった。売れると良いな。どうもありがとう」


その時、ライラが生徒会室に入ってきて、すかさずカチューシャを見つけた。

「猫耳カチューシャ!!可愛い!ウィルってば本当に器用ね。つけて見ても良い?」

「ああ、良いよ」とウィリアムが促す。

カチューシャをつけたライラが「どう?萌え耳〜」と俺の方を見た。俺はライラに下から覗き込まれてる感じだ。上目遣いのライラ、猫耳に頭の中の今まで音を立てた事がない所からパキンと音がした。胸を片手で押さえて、前のめりになる。

「ぐっ、何だこの気持ち」

ウィリアムを見ると俺の方を見てにやにや笑っていた。ウィリアムはこのライラを見ても平気なのか?

「良く似合うよライラ。それアルベルトにあげたんだけど、試作品が残ってて。こっちをあげるからギルにも見せてやってくれない?」

「え、くれるの?了解〜。じゃ、見せてくる」

待て待て、そんな格好で出歩いちゃいかん!


一部始終を見て、にこにこ笑ってたウィリアムが再び仕事をし始める。

俺はライラを追いかけるために慌てて立ち上がると、ウィリアムに向かって言った。

「あまり思い詰めるのは良くないですよ。仲直りならできます。幼馴染なんて、そんなものです」

ウィリアムは、「ありがとう」と片手をあげて、こちらに向けて振ってくれた。


やばい、ライラがもう姿が見えない。俺は慌ててライラを追いかけた。


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