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63.生徒会

昼下がりの午後。

生徒会室ではルークとアルベルトがチェスに興じていた。

「あら、意外にもルークの方が優勢じゃない?」

ライラが盤を覗きこんで感心したようにいう。

アルベルトは次の一手をどうするか眉間に皺をよせて考え込んでいる。

「アルベルト、お前はもう少し駒それぞれの特性を考えた方がよい」

「さすが軍属。優秀なコマンダーの考えだね。俺はどうしても商人の発想なんだよなあ。足りなければ如何に持ってくるか。よって、こちらの場所にビショップを追加で手配したいのだが?」

「ルール違反だ。どうやらアルベルトには指揮官は任せられない」


「こら、生徒会メンバーでもない2人が何故ここで寛いでるんだ」

ウィリアムが書類の束を抱えたまま、忌々しそうに3人を咎める。

「それどころかアルベルトは学内の人間ですらない」

「ルーク、俺だけ売るのか」

ルークの返事にアルベルトは肩を竦めてみせた。そうして2人は笑い合うとそのままチェス盤に再び向き合う。まったくウィリアムの諌言が効いていない。




あの事件以来、ライラは正式に生徒会メンバーとなって活動している。ギルがライラに熱心に勧めたようだった。初めはルノワール先生が顧問だから渋っていたが、ギルに押し切られたらしい。

そして、ライラがメンバーになってから、ルークとアルベルトが生徒会室に入り浸るようになってしまったのである。

王子王女誘拐事件の功労者として、ルークにも生徒会メンバーになるよう打診があったらしいのだが、数々のスポーツ大会にも出場を控え練習で忙しいために断ったそうだ。しかし、練習の合間をぬって本当によく来る。

一体何なんだ。

「大体、アルベルトはいつの間にルークと打ち解けたんだ?」

僕はアルベルトに思ったままを聞いてみる。

「まあ、こういう事にはあまり時間は関係ないでしょう」

「……校則違反で没収される物品の量が、事件前とあまり変わらないのだけど」

「おまじないレベルの媚薬とかでしょう?効果なんて無いに等しいのだから、そんなもの放っておけばよいんですよ。それに、俺は知りませんよ」

本当に知らないのか?怪しいところではある。しかし、効果ないとは言い切ったなあ。



その時、生徒会長のディーノが部屋に入ってきた。

アルベルトは立ち上がり、恭しく一礼すると、

「ディーノ様、怪しい品々の流通の件、調査の進捗状況について報告に参りました」と言った。

「……」

僕との態度の違いに呆れてしまう。

ディーノといい、アルベルトといい、皆僕にだけ態度が違いすぎやしないか。おかしいだろ。


ふーっと息をついて、席に座る。僕も色々忙しい。もうすぐ、学園の文化祭がある。文化祭と言っても、どういう業者を使い、どういったもてなしをするかとか、展示物は人目を惹くものをどう作成させるが主流のようで、自分達で一から作り上げるような出店は稀だ。会場割り振りや金額割り振りが僕の担当だ。

皆の楽しそうな姿を横目に平穏って素晴らしい!と思いながら作業を進めた。


まだ、薄っすらと明るい空に月が見えてきてしまってる。ずっと机に向かっていたから、ちょっと疲れた。いつの間にか、部屋から皆いなくなっていた。帰ったのかな?集中し過ぎると周りの声が聞こえなくなっちゃうんだよな。駄目だ、少し眠ろう。僕は机に突っ伏した。


***ギルバート視点**


「ウィル、こっちは片付いたぞ。そろそろ帰らないか?」

ギルバートが生徒会室のドアを開けると、其処には机に突っ伏している友人の姿があった。

……寝ているのか?と確認する為に彼の前に行く。

「今日の予定は片付いてるな。終わって気が抜けて、寝てしまったって所かな?」

取り敢えず自分も座ろうと、ウィルの近くに椅子を出す。ウィルを見ると万年筆を顔の下敷きにしてしまっていた。顔に跡がついている。

これはエレンから貰ったといっていた万年筆かな。そのままいては綺麗な顔に跡が付いてしまうので、起こさぬ様優しく引き抜こうとした。途端にガシッと万年筆を取ろうとした手ごと掴まれてしまった。

無意識なのか。

「別に取らないのに」


開け放されたままの生徒会室のドアの向こうから、軽やかな足音を鳴らしてライラがやってきた。

「あ、ギル戻ってきてたのね」

ライラが私を見て、そのまま机に視線を落とす。私は無言で、ウィルに握られてる手と逆の手の人差し指を立てて口元に持っていき、ライラに向かって微笑んだ。こんなに気持ち良さそうに寝てるから、もう少し寝かせてあげたい。これでライラにも伝わるだろう。



ライラは眼をウルウルさせて、口を塞ぎ嗚咽を漏らさないよう必死になりながら、

「ご馳走様です。ギルの慈しむ感じマジパない」と小さな声で言った。



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