64.恋愛小説
生徒会室で仕事をしながら、休憩がてらに空いた時間に小説を読む。恋愛ものだ。主人公と相手役が、時代の価値観というどうしようもない背景からすれ違っている描写を見ると、それはそれは身悶える。萌えは生きる糧になる。
これ、誰かに進めたい。
僕がコレ系の小説を読んでいることはもちろん周りの誰にも話してない。
完全に空回ってる男の子と、自由奔放で鈍い女の子。男の子の溺愛ぶりと女の子の鈍さが飛び抜けてて、本当に面白い。また、男の子を心配しつつ、ヒロインに横恋慕してしまう男の子の友達が、2人を何時もさらっと助けてくれてカッコ良い。当て馬のイケメンの格好良さは時代を超える。しかも、この当て馬がギルに激似なのである。
物凄く話したい。誰かと分かち合いたい。
欲を言えば一緒に友達の男の子の事を語りたい!カップリングはお察し願おう!
…ライラの顔しか思いつかなかった。
エレンは読まないよなぁ。誘えば読むのかな?そもそもエレンに僕がこれを読んで悶えてるのを知られたく無い。
生徒会でルークとアルベルトと談笑しているライラをじっと見つめた。
ライラが僕に気づき
「ウィル何か用?」と聞いてくる。
ルークとアルベルトは僕を見定めるように見てくる。2人は急にライラと仲良くなった僕に対して、恋愛のライバルになるかどうか確認しているのだと思う。
2人に対して「それは有り得ない」と叫びたい。
「何でもないよ」と言いながら、手元の本を隠そうとすると、ライラはその表紙を見て、僕にだけ解るように親指を立てた。そして皆に聞こえないように耳元で教えてくれた。
「それ、面白いよね!読んだ事ある。男の子の友達が格好良くて。こっちの世界ってアニメもゲームも無いから娯楽が少ないよね。私、その本読んだ時に久々にきたコレ!って思った。しかも男の子がギルバート様激似!」
「わかるー!」
ライラが小声で話してくれたのに男の子の友達に触れてくれたのとか、久々に面白いと思った本だった事とかか嬉しくて、両手でがっつりライラの肩を掴んで大声を出してしまった。
ガタン!ガラガラッ!!
見れば、ルークとアルベルトは前につんのめり倒れているし、丁度入ってきたドアの前のギルは荷物を全部落として、目を丸くさせていた。
「オッホン!すまない、ライラ。急に大声を出して」
「良いのよ。気持ちはとてもわかるわ。その本も最高だけど……」
ライラはつかつかと自分のバックがある場所に行き
「ここに続編がありまーす♡」
と本を持って顔の横に掲げ小首を傾げた。
「やだ、見たい〜!」
両手を出して喜んでしまった。
さっきとは種類の違う眼差しが、僕に突き刺さる。
後悔先に立たず。
僕をどうか皆!もっと優しい目で見て欲しい………。




