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27.BL展開…⁉︎

「ギル、おはよう」


その光景を見た時、僕は目を疑った。

なんと、ライラがギルを愛称で呼び捨てしているのである。

「おはよう、ライラ」

呼ばれた当の本人は涼しい顔をしている。いや、若干嬉しそうだ。

そこにルークも加わり、何やら楽しそうである。

僕は距離をとってみていたのだが、ディーノまでもが談笑に加わったのには驚いた。

ライラは攻略キャラクターたち3人に囲まれて、それはそれは嬉しそうな微笑みを浮かべている。こうして見ると、やっぱりライラはオタサーの姫のようだと思う。男性にチヤホヤされてアイディンティティを確保するタイプなのだろう。乙女ゲームをするくらいなのだから、前世でもおそらくオタクで同じような人生を送っていたのかもしれない。同じオタクでも、原稿まみれだった僕とは大違いだ。


探りを入れているが、ギルにはあの後もラブリースマイルハートクッキーを差し入れしている様子はない。ギルが催促しているようだが、「ウィリアム様に悪いので」と、そこは僕の気持ちを尊重してくれているようなのだ。それどころか他の贈り物なども一切していないようだった。ありがたいことである。あれから植物園にも行った形跡はない。しかし、ギル自らがライラに積極的に関わりに行ってしまうので、どう止めたものか悩ましい。

今のところのライラの動きは、全体的に満遍なく、と言ったところか。そして、前世の知識を駆使して物凄く効率的に進んでいる。

ギル、ルーク、ディーノの初期に発生するイベントが落ち着いたら、次は僕とルノワール先生の番だろう。現状ではゲームのエンドである卒業時にどんな結末を迎えるかは全くの未知数だ。もし、このまま全員の攻略を同時に進めていくのであれば……。

ライラは前世ではどのくらい「ときプリ」をやり込んだのだろう。

やっぱり、ライラに深く関わって、彼女の人となりを詳しく知る必要がありそうだ。どんなエンドを目指しているのかを確認する必要がある。ライラが重度のメンヘラだったらどうしよう。


「ギル、最近ライラ嬢と仲が良いけど、どんな会話をしているの?」

とりあえず、身近な所から情報収集をしてみる。

「そうだな…。国の話題が多いな。現状やら未来の課題やら」

何だか固いな。

「何ていうか、ライラ嬢の好きな話のジャンルとかはないの?」

「教育だな。子どもたちへの教育支援や人材の登用制度など」

物凄く教科書的だ。ギルは好きそうだな。こうしてライラは好感度上げてるのか。

「後は、私とお前の昔の話なども好きだな」

「えっ?僕も?何話したの?」

過去の恥ずかしい話を思い出し、思わず慌てた僕を見透かしたようにギルが言う。

「大丈夫、あの話は話していない」

良かった…って、あの話ってどれの事!

「それで思い出したが、ライラはどうやら男の友情に憧れがあるみたいだな」

「男の友情」

「夢見てるなあと感じる時がある」

「夢」

なんだろう、このキーワード。そう言えば、以前も何か掴みかけたような…。

「あ、ウィル、前髪にゴミがついているぞ」

ギルが僕の髪に手を伸ばし触れた。


「ウホッ!」


――――――――――!!!!????


声だか擬音だか分からない音の方に目を向けると、ライラが軽く咳払いをしていた。

今、ウホッて言った?言ったよね?

「ギルにウィリアム様、この講義も大変興味深かったですわね」

取り繕うとしているが、僕は誤魔化されない。

「面白かったな。今度、同じテーマでもっと掘り下げた議論をしてみたいと思う」

ギルには聞こえていなかったようだ。恐らく、あまりに聞き慣れない擬音に、耳から入った音を認識することを脳が拒否したのだろう。

僕は、ギルの肩に手を置き、耳元に口を近づけフッと息を吹きかけた。

「うわっっ!ウィル‼︎何を!」

「ああ、ごめん聴こえてないのかと思って…」

もちろん、ライラのあの擬音を聞かなかった事に対しての問いだが、別に目的がある。

「え?何か聞き逃したかな?ウィルごめん、もう一回言ってくれるかな?」

耳に手を当てて思いっきり後ろに仰け反り、盛大に驚いてるギルは僕の話が聞き取れなかったと勘違いしている。それで良い。

「昔から耳が弱いよなギルは…」

と、もう一度、自分の方に引き寄せる。


「ウホッ――‼︎‼︎」

2回目だ、もう言ってないとは言わせない。

ライラの目がこちらに釘付けになる。

低く擦れた声で彼女に聞こえるように

「耳も弱いが、ギルはここも弱いんだ」

と囁きながら、ライラにわざわざ見せるようにギルの脇をくすぐる。

「ちょ…バカ!ウィル!何だって言うんだ!」

涙目になって、身を捩るギル。無視して、続ける。


「オッフ!」

終にライラが、地面に膝をついた。


パッと両手を離す。

「ライラ!どうしたんだ?大丈夫か?」

とギルが駆け寄り、ライラを助けに行った。

「わ、私は大丈夫です。私の事はそう、壁、窓枠、そう、部屋の一部だと思って下されば!」

「何を言ってるんだ、ライラ。貴女は何処にいたって太陽の様にとても輝いている。貴女の存在は消せるものでは無いよ」

こんな場面でも人を褒められるギルを尊敬する。


「結局、何だったんだ。ウィル」

「ごめん、ギル。ギルとライラ嬢がいつの間にか仲良くなっていて、あんまり嬉しそうに話すし、僕の話は聞いてくれないし、からかいたくなってしまったんだよ」

「…そんなに嬉しそうだったか?」

ライラに聞こえないように小声でギルは尋ねてきた。

「そりゃあもう」


僕は上手く笑えていただろうか、もう間違いない。彼女は前世の''私''と一緒、腐女子だったに違いない。僕とギルのやり取りを嬉々として見ているライラは本当に幸せそうだ。


後日、

「貴方、今度はお兄様と噂になってるわよ」

とエレンに言われた。ライラはあんなに嬉しそうにしていたから、誰かに堪らず話したのかも知れない。自分の萌ポイントは誰かに聞いて貰いたくなるものだ。

でも、ギルはライラに変な誤解はされたく無いだろうから落ち込んでるかな?ちょっと心配になってエレンに聞いた。

「エレンは僕と噂になったら、どう思う?」

「え?私とウィルに噂?」

「うん」

「…べっ別に構わないけど」

「そっか、良かった」

「ねぇ、それって、どういう…」

「エレンが構わないって言ってくれて良かった!きっとギルも平気だよね」


うん、そうだ僕達の絆なら大丈夫だと話すウィリアムをジト目でエレンが見ていた事はウィリアムの預り知らぬところである。


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