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『真っ青な嘘』と『真っ赤な嘘』  作者: ベータ版
1章 笑えない追憶
9/20

9話 復讐の計画

 

「あそこで全部聞いてたと思うけど、話を整理しようか。まず、あの神崎が言っていたことが本当だとするなら、僕らは捕まったらーーー」


 眉毛を上にあげ、目を大きく開いた表情で、五本の指をピッタリ合わせて、首のところまで持っていき首を切る動作をするうたい。どう考えてもシリアスな場面なのに、どういう神経をしているのか、彼は緊張感とは程遠い様子でいることに苛立ちを覚えるかおる


 「あのねぇ、ふざけてる場合じゃないでしょ。死ぬのよ、怖くないわけ?」


 「いいや、僕だって怖いさ。だから、捕まるわけにはいかない、そう思ってたんだけど・・・」


 何か嫌な予感がしたかおるは眉をひそめて、この続きを言わせない。


 「ダメよ。あなた今、ロクなこと考えてないわ。続きは言わなくて良い」


 「本当に?」


 なぜか、にこやかな笑顔で問いかけるうたいに対し、短いため息をこぼし呆れるかおる


 「なんであなた笑ってるわけ?正気じゃない・・・」


 「酷いな、僕はいつだって正気だよ。考えてることは正気じゃないかもだけど。それで、どうするわけ?聞くの?聞かないの?」


 どうせ聞きたいんだろ、と言わんがばかりにわざわざ確認するうたいに、苛立ちが募るものの、結局、思い通り聞くしかないかおるは自分に腹を立てた。


 「うるっさいわね。わかったわよ」


 「それじゃ続けるけど、神崎と会うまでは『殺されるかも』と僕は考えていたんだけど、もうそれはただの妄想よそうではなくなった。分かるだろ?カオル。言うならば、背水の陣。だけどーーー」


 自分たちTRUERトゥルアーが追い込まれているというのに、彼はまるで『それがどうした』と言わんがばかりに、不敵な笑みを浮かべた。


 「ーーーこれは朗報でもある」


 謡は政府の人間の考えを全て見透かしているかのような余裕を見せる。もちろん、現状においてTRUERトゥルアーは圧倒的に不利な展開にあり、誰が新しい法を作るように命じたのか、その黒幕にたどり着くことは、もはや雲をつかむような話である。


 「朗報?あなた頭でも打ったんじゃない?こんなのただの悲報よ」


 薫は彼が何を想像し、何をしようとしているのか、全く読めなかった。


 「確かに僕も最初はそう思ったけど、それがそうでもない。よく考えてみてよ。なぜこんな一刻を争う事態になっているのかを」


 「はっきり言ってよ、何が言いたいの?」


 「つまりーーー奴らもピンチって事さ」


 「ありえないわ。奴らはTRUERトゥルアーが捕まるのを待っている、いわば釣り人よ。何で魚に怯えなくちゃならないのよ」


 「いいや、違うな。じゃあ、1つ質問をしよう。はい、問題です。人が焦る時はいつでしょ〜か?」


 「なにそれ、バカにしてんの?」


 「いいから、いいから」


 「ん〜、そうねぇ〜、間違えたり、失敗した時・・・じゃないかな」


 「正解。そう、人は予想していたことがそうでなくなった時、動揺し慌てだす。それこそが、『焦り』だ。そして、奴らが焦っている証拠こそ、あの忌まわしい『密告の法』そのものだ。TRUERトゥルアー事件が起きてから、たったの一週間で法を増やすなんて、どう考えても焦っている証拠だ」


 「そんなこと言ったって、具体的にはどうするのよ」


 「まずは月島を使う」


 かおるは1時間ほど前の録画していたカメラの映像を頭の中で巻き戻し、すぐに解答へとたどり着いた。


 「月島ってーーーあの!?」


 「そう、あの女だ。あいつは政府の犬であることは間違いない。あいつを寝返らせれば突破口が開ける」


 「ダメよ、危険すぎる」


 うたいが何か危ない橋を渡ろうとしていることを察知した薫は引き止めるが、着火した花火のようにうたいは全く止まる気配がない。


 「危険何てどうでもいい。どうせどこにいたって危険地帯だ。それなら、安全地帯にひっくり返す道を僕は選ぶ」


 「本気・・・なの?」


 「もちろん。このまま指をくわえて見てるわけにはいかないからね」


 「・・・わかったわ。その代りーーー」


 「私も連れてって、でしょ?」


 何もかもが先回りされていることにムシャクシャしたかおるは心をすぐ読む隣の男に思いっきり蹴りをお見舞いした。


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