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こじらせティーンは服に着られて  作者: 沼米 さくら


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#0 マイナスX日目


「いおりくん。——女の子みたいで、キモい」

 フラッシュバック。その言葉は、脳内でリフレインして止まない。

 必死にためたお小遣い。引き換えに買った筆箱。ピンクで。女児アニメのイラスト。

 それらをすべて否定された日のこと。

 忘れてもくさびのように心に刺さり続ける呪い。

 捨てた憧れ。少女になりたいという、「気持ち悪い」願望。——捨てても捨てても、蛆虫のように湧いて出る衝動。

 抗って、抗って、抗えなくなって。


 己を慰めるように行った、洋服の量販店。

 安物のそれに、目を奪われた。心を奪われた。


 ひったくるように取って、レジに持っていった服。

 後に思えば、それが僕の運命を狂わすターニングポイントだったのだろう。


 息を切らして帰り道を駆け抜ける僕の脳は、ぐちゃぐちゃだった。

 嬉しい。キモい。着たい。気持ち悪い。可愛い。どうせ似合わない。

 葛藤と、それでも織り混じる歓喜。混沌とする脳を空っぽにするように、僕はただ走った。


 これが僕の——後に有名コスプレイヤーとなり、やがてカリスマインフルエンサーとしてその名を轟かせ、ついにはトップモデルの座すら手にしてしまう、わたし——「いおりん」のはじまりだった。



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