↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】畑の魔王と光の勇者 ~世界征服よりパンを焼きたい魔王、異世界の魔王にマウントパンチを叩き込む~  作者: 週一週二
東の魔王編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/83

第29話 金属破片

 続けて、カレンは二人に向かって、的確な指示を飛ばした。


「ゼン、あなたは私と一緒にこちらの手伝いを! シャロンは驚くと思いますから、離れた場所で耳を塞いで見ていてください!」


 カレンに呼ばれたゼンは、小走りで彼女の後ろについていく。


 二人は岩場に据え付けられた漆黒の迫撃砲の前に立った。カレンはゼンへ砲弾の装填手順を説明し始める。


「時間が惜しいので一度しか説明しませんよ! 『半装填』の合図で、砲弾を砲口からここまで差し入れる。それで『半装填』の状態になったら『半装填良し』と復唱してください!」


「『半装填良し』な。……わかった……。」


「次に『撃て』の合図で手を離して砲弾を筒の底へと落とします。手を離したらすぐに両耳を塞いでしゃがんでください! いいですね!?」


 ゼンは少し不安そうな表情を浮かべながら口を開いた。


「こんなことはやったことが無いぞ。」


「私も無いですよ! やるしかないでしょう!」


 ゼンが装填手、カレンが照準手。


 カレンは照準具の前にしゃがみ込み、押し寄せる魔物の大群の中心へと狙いを定める。ゼンは迫撃砲の前で、ずっしりと重い砲弾を両手で構えた。


「半装填!」


 カレンの鋭い指示を受け、ゼンは砲弾を砲口へ注意深く差し入れ、底へ落ち切らないよう手元でしっかりと保持した。


「は、半装填よーし……っ!」


「撃てぇッ!」


 ゼンは言われた通り、両手を離して砲弾を筒の奥底へと滑り落とした。


 ——ドンッ!!


 耳を刺す凄まじい重低音が響き渡り、推進薬の爆発とともに榴弾が遥か高空へと勢いよく飛び出していった。発射の余韻とともに、鋼鉄の砲身が「キーン」と高く澄んだ金属音を響かせる。


 ——数秒後。


 遥か彼方、榴弾が魔物の大群の中央付近へ着弾した。


 砂煙が天高く舞い上がる。炸裂した榴弾は、無数の鋭利な金属破片となって放射状に飛び散り、オークやゴブリンの肉体を容赦なく貫いていった。


 着弾地点を中心に、群がり集まっていた魔物たちが何十体と倒れていく。


 シャロンは信じられないものを見たように目を見開いた。


 剣の刃など到底届かない圧倒的な遠距離。


 詠唱も魔力も必要としない、未知の仕組み。


 それなのに、魔物が何十体と一瞬で倒れていく。


 理解が追いつかない。


 勇者として積み上げてきた戦いの常識が、音を立てて崩れていく。


「ち、ちょっとあなたたち!? 一体何をしたのよ……っ!?」


 彼女の叫びは、なおも迫り来る魔物たちの咆哮にかき消されていった。目の前で行われているのは、聖なる勇者の気高き戦いなどでは断じてない。あまりにも無機質で、冷徹で、効率的な「殲滅作業」だった。


 ゼンは爆風の凄まじさに思わず声を漏らした。

「……凄いな……。」


 カレンは感心しているゼンに向かって、大声を張り上げる。


「ゼン! ぼーっとしていないで、早く次の弾の用意をしてください!」


「あ、あぁ! 悪ぃ、わかった!」


 再び戦場に冷酷な号令が飛ぶ。


「半装填!」


「半装填よーし。」


「撃てぇッ!」


 二発目の着弾地点では、爆風に吹き飛ばされたオークが周囲の仲間を何体も巻き込みながら倒れていく。

 四肢を断ち切られたゴブリンが凄惨な悲鳴を上げ、後続の魔物はそれらを踏み越えて進もうとした。しかし、容赦なく撃ち込まれた榴弾が、その隊列を切り裂いた。


 迫撃砲の咆哮が、幾度となく砂漠の空へ撃ち込まれていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。