第24話 カレン2
シャロンはふと思い出し、先週ご馳走になった瑞々しい果実のことを口にした。
「そういえば……カレン! 先週いただいたあのイチゴ、とっても甘くて美味しかったわ!」
「あぁ、あのイチゴですか!」
カレンは思い出して優しく微笑んだ。
「実はゼンが北の魔王討伐への協力を頼みにやって来た時、6月初旬は田植えがあるので『少し出発を後にしてほしい』とお願いしたんです。その時に持たせたイチゴなんですよ。」
「あっ……そうだったんだ……。」
シャロンはそこで言葉を失い、少しの間だけ沈黙した。
ゼンは旅立つ前、「自分の畑の収穫時期があるから出発を遅らせる」と言っていた。それは嘘ではなかったのだろう。だが、カレン側の事情も当然のように考慮し、受け入れていたのだ。
「……本当に不思議な人……。」
シャロンは気になっていた疑問をそっと尋ねてみた。
「……ねぇ、カレン。失礼じゃなければ教えてほしいんだけど……あなた、いつから、どうやって魔王になったの?」
カレンは迷うことなく即答した。
「気づいたら魔王になっていました。特別な事は何もしていませんよ。」
「……ゼンもまったく同じことを言っていたわ。でも……そんなことってあるの? じゃあ、あの禍々しい北の魔王もそうなの……?」
カレンは首を横に振る。
「他の方の事まではわかりません。」
少しだけ間を置き、言葉を続けた。
「私は以前、軍隊のような組織で勤務していました。どうして魔王になったのかは、私にも分かりません。」
「…まぁ、それはわかったわ。…わからないけど……」
シャロンは首を傾げつつ、一番確かめたかった確信に触れた。
「……あなたには、世界の支配とか、力の誇示とか……世界を闇に染めてやる、みたいな野心は本当に無いのね?」
「本当にありませんよ。私は誰かの生命や財産を守るためだけにしか戦わないと決めています。かといって、むやみに人間の紛争や魔物退治に積極的に介入するつもりもありません。ゼンもきっと、同じような考えだと思いますよ。」
カレンは顎に指を当て、少し思案するように言った。
「うーん……そうですねぇ。あとは……近くに困っている人がいたら助けたい、とは思います。そういう時は、戦うこともありますかね。」
二人が静かに語り合っている間、ゼンは「ちょっと見てくる」とだけ言い残し、裏の畑へ向かっていた。
シャロンはハッと目を見開く。
「……じゃあ、どうして今回は私を助けてくれるの?」
「あなたが困っているから助けてやってくれと、ゼンが頭を下げて頼みに来たからです。」
カレンはシャロンの碧眼を真っ直ぐに見つめ、優しく微笑んだ。
「それで、十分じゃないですか。」




