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【完結】畑の魔王と光の勇者 ~世界征服よりパンを焼きたい魔王、異世界の魔王にマウントパンチを叩き込む~  作者: 週一週二
序章

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第1話 世界の終わり1

 王都から徒歩で一日半。


 世界を脅かす邪悪の根源、魔王の居所とされる場所は、驚くほど拍子抜けする光景の中にあった。


 どこまでも青く広がる空の下、黄金色にそよぐ小麦畑。


 その田園地帯の真ん中にぽつりと佇む一軒の素朴な家屋の前に、勇者シャロンは立っていた。


 金髪碧眼の女勇者。


 太陽の光を反射して輝く白銀の鎧を身に纏い、腰には研ぎ澄まされた剣を差している。


 美しい髪は背中まで長く伸びており、涼しげでありながら凛としたその顔立ちには、世界を救う使命を背負った者特有の悲壮な決意が宿っていた。


 鎧に包まれた右手が、固く握りしめた剣の柄の感触を確かめる。


 シャロンは胸の内で静かに祈りを捧げ、意を決してその扉を勢いよく押し開いた。


「あなたが魔王ね! あなたの命は今日で終わりよ。覚悟しなさい!」


 凛々しい叫びが、静寂に包まれた室内に響き渡る。


 部屋の奥で静かに佇んでいた魔王は、一切の動揺も見せずに淡々と答えた。


「なんで?」


「なんで……ですって? あなた、自分が何を言っているのか分かっているの……!? あなたのせいで、どれだけの無辜の人々が苦しめられてきたと思っているの!!?」


 急激に熱を帯びるシャロンの瞳。


 剣を握る手に力がこもり、鋭い碧眼が目の前の存在を射抜くように見据える。


「言い訳なんて聞くつもりはないわ。世界を脅かす悪はただ断罪されるべき……! それが、この世界の理であり、私の正義よ!」


 対する魔王は、小さく息を吐いた。


「いや、それは俺じゃない。世界を恐怖に陥れた覚えも無ければ、わけもなく誰かの命を奪ったこともない。たまに畑を荒らす害獣を狩るくらいだ。……人違いだ?」


「は……!? 人違い……!? そんな馬鹿なことがあってたまるものか!」


 魔王の拍子抜けな返答に、剣を向けるシャロンの手がわずかに震えた。


 困惑と激しい怒りが入り混じった複雑な表情で、目の前の男を睨みつける。


「あなたが魔王であることは、私の血統が、そして運命が証明しているわ! あなたがただの通りすがりの農夫だなんて、そんなこと認められるはずがないでしょ!」


「確かに魔王に違い無いらしいが、世界を脅かしているのは他の奴らだ。……多分な。俺は複数いる魔王の一人に過ぎん。」


「……魔王は、あなた一人のはずよ。」


「違う。魔王は俺だけじゃない。東にも、西にも、南にも、北にもいる。」


 シャロンは呼吸を整え、魔王の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。


 その真意を確かめようと、一歩踏み込んで食い下がる。


「……もしそれが本当なら、それこそ世界がどれほど歪んでいるかということよ! でも、たとえあなたが名ばかりの魔王の一人だとしても……野放しにしておくわけにはいかないわ!」


「わかった。必要なら俺の首を持っていけ。でも多分、俺を殺しても世界の平和には何の影響も無い。」


 あっけなく、そしてどこまでも投げやりな言葉が返ってくる。


 世界を揺るがす大敵としての威厳も、悪の根源としての誇りや執着すらも一切感じられない。


 あまりの手応えの無さに、シャロンは言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 第一話を読んでいただき、ありがとうございました。


 この作品では、自分が思う「優しさ」と「強さ」を書いていきたいと思っています。


 「面白そう」


 「続きを読んでみたい」


 そう思っていただけたら、


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 ブックマークもいただけると嬉しいです。


 次回もよろしくお願いいたします。

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