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パソコンを持って街を棄てろ!  作者: ケケロ脱走兵
53/58

(五十三)

 夕方に目が覚めて、ケイタイを確認するとバロックからメールが

届いていた。バロックの「みちのく一人旅」は、すでに白川関を越

えて「みちのく」へ足を踏み入れていた。そこで彼はいつものよう

に路上での弾き語りを始めた。そして、大阪出身の風変わりな中年

の男性の客と知り合いになった。大阪人は何処へ行っても大阪弁を

(てら)うのを(はばか)らないですぐ分かるらしい。バロックはその男を

「ゆーさん」と呼んだが、話をするうちに、ゆーさんは大阪での会

社勤めを辞めて奥さんの実家であるこの村へ移住して来た。以下は

バロックのメール。

「ゆーさんが都会を棄てて田舎へ移り住んだのは、娘さんの科学物

質過敏症という病気が原因やったが、自然に囲まれた田舎で暮らし

ていても快復は思い通りにはいかなかった。彼女は農家が撒く農薬

に反応して何度も卒倒した。そこでさらに山の奥に逃げ込んだが、

始めは娘のために無農薬の野菜を栽培していたが、それでも周りの

農家が撒く農薬が飛来してきて作物に付着して彼女はほとんど口に

することが出来なかった。更に、ゆーさんの無農薬の畑で増えた害

虫が他の農地に飛来して苦情が殺到した。次第にゆーさんは周りの

農家から疎んじられるようになり、遂には用水路に沈めていた開発

中の発電機が流されて、水路を塞いで流れを止め、水が溢れ出す事

件が起きた。そして、ゆーさんは何時しか村八分にされていた。彼

は理系の学究肌の無口な人で、周りの目など余り気にする人ではな

かった。俺も始めて路上で会った時は浮浪者かと思った程で、彼が

体裁を気にする村の人々と上手く打ち解ける筈がなかった。それで

も奥さんは彼よりも人付き合いに明るかったので事なきを得ていた

が、彼が奥さんに無断で貯蓄を崩して発電機の工場を造り、それが

原因で離婚してからは、彼は人の目が煩くて村の中を歩けなくなっ

てしまった。彼は、『ワシは対人関係過敏症になってしまった』と

言うので、『どうなんの?』って聞くと、『村人を見たら鬱陶しく

なる』

 この頃は、俄かに農業が持て囃やされて都会の生活に飽いた者が

、自然の中でのんびりと暮らしたいなどと思って田舎暮らしに憧れ

るが、今や日本中にのんびりと暮らせる地方など何処にもない。や

れ地域の活性化だ、やれ村おこしだと、寝てる村を叩き起こそうと

五月蠅い。そして、農協に逆らえない農家は消費者のニーズに応え

ようとまるで製造工場のように規格が揃った野菜を型に嵌めて作っ

ている。消費者は気付いていないが、すでに品種改良された野菜は

たった一つの遺伝子から作られた全く同じ野菜を食べさせられてい

るのだ。」

 バロックは、たまたま話し合った「ゆーさん」と意気投合して、

彼が住む「ポツンと一軒家」に逗留することになり、ついには人手

がいくらあっても困らない野菜の収穫まで進んでするようになった。



                       (つづく)

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