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パソコンを持って街を棄てろ!  作者: ケケロ脱走兵
4/58

(四)

             

 ポチャ。

水面を跳ねる魚の音で目が覚めた。気付かない間に眠ってた。やは

りネットカフェのリクライニングシートでは睡眠は満たされない。

手足を伸ばして寝ることがそれほど大事だとはこんな暮らしになる

まで分からなかった。いつも頭の中は「どこで寝るか」が占めてい

る。「何の為に生きている?」と聞かれると間違いなく「寝る為に

生きている」と答えるだろう。街を彷徨っていても人を気にせずに

眠れる「夢の楽園」ばかり捜している。棲家をなくす事は睡眠をな

くすことだった。アウシュビッツでは不定期な水滴の音で眠らせな

い拷問があったらしいが、自分の身にいつ何事が起こるか分からな

い状況では、水滴が落ちてこない静寂こそが最も神経を消耗させ、

疲労困憊の末についには死を覚悟しながら眠ってしまうのだろう。

次の憲法改正には是非「如何なる睡眠も、これを犯しては成らない

」と云う「睡眠の自由」を保障して欲しい。夜中にホームレスのテ

ントに押し入って眠っている人間を殴り殺すのはいかに残酷なこと

か知るべきだ。

 ポチャ。

 魚はいいよな、泳いでいるだけでいつも目の前に食べるものがや

って来るもんな。人の世界ではただ歩いてるだけで目の前に納豆定

食やカレーライスが現われるなんてことないもんな。次に生まれて

くる時は絶対に魚になろう。でも、自分も大きな魚の餌になるんだ

ろうけど。お腹が空いたので何か食べなくちゃ。万引き、物乞い、

情けを乞う事、これを私は強く自分に禁じていた。それはきっと楽

な方法だろうが、手を染めると抜けられなくなるのが嫌だった。も

ちろん一生こんなことはしてないぞ、と思っていた。いちど三日間

食えない時があった。その前まで仕事が続いて週末には五万円程の

お金があったが久々の大金に目が眩み、大盛り牛丼たまご付き、サ

ウナに入って小奇麗になって、カプセルホテルで手足を伸ばし、缶

ビール飲んでエッチビデオに興奮し、人並みの暮らしを味わうと、

こんな暮らしにケリ着けて、たったひと間の部屋でいい、楽な暮ら

しがしたくなり、一攫千金夢に見て、開店前のパチンコ屋、並んだ

甲斐が報われて、早速もらった玉手箱、ここで止めるか思案橋、う

まくいったら仕事をせずに、ひと月遊んで暮らせると、よくよく欲

に勝てなくて、取れぬ魚群の海算用、夢を見たのは一瞬で、濡れ手

に泡の玉手箱、空けてびっくり空手箱、呼び戻そうと追い銭を、有

り金叩いて投げたけど、「海」の藻屑と為りにけり。有り金を摩っ

てしまった。落ち込んだ、本当に落ち込んだ。それ以来、私はすこ

しずつ金を残そうと思った。一日二食にして、昼はスーパーで2本

100円の袋入りのフランスパンと100円の砂糖を買い、砂糖を

水で溶かしてパンにつけて食べている。


                       (つづく)

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