恋の色 伍
愛されたいのに、叶わなかった。
あんな子を放っておけない。
あの子が、一番見てもらわなきゃいけなかったのに…
その為に…んーん…いやぁ、
どっちの為かな?
私が死んだ理由につけるべきは。
「優奈、泣くなって、っ」
「…やだよ、泣けないわけ、無いじゃんっ!私の、大切な、親友が死んじゃったんだよっ!?なんでっ、うっ、ひっく、理夢ぅ、りむぅ…帰ってきてよぉ…」
なんで死んじゃったんだよ、理夢のバカ…悠里とも付き合えて、幸せ絶好調って感じだったのに、何で?私が悪いのかな。私が、理夢達にデートを言わなきゃ、良かったのかな。
「なに思ってるかしらねぇけど…自分のせいとか絶対思うなよ?」
「…?なんだよ、悠里らしくないじゃん…」
「あーもう、泣くなって!」
悠里が私の背中をトントンと叩いて、よしよしと駄々っ子をあやすように優しい声を出す。小さい時に私が泣いた時には何時もやってくれたそれは、私の涙腺を更に刺激した。
「うぅーー…ひっく、」
「だから泣くなって!…俺に慰められんのやだって事か?」
「ぞんなこといってないだろぉがぁ!!…悠里に、やさしくされたらぁ嬉しい、んだしっ、ひっく」
「優奈…」
「ごめんね、ごめん。私が悪いって思わせてよ。そうしなきゃ、後悔で潰れそう…」
「じゃあさ」
私にゆっくり近づいて、悠里が真っ赤に染まった顔でぼそっと呟く。
「その後悔とか、罪の意識…俺もある。勿論。…だから、さ。俺と一緒に背負わねぇか?」
「っ…なんで、そんなに優しいんだよ、このバカ悠里…」
「悪いか?…俺だって、わんわん泣きたいし、あいつにまた会いたい。でも。それはもう叶わない。…だったら、最後まで秘密を共有できるお前と、悪友みたいなもんになった方がいいだろ?」
「…ありがと。なってあげるよ、悠里の悪友。本当に…ありがとう。」
私の顔も、前の理夢と同じくらいに真っ赤なはずだ。悠里がにかりと歯を出して笑うと、私は同じように歯を出して笑ってやった。ぽたりと涙が落ちて、泣き笑いみたいになってた。…私に向けられる好意は、likeであって、Loveじゃない。『友達として好き』は、私の心を抉ってきた筈なのに…今回だけは、なぜか。そう、本当になぜか。とっても、嬉しかった。
「じゃ、明日12時に俺んちな。」
「う、うん。」
「遅れんなよ?」
「遅れるわけないじゃん?」
「その言葉、覚えとくからなー?」
「はいはい、また明日っ!」
「じゃなー!」
「またねー!」
悠里のお父さんが運転している車をぼーっと見つめると、車にいるお母さんに呼ばれ、はーいっと声を出して走り出す。この口のニヤニヤを隠すように。
「ふぁ…9時だ…支度。」
重い体に鞭打って、顔を洗って、着替えに部屋に戻った時に見えた理夢との写真に涙を出すのを堪え、着替えると朝食を簡単に済ませ、家を出る。
「理夢の為に、私ができること…」
「お、きたきたー!」
「ん、ぁ。悠里!おはよー」
「おはよ、優奈。じゃ、早速行こうぜ?」
「ちょ待て待て、説明しろ、バカ。」
「何かとあればバカやめろ!」
「ええっと、で?何しに行くの?」
「あぁ、それはな…
鈴って覚えてるだろ?俺を押したあの女だ。あいつ、すっげぇ性格悪いし、正直言うと中々の女だったよ、怖さでは。でも、理夢が言うにはあいつは傷ついてるらしいんだよ。それも相当。あいつ、優しいだろ?死ぬ前に俺に言ってきた。看護婦さん呼ぼうとしたのに、いい、いらないって言って。だから。あいつがやってほしいっていった、最初で最後のお願いを、きちんとやり遂げたい。…その為に優奈も呼んだんだ。理夢が、お前と一緒にって言ったからな。」
「そんな、事が…」
「ま、理由言ったし、早めに行くぞ。」
「う、うん…」
道を知っている風の悠里に、なんで知ってんだよと声をかけたかったけど、その後なんて言われるのか怖くて、もし冷たい目線を向けられたらどうしようなんて思ったら、一度失敗しかけた私の心はズキズキ痛んで、顔が真っ青になっているんじゃないかと思う。
「ゆ、悠里。」
「ん?」
「なんで…」
「あ?なに?」
「いや、何でもない。」
「え?あぁ、そう。」
「あの、行ってさぁ。鈴になんて言うわけ?」
「えぇ?それ聞く?…考えてねぇんだよなー。」
「…はぁ?」
当たり前の様な顔でサラリと言うこいつに、少し苛立ちを覚える私は間違ってない!…前からこうだから、いいか。どうしよ、鈴の悪口めっちゃ言ってたから会う顔ないし、気まず…
「あ、ついた。ここじゃん。」
「あ、ええっ、なにこのおんぼろアパート!?」
「うわっ、見た目だけじゃなくて周りもやべぇな、なんだこの雑草の多さ。」
「あ、えええっ、えー…なんだよ鈴、お前超高級マンション住んでるってたじゃねぇかよ…ふざけんなバカ…」
「お前すぐ騙されるもんなぁ。あれ信じてんの理夢と優奈以外いなかったぜ?」
「知ってんなら言えや…恥ずいわ!」
しかも理夢も騙せれてたの!?あー、恥ずかしい…黒歴史増えたよ、もう!やってられないし…悠里め…
「で?どうする?」
「じゃ、ピンポンしに行こうぜ?」
「ど直球w」
「悪いことはしてねぇからなw」
歩くたびにきしむ階段を上って、ごくりと生唾を飲み込む。そこで見たものを、私は生涯忘れないだろう。そんな気がしていた。




