【4】
ミッポは三人とフィルーをフィリアムの大きな噴水まで連れてきた。
「ほら見えるだろう。アルレスがいるのはあの赤い塔だよ。先ずは、この道をまっすぐいけば森に辿り着く。その森を抜けたらフィリアムのラビーシュの塔に到着さ」
それから一行はフィリアムの賑わう街を歩いた。歩いていくと人々や背に翼が生えた不思議な生き物達などが通り過ぎていく。ワタルとユカとヒロキの緊張が高まってきた。これからどんなことが待ち受けているのだろう、と。またこれから合う国のラビーシュとは、一体どんな存在なのだろう。そんなことを考えているうちに、娘の声が聞こえてきた。
「ミッポじゃないの!珍しいわね!どうしたのよ、こんな街外れまで来て」
「サーヤ、久しぶり。元気そうだね。ちょっと、アルレスに用があって」
フィリアムの装飾を身にまとったサーヤは、それを聞いて驚きを隠せないようだった。
「アルレス!?ということは、よほどのことがあったのね…、見かけない顔の子達もいるし」
「そういうこと…。じゃあ先を急いでるから。またね、元気でサーヤ!」
「ミッポも、君たちも、気を付けてね!あっ、これを女の子にあげるわ!またね!」
ユカは、淡く輝く朱色の髪飾りをサーヤから渡され、それを見るなりミッポは言った。
「その髪飾りは、魔法でよく鍛えられているね。大切にしときな、ユカ」
ユカは、すぐに髪飾りを髪につけると、胸が高鳴り、全身に力が漲ってきて、足取りが蝶々の羽のように軽やかになるのを感じた。
また、一行は、しばらく歩いていくと、森が近づいてた。その森の前まで行った時に、ミッポが一行を立ち止まらせて、少しばかりの緊張感を持って語り出した。
「ここからは、フィリアムの森。別名『沈黙の森』と、言われているんだ」
ユカは、何かに気が付いたように話した。
「沈黙の森?沈黙の森ということは、声に出して、会話したら駄目ってことね」
「その通り!この森を通り抜けるまでは、声に出して、おしゃべりすることは禁止されているんだ。もしも、おしゃべりをしてしまったら、また、入り口に戻されてしまうんだよ。しかも、ある程度、心の声も鎮めていなければならないんだ」
ワタルが話し出した。
「心の声もなの?じゃあ、本当に集中していないと、この森は抜けられないんだね」
「そういうことだよワタル。みんなで、想いを一つにするんだ。それだけラビーシュのいる搭は、神聖な場ということでもあるんだよ。この森は、ある種の結界でもあるんだ。心騒ぐ者は、ラビーシュに会うことは出来ない。また、会う縁が生じないって、ことなんだよ」
ヒロキは、真剣な表情になって、深い森のなかから、こだまするかのように、言った。
「よし。シンプルに行こう。みんな、心は一つだ。アルレスに会いに行こう!もしも、入り口に戻されたとしても、今と同じ心境のまま、アルレスに会いに行くこと、それだけに集中しよう!」
一行は地中に潜り込むほど、深く頷いて、心を一つにし、沈黙の森へと入っていった。