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アミューと七色の山  作者: アミュースケール
第一章 フィリアムの赤い山
10/22

【5】

沈黙の森に入った一行は、ただひたすら心を静かにし、同時に、心の底に、透明感溢れる水晶なようなものを、抱きながら、森を進んでいった。また、この森から発せられる、静寂なる()によって、一行は、歩いていくだけで、爽涼(そうりょう)で清らかな滝水に浴びて、沐浴をしているかのようだった。


森のなかからは、不思議な音色が聴こえてくることもあり、また、珍しい鳴き声も聴こえてきた。奥に入っていくにつれて、次第に、森の葉の色が赤いプリズムとなり、変色していった。すると、生き物達の様子も、森の葉と同じような彩りに、染まっていった。


歩き出して、一時間ほどが経過したあたりで、ワタルが七色の鳥が目の前を突然、横切った為に、反射的に「あっ」と、声を出してしまった。それによって、一行は、森の入り口まで、戻ることになってしまった。


ワタルは、申し訳ない気持ち、やるせない想いが込み上げてきたので、すぐさま森に入って行こうとしていたヒロキの足を一度、止めさせる為に、おもいっきり、ヒロキの肩を、入り口側に、引き寄せた。


ヒロキは、仕方がないといった声色で、一時間ほど続いた沈黙の糸を切ることにした。


「しょうがないよ。未然に防げるものでもなかった。たまたまあの奇妙な鳥が、ワタルの目の前を横切ったんだ。ワタルは、悪くないよ。もしも、あの鳥が僕のまえで横切ったら、ワタルと、同じことをしていたと思う」


ユカも、ワタルの沈んだ雰囲気を察して、元気づけるように、話し出した。


「そうよ。ヒロキの言うとおり。ワタルは、気にしなくていいのいいの。私だって、今までは、大丈夫だったけれど、これからは、何が起こるのか分からないのだから、ワタルのように声を出してしまうこともあるかも、知れないわ」


ワタルは、小難しい表情をしながら、なにかを吐き出すかのように言った。


「みんなありがとう。だけど、そうやって励まされると、余計胸が……苦しくなる」


このワタルの複雑な心境によって、さらに、どんよりした雰囲気なった一行だったが、赤い妖精のフィルーは、ワタルに声をかけた。


「ワタル…大変そう…。フィルー…、何もしてあげられない…。でもフィルー、ワタルと一緒にいれる…。フィルー…いつも…ワタルと一緒…一緒だよ…」


この言葉に、ワタルは感動し、涙を隠したが、元気が底の底から漲ってきた。一同は、フィルーの純粋さに、それぞれ胸を打たれた。一同の雰囲気は、みるみるうちに、明るくなっていった。


ワタルは立ち直り、持ち前の溌剌(はつらつ)としたまなざしで、一同を見つめながら、話し出した。


「みんなありがとう!お陰様で、本当の本当に元気になったよ!!」


ミッポは、全てを内包するような、あたたかな口調で話し出した。


「うん。何があっても、お互いさま!この世界はもちつもたれつ!さあ、改めて出発しよう!」


ミッポを先頭に、結束力を深め合った一行は、再び、沈黙の森へと、入っていった。


再び、歩き出して、一行は気付いたのだが、先程よりも、早い段階で、赤いプリズムの地点まで辿り着いたのだった。ミッポは、実は、こういうこともあることは、知ってはいたが、事前にみんなには、伝えなかった。それを知らせてしまうことは、ご存知のとおり、あまりにも、賢明ではないからだ。


沈黙の森のあるところまで歩を進めていくと、突然、森の奥の方から白い光が差し込んできた。その白い光は、ワタル達一行の行き先を案内してくれるかのようだった。途中で、エメラルドの池などもあったが、その上を光に(いざな)われて、池の水面を歩くことも出来た。だんだんとその白い光は、大きくなっていき、その光が全身を包むほどになった頃には、一行は、森を抜け出したのだった。


一行の目の前には、白い光の門があり、さらに奥には、硝子のような赤い搭が(そび)え立っていた。


そして、先頭に立っていたミッポが微笑みながら振り返り、話し出した。


「みんな!もう話しても、大丈夫だよ!ここが、アルレスが祈祷している赤い搭さ!」


一行は、噛み締めるように、微笑み合って、手を取り合い、しずかな(よろこ)びを分かち合った。どうやら、沈黙の森によって、すっかりと、アルレスと会う準備が調(ととの)っていたのだった。

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