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p.6[アネモイの紋章]

カゼノさんに言われて服の胸元を引っ張って確認してみると心臓部に見慣れない紋章が描かれていた。

 それは丁度左胸の真上にあって、ひし形を挟む形で一対の翼が描かれていた。うっすらとだが緑に輝いているようだ。

 一旦魔導書に視線を向けると文章が更新され文字が浮かんでくる。


 『それはアネモイ様の使徒である証です。詳しくはまた後で言います。とりあえずその紋章を見せて下さい』


 へぇ、コレがねー。とりあえず見せてみるか。


 「オースティンさんちょっと見ててください」


 そう言って上の服を脱いで見せる。


 「コレはアネモイ様の使徒の紋章です。どうでしょうか?」

 「・・・確かに。それはアネモイ様の物だ。体に描いてるようには見えないし本物だろう。それで格段に信憑性が出てきたよ」


 こっちの世界に蛍光塗料があるか知らないが薄くだが輝いているしこの紋章の方が魔導書より信じられるんじゃないだろうか。少なくとも俺は前者だが。


 「王都へ手紙を書くからタチバナ殿は部屋で待っててくれ、今案内を呼ぶ。食事の時に使いをだす」

 「分かりました。私が知っている事は言ったので監視はご遠慮願います」

 「そのようにしよう」


 オースティンさんは椅子から立つと執務机に向かい呼び鈴を鳴らした。

 メイドを呼んだのだろう。ブレンダンは失礼しますと一言残して先に部屋から出て行った。


 淹れてもらっていた飲み物、紅茶だろうか?それを飲んで迎えを待つ。すっかり冷えてしまっていたが十分に美味しかった。俺が飲み終わるとドアがノックされ最初に案内してくれた人が入って来た。

 何かと会うなこの人。確かクレアさんだっけ?


 「それではご案内させて頂きます」

 「お願いします。オースティン様も急に押しかけて申し訳ありませんでした」

 「いや、私の方に問題があっただけだ。それに有意義な時間だった」


 オースティンさんに挨拶して部屋を後にする。

 一日目で王都に知らせる準備が整った。どう反応が返ってくるかは知らないが悪いようにはならないだろう。俺にとっても十分意味のある時間だった。





 メイドのクレアさんに案内され、おそらく元の部屋だと思われる所に戻って来た。屋敷がデカい分部屋の数も多いからどの部屋にいたのかすら分からないな。


 部屋に戻ると安全だと確認が取れたのか魔導書から人型へとカゼノさんが姿を変えた。


 「対談お疲れさまでした」

 「あぁー。もう、しばらくはあんな場面に対面したくないな」

 「お疲れの所悪いのですけど、補足説明をしますんで聞いといてください」

 「さっき言ってた紋章の事?よろしく頼むよ。俺何にも知らないのに今後も説明とかしないといけないだろうし」


 オースティンさんは信じてくれたが他の人達がそうだとは限らない。今の俺では知識が全く足りないだろう。この世界で俺が知らなければいけない事は山盛りのようだ。


 「では説明を始めます。まずはツバサさんの胸元にある紋章の事です。その紋章は使徒である証の他にも効果があります。例えばツバサさんは魔法が使えますよね?」

 「そうだな」

 「では、どうして魔法が使えるか知っていますか?」

 「そりゃ、体内の魔力がどうにかしてるんじゃないのか?」


カゼノさんも魔力が動向言ってたし魔力で発動してるんじゃないだろうか。


 「正確には魔力を魔法に変換しているんです。ソーラーパネルみたいな感じです。簡単に説明すると太陽光を電圧に、魔力を魔法に変換するって感じです。変換の部分が難しいので魔法を使えるようになるまでに何十年も掛かる理由になっているんですが」

 「カゼノさんのサポートで変換の部分を肩代わりしてくれてたって事?魔法のイメージの補助をしてもらったのは分かったんだけど」

 「そういう事です。ですが私だけでは無くてその紋章も重要な役割を持っているんです」


 紋章に軽く手を合わせるカゼノさん。これってただの印じゃないのか。


 「そもそも地球の人間は魔力を持っていないんです。化学が発達したので魔力を扱う器官は廃れ無くなってしまいました。それなのにどうして魔法が使えるのか、というのを紋章が補っています」

 「紋章が魔力の供給元だと?」

 「はい。魔力というのは血管のように体中を巡る魔力線の中を流れ、体内の組織を活性化させる働きがあるのでこちらの人間には無くてはいけない器官です」

 「魔力が無い人間も居るみたいだがそいつ等は大丈夫なのか」

 「その人たちは新人類とでも言いましょうか。新人類は本来のツバサさんとほとんど同じ状態です。魔力がある人達よりもサポートが無い分体は強く育ちますね。神様方が故意にそういう人たちを増やしていってるようですがどうするつもりなのか・・・」


 へー、そうなんだ。それにしても神様達は何を考えてるんだろうか、魔法を廃れさせて化学を発展させるとか?

 そう考えているとわざとらしく咳払いをしたカゼノさんが話を元に戻す。


 「紋章が魔力の供給元だという話ですがその紋章は主の体に根を張るんです。それが魔力線の様な働きをする事により魔法が使えるわけです」

 「なんか寄生されてるみたいだな」

 「寄生とは似ているようで違うんですよ。宿主から養分を貰うのでは無く紋章のエネルギーを宿主に渡しているので真逆の関係ですね」

 「魔力を貰ってるって言う訳か。じゃあ紋章はどっから魔力持ってくるんだ?元から蓄えてたとしても限度があるだろ」

 「空気中の魔力を集めているんですよ。魔力の分子を集めて体内で魔力に変えるみたいな感じに」


 便利だな紋章。魔力が無い奴にも付けてやれば魔法が使えるように成るって事だしな。


 「あ、そうそう。質問いい?」

 「どうぞ」

 「みんな魔導書持って無いみたいなんだけど、どっかにしまってるのか?」


 コレが気になってたんだよ。皆誰も魔導書持って無いから保管でもしてるのかなと思ってたんだ。


 「その事ですか。魔導書が降ってくるって話はしましたよね?実は魔導書は魔力で出来ているんですがその魔力と持ち主の魔力、その二つが磁石のSとNのように引き合うことで魔導書が降ってくるんです。引き合う二つの魔力はSとNの磁石がくっ付く様に持ち主の魔力とくっ付く、体内で同期する事が出来るので誰も持って無いように見えるんです」

 「それじゃあ視認出来ない訳だ」

 「その他にも、自分の元の魔力に魔導書分が足されるので僅かに活性化されて身体能力が上がりますね」

 「その同期?それってさ俺も出来るの?」

 「出来ますが私は断固拒否します」


 うーん。手厳しい。

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