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p.4[監視者]

 少し長いかも。

 題名が安直すぎるでしょうか?

『何者かに監視されています。言動に気を付けて下さい』


ッ!!


 思わず体がビクッって小さく反応してしまった。

 今のでバレてないよな・・・?

 とりあえず落ち着こう。そうだ深呼吸。深呼吸しよう。


 「すーはー、すーはー」


 よし座ろう。そうしよう。

 うん、ベッドの縁に座る。

 窓から見える空がきれいだなー。


 ・・・座ったけどどうしよう。


 困った時はカゼノさん。よし、コレで行こう。

 魔導書を開いて助けを乞う。


 『毎回毎回情けないですね、それでも男ですか?』

 「うっせーな!?・・・ハッ!!」


 やばい。やらかしてしまった。

 それにしてもカゼノさんの当たりがキツイ気がするんですが、それは。

 もうオースティンさんとこに押し入って白状させえればいいんじゃないかという思いが膨れあがってくる。


 『何やってるんですか。とりあえず監視者の場所を探してください』


 全く、誰のせいだと思ってるのか。

 カゼノさんの指示に従って監視者の場所を探そうとなるべく頭を動かさずに視線を彷徨わせる。

 ・・・全然分からん。


 『何のために魔法があると思ってるんですか?緊張しすぎて逆に怪しいですよ。使徒だとバラした方が楽じゃないですか?』


 そうだ魔法だよ。何で気付かなかったんだ。

 あと、使徒だとバラすのは互いに信用できる相手だと思ってからだ。いいようにやられて目標が達成出来ないとか最悪だからな。


 それじゃ、魔法を使うかな。相手を探すような風魔法か・・・。


 「『部屋探知ルームサーチ』」


 考えたのは、空気の流れを生んで不自然な流れを探そうという事だった。

 俺の足元を起点に風が発生する。風が通った場所は手で触れたような感触が遅れて知覚できる、何とも言えない感覚だ。

 その風は少しずつと勢いを増して ゴウッ! と一際大きな音を立てて部屋の中を吹き荒れる。飾られていた絵画は ガタ、ガタガタッ と左右に大きく振れ、ベッドの天蓋は暴れまわれ、呼び鈴は机の上から落ちてしまった。

 風が強かったか?調整が難しいな。

 風が一通り収まると魔導書の白紙のページに部屋の間取りが凄い速さで書かれていく。

 ここまで俺自身、想像していなかったからカゼノさんがサポートしてくれたんだろう。

 俺の方でも自分で出した魔法だし、ある程度は把握しているが、自分の感覚と書かれているのを見るのとではまた違う感覚だ。


 魔導書の方には小さな点でしか書かれていないが、俺の方では絵画が飾られていた壁の裏に覗き穴のような物が確認できた。

 絵画を外して壁を確認してみると明らかに壁の色が違う部分があった。


 「ここから見てたのか?」


 あんだけ強い風が吹いたんだ。絵画が外れた時点で監視者ももう逃げているだろう。


 コンコンコン!

 「失礼します!何かありましたか!!大きな音と鐘の音が聞こえたので急いで来たのですがっ」


 扉がノックされたかと思うとメイドさんが二人入って来た。

 一人は案内してくれた人が慌てながら、で、もう一人は案内してくれた人より少し年上なのか落ち着いた様子だった。


 「いやー、急に部屋の中に強い風が入ってきましてねー。焦りましたよ」


 そうごまかしながら絵画を掛け直して、呼び鈴を机の上に戻す。

 案内してくれたメイドさんはワタワタしているが、もう一人のメイドさんは窓の方を一瞥すると俺に向かって笑顔を向けてきた。


 俺は窓を開けていないので風が入ってくる事は無い。俺の拙い嘘を一目で見破ったのだろうか。

 落ち着いた様子だし手ごわい人物かもしれない。

 俺の嘘が下手なだけなのかもしれないが。


 「オースティンさんに聞きたい事が出来たんですが案内してもらえませんかね?」

 「かしこまりました。クレア、貴女はお部屋の掃除を。タチバナ様案内させて頂きます」

 「あ、はい。やっておきます?」


 クレアと呼ばれた最初に俺を案内してくれた女性は理解が追い付いていないようだ。

 俺はここまでやってしまったら真意を聞こうと、オースティンさんのところまでメイドさんに案内してもらう。


 「ちゃんとオースティンさんの所に案内してくださいね」

 「心得ております」


 部屋から出て直ぐにクギをさして置く。

 コレでちゃんとオースティンさんの所に案内してくれればいいんだが。





 コンコンコン・・・


 「オースティン様。タチバナ様がお話しがあるとの事でご案内しました」

 「空いてるから入ってきてくれ」


 良かった。ちゃんと案内してくれたようだ。

 だが、まだ気を抜いてはいけない。部屋に入った瞬間 グサッ! と一突きいいのを貰うかもしれない。


 「失礼いたします」


 メイドさんが扉を開けてくれたので注意しながら入室する。

 

「急に押しかけてすいませんオースティン様。どうしても聞きたい事が出来たので」

 「まあ、腰を下ろしたまえよ」


 その部屋は扉を開けると机を挟むように二人掛けの椅子が置いてあり、その奥に学校で校長が座ってそうな執務机があった。

 オースティンさんは執務机から立ち上がると二人掛けの椅子の方に歩いて行って俺に席を進めてきたのでそれに従う。

 俺に続いて部屋に入ったメイドさんは部屋の隅に置かれていたセットで飲み物を作り始めた。


 「で、聞きたい事があるそうだが?」

 「それがですね、誰かに監視されていたようでしてね。オースティン様なら何かお知りじゃ無いかと思いましてね」

 「すまなかったね。まさか気付かれるとは思わなかったよ。私の一番の腹心だったんだが」


 あれ?普通に言っちゃうんだ。隠さなくてもいいのか?


 「そんなにあっさりと言って良かったんですか?」

 「隠していてもこのままだと私も君も互いに益が無いからな。私個人としては信用と情報程、高い物は無いと思ってるよ」

 「私は時間ですかね。それはともかく、私を監視させていた理由を聞いても?」

 「君には目標があるそうじゃないか、その目標を私が叶えてやるこが出来れば恩を売れるからな。

 そのまま娘とくっつけてしまおうだとか、弱みを握って飼い殺そうだとか理由は探せばキリが無いな」


 見た目と同じ様に結構えげつない事考えてるんだな。

 顔は関係ないとしても、やっぱり上流階級ともなるとそういう事を考えていかないとダメなのか。


 「それにしても私の大切な、大っ切な情報を君に教えたんだ。君も何かしらの対価を払うべきだと思うんだがどうだろうか、タチバナ殿」


 ペラペラ喋ると思ったらそういう事か。コレは嵌められたな・・・。

 相手がここまで言ってくれたんだ、俺も何か言わなければいけないだろう。

 協力者として立場も申し分ない。この繋がりを簡単に切ればチャンスはもう来ないか、来ても手遅れだろう。

 さて、無いに等しい手札をどう切るべきか。

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