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p.38[VS.カメーリア-2]

雨が降る霧の中次の手をどうするか考える。

俺とカゼノさん。二人になった事により攻撃の手は増える。

霧の中なのでカメーリアさんは二人いる事には気付かないだろう。これも利点だ。


「『砂塵(ダスト)』。『水鞠(ドロップ・オブ・ウォーター)』。『加熱(ヒート)』」


砂と水で泥を作るとこまではさっきと同じだ。それを熱で乾燥させる。

出来たのは醜い泥の人形。コレを数体作り出し、次の一手を打つ。


「『水人形(ウォータードール)』」


コレは唯の人形の水。あの剣の前には何の役にもたたないだろう。


「『狂気の酒杯』。『水操作(オペレーション・ウォーター)』」


カメーリアさんに届く前に蒸発するのは確認している。だが、彼女の場所を確認するためには必要だ。

操作した水を拡げる。魔法ならばある程度感覚が分かる。それで大まかな場所を割り当てる。


………どこだ。どこに居る。


「見つけた」


水を進める抵抗が無くなった場所。そこにいる。


「カゼノさんは陽動をお願い」

「分かりました」


カメーリアさんが居ると思われる場所へ泥人形を飛ばす。

後を追うようにして水人形を。


カゼノさんからアレース様の剣を受け取り、目配せをして俺も役目を果たす為に動く。


「『隠れ蓑(ハイド)』」


闇魔法で気配を消して俺も動き出した。

狂気の酒杯で出た水を操作してカメーリアさんへと『飛行(フライ)』で足音を消して飛んでいく。


「あ、カゼノさんフリルのスカートだけど大丈夫かな…」


 頭に浮かんだのはゴスロリな衣装。

雨も降ってるし、杯から出た水なんかで地面はぬかるんでいる。見るからに高そうなんだけど後でクリーニング代を払えとか言われないよな...。

......彼女なら大丈夫か。信じよう。


・・・ッ!

一つ消えた。いや二つか?

泥人形の手応えが消えた。カメーリアさんがいるのは間違いない。

俺も急いで向かう。


途中、何かを弾くような金属音や光が何度か見えた。

カゼノさんが戦闘に入ったのだろう。まだいくつか人形の反応が残っているが、人形の主導権をカゼノさんに譲っておこう。俺よりも彼女の方が頭は回るし、状況判断能力も上だ。

俺は一つの事に集中するべきだ。


…カメーリアさんを確認できた。

カゼノさんも俺が彼女を見つけたのが分かったのだろう。攻撃の規模が大きくなり、注目を引くように立ち回る。


「正々堂々戦いなさい!貴方は誇り高き使徒でしょうに!!」

「…」


カメーリアさんの言葉に返答が帰る事は無い。

それは俺じゃなくてカゼノさんだ。


正々堂々とは一体なんだろうか。自分が持てる全てを使って、精一杯頑張って戦うのが正々堂々だと俺は思っている。

価値観の違いか…。


今は関係ないな。考えるのはやめよう。


カメーリアさんへと向けて霧の中を突き進みながら矢が飛来する。

彼女はそれを剣で弾くと矢が飛んできた方向へと走り出した。もちろん彼女を追いかける。


動くのは隙が出来てからだ。


その後も何度か同じようなやり取りが続いた。

合間合間に人形が入り込むが近づけば消えて無くなる。


「そこまでです!ツバサ タチバナ!これ以上は見苦しいですよ。負けを認めて下さい」


カメーリアさんが剣の切っ先を目の前に向ける。

恐らくそこにカゼノさんがいるのだろう。


彼女の剣を見れば、光は発しておらず、戦闘前に見た物と大差なかった。


「…」

「まだだんまりを決め込むつもりですか」


カゼノさんが何も言わないのをカメーリアさんはよく思わなかったのだろう。一歩前に出た。

そろそろカゼノさんが危ないか。俺の魔力量も心配だ。


「『風の抜け道(ウインド・バイロード)』」


俺は魔法を唱えていない。カゼノさんの魔法だ。

このタイミングで使うという事は意味があるはず。気を引き締め、何事にも対応出来るように腰を落とす。


「『初めの一歩(ブースト)』」


2回目。

この魔法のお陰で『風の抜け道(ウインド・バイロード)』の効果が分かった。

言ってしまえば簡単だ。風で出来た加速空間。

その空間に入れば距離を簡単に詰めることが出来る。

そこに俺を『初めの一歩(ブースト)』で突き込む。現に俺の体は腰の当たりを勢いよく押された感覚の後、何が何だか分からなかったが目の前にカメーリアさんの背中があったので、剣の柄を背中に押し当てた。


「終わりです。カメーリアさん」

「え!?…なんで?貴方は目の前に……」


混乱しているカメーリアさんの目の前にカゼノさんが姿を表すと彼女は自分が騙されていたのに気づいたようで、囮……。と呟いていた。


「カゼノさん、ありがとう」

「チキン過ぎるんじゃないですか?私が切られるところだったんですけど」

「無事だからいいんじゃない?結果よければ全て良しって………カフッ!」


ドスッ と言う鈍い音を残してカゼノさんは魔道書へと戻った。

俺はなぐられた腹部を抑えながら魔道書を腰のポーチへとしまった。


「今のは…」

「私の魔道書ですよ…。とても大切な仲間です」


魔法で霧と空に浮かぶ黒雲たちを吹き飛ばしながら魔道書へと神具を戻していく。

今回はカゼノさん大健闘だな。





そしてそれは、カメーリアさんが手に持った剣を鞘に収めてすぐの事だった。


「ぁぁぁあぁぁぁぁあああぁーーーーー!!」

「どうした!何があった!?」


カメーリアさんが突然発狂しだしたのだ。

なんだいきなり!


…発狂?いや待てよ……『狂気の酒杯』。

アネモイ様が言っていた効果は、水に触れた者が狂乱する。

カメーリアさんが持つヘリオス様の神具のお陰で水に直接触れてはいない。だが、蒸発した水分にも効果があるとすれば?


……今の状況も十分に説明できる。

だが何故今なんだ?戦闘中と今とでは何か違うのか?


「あああああああああああああ「考えろ」ああああぁあああ「考えろ」ああああああぁあ」


発狂しだしたのは戦闘が終わって直ぐ。

その前の行動は何をしていた?


剣を鞘に収めて……これか!

剣から手を離したから。


「ああああああああああ、ブフッ!」


叫びすぎて喉が耐えられなくなったのか血を吹き出してその場にうずくまる。

俺はカメーリアの腰へと手を回し剣帯を外そうとするが カチャカチャ と音がするだけで中々外れない。


「クソがっ!『鎌鼬(ソニックブーム)』!!」


固定具に鎌鼬(かまいたち)を放ち、破壊。

カメーリアさんを背後から抱き締めるように抱え、剣を彼女の手に握らせる。


「ぁ、ぁぁぁ…」

「大丈夫!一人じゃない!俺が居る!」


震える体を強く抱き締め、何度も声を掛ける。

神の力が拮抗していて戦闘中に発狂を起こさなかったとすればもう一度剣を握って神の力同士を対立させてやればいい。

間に合ってくれよ……。

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