p.37[VS.カメーリア-1]
この題名は少し変更するかもされません。
スキルが幾つか発動しているのを感じる。
効果で言えばガイア様からの[未来予測]が一番ありがたい。
対峙しているカメーリアさんが動く前に、透けた彼女が動くのが見える。これが[未来予測]の効果。相手の影が先んじて動き、後を追うようにして本体が動き出す。
「では、…参ります」
「どうぞ」
俺の返答と同時にカメーリアさんが踏み込み、俺に向けて剣を振るう。
が、その動きは見えている。
剣を避けて魔法の詠唱。
「『飛行』。『加速する鼓動』。」
宙へと飛び上がり、魔法の効果で体に力が漲り体温が上昇する。
これで彼女の剣の間合いからは外れた。
後はこのまま魔法でチマチマと攻撃するだけだ。
互いに持っている武器は神具。と、なれば剣の腕や戦闘での駆け引きは俺が圧倒的にフリ。
魔力が持つまで耐久するのは愚策ではない筈。魔力がある内に勝てばいいだけの話だ。
飛行する際に邪魔な剣は魔道書へ。
二つスキルを発動させる。
「『魔法炉』。『狂気の酒杯』」
魔法炉はその名の通り、魔力の回復速度の上昇。アクティブスキルで、効果が切れると疲労感に襲われるのが難点だ。
狂気の酒杯はアネモイ様の所で使ってから一度も使っていない。名前からして怪しいので、おいそれと実験する訳にはいかなかったのだ。
スキルを発動させた事で、魔力の回復速度は上昇し、手には銀の酒杯。
杯の中から水が湧き出し、杯を溢れ出た水は長い滞空時間を経て地面へと落下。
だが、地面が水を吸い込むようなことは無く、徐々にその面積を増やしていった。
「…クッ!」
カメーリアさんが宙に浮かんでいる俺へと強い視線を向けるがそんなものは関係ない。
勝てば良いんだ。勝てば。
広がり続けた水は遂にカメーリアさんの足元まで届こうとしていた。
警戒はしているのだろうが見た目は唯の水に過ぎない。
効果を俺自身が知らないので何とも言えないが触れれば禄なことが無いのは分かる。
「効率が悪いな」
俺を中心に拡がる水を見ていてそう思った。
彼女だけに範囲を絞る事は出来ないのか、と。
そこで思い出した。水魔法貰ったじゃないか。
「『水操作』」
見てもらったら分かるが水の操作の魔法だ。
円を拡げる様に動いていた水が俺の意思一つで自由に動き出す。
カメーリアさんを囲うように水を動かし逃げ場を無くす。
その時だった。
「はぁぁぁぁ…!」
カメーリアさんの周囲が急に暗くなったと思えば水が消え始めたのだ。
「なんだ!?」
水が消える。
それで思い付くのは一つだけ。水が蒸発した?
あの剣はヘリオス様の神具。ヘリオス様は太陽神。
圧倒的熱量で水を蒸発させる事は可能?
彼女の剣を注意深く見てみれば、真っ黒だった剣が幾らか光を放っているように見えた。
「光の吸収と放射。それが剣の能力…?」
不味いな…。
吸収した光は未だ剣の中。それは彼女が先程から動いてない事から考える。未来予測にも反応は無かった。
という事は、あの剣は光を吸収し、それだけの熱量を持ったということだ。
彼女と初めてあった時はそこまでの性能があるとは言ってなかった。吸収と放射それはイコールの関係で結ばれている、と。
見た感じではそんな雰囲気では無い。
わずかな光の熱量を増大させた?剣内部で反射させ続けば可能か?ならばビームの放てるので無いか?
疑問は尽きないが、今は何か対策はしなければ不味い。
光を吸収させなければいいのだが、それを許してくれるとは思えない。
それなら…
「『天候変化・雨』」
存在する光の量を減らしてやればいい。
この魔法は神殿の禁書室で見つけた本の中にあったものだ。
元々は雷を落とす魔法だったが発動が不安定だった為に前段階として作られたと書いてあった。
現象としては、雨を降らせる。これだけだ。
だが今はそれで充分。雲が太陽を隠し、光量を減らしてくれる筈だ。
黒雲が空を覆い、雨を降らす。心做しか風も強くなった気がする。
それさえも今の俺には好都合だ。
「『風の悪戯』」
俺が初めて使った魔法。効果は風でバランスを崩したりといった嫌がらせ程度の物だが、これだけでは終わらせない。
「『砂塵』。『水鞠』」
砂塵は、砂埃や砂煙の事。水鞠は水の玉の事だ。
砂と水で泥を作り、風の悪戯で泥を運び、締め上げる。問題は泥が届くまでに乾いてしまうかどうかだが、相手の気が紛れてくれる事を祈る。まぁ、気休めだ。
「小細工をッ…」
まただ。カメーリアさんの周囲が暗くなり、剣が内包する光が強くなった気がした。
彼女が剣を振るえば熱波が泥を乾燥、破壊していく。
風の悪戯が泥の破片で視界を潰そうと動くが、そんな物は関係ないとばかりに剣で切り払われる。
どうするか…このままじゃジリ貧だ。魔力が尽きて俺が負ける。
「!」
今度は俺か!!
未来予測が示してくれた通りにカメーリアさんが俺を向き、剣を一閃。
「見えてれば……ッ!?」『竜巻』
唐突な下からの強烈な突き上げ。回転する身体。
衝撃で安定しない視界の中で見えたのは白い光線。
なんだ!なんだ!なんだ!
今のは魔法!?それにあの光線は!?
頭がぐわんぐわんする。
『霧の庭園』
詠唱!?…魔法か!
体制を整えなければ……。
そんな俺の心配を他所に魔法は攻撃の為に唱えられたものではなかったようで、霧が辺り一帯に現れる。
そして、腰の魔道書がバンバンと足に当たっていた。
「魔法…カゼノさんか!」
腰のポーチから魔道書を取り出し『飛行』を掛ける。
魔道書が人型になり、俺のよく知る人物へと姿となった。
「カゼノさん」
「危なかったですね。あの光線に当たれば死ぬんじゃないですか?今は魔法で姿を隠していますがどこまで持つか…」
カメーリアさん殺しにきてますやん…。死なないと思われてるならそれは買い被りだ。
カゼノさんの魔法で姿を隠せてはいるが、問題はあの光線。
剣の特製からしてあの光線は剣から出たものだと仮定して、連発して撃てるものなのか?刀身が見えないから軌道も見えない。未来予測もどこまであてにできるのか…。
「俺の魔力残量は…?」
「半分程ですかね。元が200%ですから残りは100とちょっと。…出来ますか?」
「出来るかじゃなくて、やるんだよ」
一旦地面に降りて、俺達の『飛行』を切る。
今度は俺のターンだ。




