三十六斬り目
前肢が離され、炎龍が岩諸共崩れ落ちた。巨大に開いた穴の先を者共の目が集中する。
穴の中から更なる魔物が地を這って飛び出した。30メートルあろうかという大きさで。爬虫類の身体に四足歩行。
長い尾をビタンビタンと揺らして歩く。炎龍よりも太い爪。水掻き。爬虫類ような顔付き。二つの巻き貝のような角が両面生やしている
炎龍とは違い低い鳴き声を上げる。
グゥエエエエン…!
散らす歩兵に顔と目が動く。そして、数人を丸ごと口に挟んだ。ゴリゴリと鎧と骨を噛み砕き、歯で人肉が引き裂かれる。抗う者も混じり、骨があるなと微かの安心を保つ将軍と貴族達。しかしその安心感も一瞬で消え去る。魔物の皮膚が上手く貫かない。矢も砲弾も効果なし。最早術がないと危機を感じた時。翼が立ち上がる。炎龍の紅い二つの翼だ。翼と同時身体を起こした炎龍。飛ばされて地に突かれても傷一つもなかった。
目を細く、四足歩行の魔物に歯をギリギリと強く噛み締める。一匹いたと反応ぶり、四足歩行の魔物の顔が炎龍に振り向く。
メガポゴ 災厄単位 山脈
炎龍が羽を羽ばたかせ、メガポゴに向かって前進。大口を開いてメガポゴに迫る。迫る牙をメガポゴは二足で立い踏ん張る。右肢を振り回す。
平手が炎龍の左顔にめり込む。弾き飛ばされ、ズシンと地を鳴らしている横転。
メガポゴの口が炎龍の首を挟む。炎龍が狂いのたじって暴れる。しかし力の差は歴然としたものでメガポゴに軽い振り回される。
この紛れの最中にメガポゴから飛び出た穴から労働者が出てくる。それを見逃さす、将軍らが怒鳴る。
「矢を放て!奴らを逃すな!」
しかし魔物の争いの恐怖に気圧されていて、行動が麻痺するばかりだった。役立たずめと言わんばかりに唇を噛み締める将軍。だが…炎龍の身体が彼等の真上に振り落ちる。
「ちょっ!止めっ…!」
身体と地面に圧縮して家に帰らぬ人となった。
飛び出した労働者達も魔物から遠ざけようと穴から降り、またよじ登って逃走を促す。
中には二匹の争いを目に焼き尽くす者がいた。
「災いを齎す怪物を圧倒するとは…」
「あんな恐ろしい奴が地底に潜んでいたのか」
悲鳴も聞こえない程、熱心深く眺める。
牙が首に食い込み、どす黒い血が地に滴り落ちる。もがき苦しむだけで抵抗らしい動きを見せず、痛ましい声を漏らす炎龍。力が薄くなり、翼が崩れ落ちる。
メガポゴが口を動かして肉を噛み始めた。人間よりも良く味わい、ガツガツと顎を動かしている。
しかし…メガポゴがピタリと固まった。抜け出した穴から笛のような細い音が響いた。
メガポゴは首を離すと、方向を変えた。周りや真下などに気を配らず、戸惑う人間達の群れの中で前進を始めた。
「移動し始めたぞ。どこに行く気だ」
「この先は王都だぞ」
この時、ルウも逃げずにメガポゴの行動を最後まで遠望していた。大きく目を見開き、愕然に覆った顔付きで後ろ姿を目に映る。
「違う…俺が見た奴じゃない…」




