十斬り目
魔王の顔は骨みたいではなく結構イケメンだ。
阻む者がいなかったおかげで最深地へと即辿り着く事ができた。支配者に相応しい巨大な空間が待っていた。
「踏み込んで唐突な面に張り合わされるばかりだった。端から端までずっとそうだった」
そして羅瑠渡達を待っていたのは…
「最後まで唐突な出来事が続いた…」
魔王だった。亡骸となって横たわっていた魔王。の真上に立っていた何かだった。全員かかって対峙した…魔王でないならそれ以下だと勝算は早くも見えていた。ただ幻覚過ぎなかった。
自分達の誇張が張り子に過ぎなかったとは。勝者は… 羅瑠渡の望み通りには実現できなかった。仲間の息と生存が絶え、一人だけ生き残った。
クロヌリに帰り、自宅で顔合わせた時、長照は炊いた最中でしゃもじを落として…すぐ駆け寄ってくれた。何も食わずに。どこも寄らずに帰ってきたのか、何があったのかも、返事ができなかった。自分らしくない、嘗ての顔が崩れ落ちた瞬間の嘆きだった。飛びかかってしがみついて、溢れる涙が衣を濡らして、今でも申し訳ない気持ちだった。
「その魔王じゃない…何かって…?」
魔王とはよく創作などでは世界を統べたりする、ある意味作品中ラスボスというイメージが濃い。だが逆説みたいで弱い。
羅瑠渡の証言からでは
「人間だった…落ち着いて後から気付いたのよ。そして、その人間と思われし存在の口を聞いた…」
“訳ねえだろう”って。
あの笑顔は旅立ちの時が最期だったのだと、別れと同じ程に胸が痛かった。今までの動機が慢心だったと負点を吟味して、羅瑠渡は見事な強者へと脱皮した。皮肉った人生が強さの根源となった。
そして…“あれ”で奴を討つ事を長くも願い続けてきた。
「私の携わっていた…その名も血鋼…まだ鞘の抜いた事のない親からの授かり物だった」
鞘と言ったら刀の事であろうと察した美悦子。
「その武器はどこにあるのですか…?」
「わからない…明確には至らないが魔王の城の中だと私は推し量る。“人間”との挑み後に手放してしまった。だから…私はまた旅に出たい…私一人で」
私は気付いた。羅瑠渡は私が若いからの上で事を遠ざけようしたのではなく、命の事を重視して危険から回避させようとしたんだ。嘗ての仲間の犬死という情けなく、無惨な最期を遭わせたくなかった。
「…邪魔者…ですか…」
「…ええ」
…私は羅瑠渡の身を縋り寄せた。
「…私は家にずっといれば…いい人なの…」
「美悦…その通りよ…」
羅瑠渡の白い手が私の頭を抱えるように迫って撫で下ろす。
「今の武道を間違っても…家から出ないで…」
出て欲しくない程、ずっと珍重にしていたのも今日で私は知った。私を家族だと思っている。ずっとずっと。
血鋼…それは…斬るよりも恐ろしい事態を招くぞ




