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しばらくして、ダンジョンに到着。入口付近は異様なほど警備が厳重だ。
「警備か?ダンジョンができた時に、システムもわからないまま突っ込んで、多くが犠牲になったからな」
「無断の侵入者排除も俺の仕事だ」
ゲートで通行証提示。
「隣は息子だ、管理人の権限で許可を与える」
親父の特別許可で通過する。
中は住居や役所みたいな建物が並び、武器や鎧で武装した人がちらほらいる。
軽トラを停め、降りると親父が荷台をガサゴソ漁り始める。
そして、鞘付きの刀を差し出してきた。
「武器はこれでいいだろ」
刀を渡された俺は、生々しさに怖さを覚える。
見た目以上に軽い。しかし、刃の存在感は異様に重い。
「……これ、普通の刀じゃないよな?」
「ダンジョン産だ、ドロップ品みたいなもんだな」
「受付に行ってくる、素振りしとけ」
「えっ、俺今日戦うの?」
「当たり前だろ、何のために一緒に来たんだ」
急に刀を渡された俺は混乱しながらも、正しい振り方もわからないまま刀を振る。
全長1mほどだろうか。手首にずしりと響く妙な感覚。
「刃が美しいな、反射してる箇所を鏡がわりに使えるんじゃ?」
そんな事を考えながらも素振りを続けていると、親父が帰ってくる。
「これがお前のダンジョンパスだ、なくすなよ」
銀色のプレートを渡される。
建物の中に入ると、冒険者たちが声をかけてくる。
「雑賀さん、こんにちは!」
冒険者たちが集まってくる。
「隣は?」
「息子だ」
「未成年に見えるけど?」
「特別許可を与えた」
「雑賀さんの息子なら強いんだろうな」
冒険者たちは期待の眼差しで見てくる。
(レベル3の雑魚なんです!そんな目で見ないでください!)
親父は受付から赤い球状のオーブがはめ込まれた杖を受け取る。
「行くぞ。1階層はゴブリンがいる、まぁ雑魚だ」
(今から、俺の冒険が始まる!)
期待と不安が入り混じったまま階段を降りる。
「あれ?意外と明るい?」
壁には数メートルごとに埋め込まれた光源が淡く光っている。
「ダンジョンが出来てから何年経ってると思ってるんだ?明るさくらい整備する」
「ゴブリンが出るまで歩くぞ」
親父はスタスタ歩いていく。
(もうちょい優しさ持って!)
「いるな」
数メートル先、物陰から赤黒い小型の生物が出てくる。
(これ雑魚なの!?思ってたより凶暴そう…小さいのに筋肉の密度がえげつない……)
「よく見ておけ、こうやって倒すんだ」
「おらっ!」
杖をぶん回す親父。
(杖で魔法使わないの!?)
ゴブリンの頭が吹き飛ぶ。飛び散る血飛沫。
ゴブリンの体は、何が起きたかわからないのだろうか。首から上がなくなってもピクピク動いている。
俺はあまりのグロさに吐きそうになる。
「大丈夫か?ダンジョンに来るってことは、こういうことだ」
親父はナイフを渡してくる。
「グロさに慣れなければ、戦うなんて出来ないだろ、胸の辺りをナイフで開け、魔石がある」
「おぇっ……わかった」
俺はナイフを受け取り、言われた通りゴブリンの胸にナイフを突き立てる。
正しい解体の仕方もわからずに、ナイフを上下に動かしていると、刃先が硬い何かにカチッと当たった。
(手、突っ込みたくねぇ…)
親父を見る。
睨んでこちらを見ている。
(これが冒険者になるってことか…)
俺は手を突っ込み、黄色い魔石を取り出す。
「黄色の魔石か」
「?」
「魔石は種類によって電気、水、ガス、石油、肥料。あと、魔力そのものを生み出すものがある、俺の杖のは魔力の魔石だ。かなり強い敵からしか入手できん」
「この残った体は?」
「ゴブリンごときは碌な素材にならん。そのうちダンジョンに吸収される」
少し進んだところで親父が言う。
「この先にもう一体いるな。喜一やってみろ、いざとなったら助ける」
俺は今から戦うのかと冷や汗をかく。
「ちょっと落ち着く時間が欲しい」
「ダンジョンにそんな時間はない」
親父はゴブリンの首を掴んでこちらに投げてくる。
(このクソ親父が!)
投げ飛ばされたゴブリンが目の前に倒れる。
(今なら、刀を叩きつけるだけで倒せる……倒す?命を奪うってことじゃねーか!…できるのか俺に)
そんなことを考えていたら、倒れたゴブリンがすぐ起き上がり、鋭い牙と泡立つ唾液を撒き散らしながら飛びかかってくる。
足がもつれ、咄嗟に刀を横薙ぎに振る。
脇腹に命中するも致命傷にならない。
(なんだよこの硬さ! もっと斬れる力が欲しい!)
「喜一、刺せ」
言われた通り、刀を突き刺す。
嫌な感触を振り払うように何度も刺す。
俺は無我夢中で何度も刺す。
「もう死んでるぞ。初めてにしては上出来だ、早く解体しろ」
涙目で解体する俺。
「まぁ、解体スキル使えば一瞬なんだがな」
(そんなスキルあるのかよ!くれよ!)
その後、ゴブリンと遭遇することはなかった。
ダンジョンの広場に出ると、向こうから数人の冒険者がこちらに来る。下の階から上がってきた冒険者だろうか?
「雑賀さん、こんにちは。13階層の灯りを補充しときましたよ」
「助かる。後日報酬を受け取ってくれ」
親父と冒険者たちが談笑していると、誰かが入口の方から広場に入ってくる。
冒険者が話しかける。
「あっ沼田さん、お久しぶりですね」
沼田さんと呼ばれた男性は中年の腹出たおっさんだ。
Tシャツのラフな格好。空のカゴを左手に、右手に鎌を持っている。
「いやー小遣い稼ぎにちょっとね」
(こんなおっさんが戦えるのか?)
その時、ダンジョンからゴブリン20体ほどが湧き出るように現れる。
「ちょうどよく湧いてきてくれたね」
沼田さんはニコニコしている。
冒険者が騒ぎ始める。
「沼田さんのアレが見れるぞ!」
「出るか!あの技!」
(そんなに強いおっさんなのか?)
「沼田さんの高速稲刈り!」
(稲刈り?何言ってんだ?)
「沼田っ!」「沼田っ!」「沼田っ!」
沼田コールが発生する。
「そんな大したもんじゃないよ」
沼田さんが中腰になる。ゴブリンが襲い掛かろうとしている。
「目を離すなよ」
親父が言う。
「えっ?」
次の瞬間、沼田さんが視界から消える。
気づけばゴブリンがバラバラになり、沼田さんはカゴに入った魔石を数えている。
(何が起きた!?)
「沼田さんって何者?」
親父が答える。
「農家だ」
「農家!?そんな強いわけないだろ!?」
「いや、ダンジョンで安定して強いのは農家だぞ?」




