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箱庭世界の壁魔法使い  作者: 白鯨
一章 箱庭の神様見習い
17/33

17.鉱床調査と発見


「あのクソ親父め、結局自分だけ行かないで済ませやがって」


 ガンボ村へ向かう馬車に揺られながら、昨日のギルマスとのやり取りを思い出し、再び怒りが再燃した。


「そう怒るでない。いきなり冒険者ギルドと鍛冶ギルドのギルドマスターが一緒に出向いてみろ。何かありますと言うてるようなもんじゃろ」


 どこぞのギルマスと違い、自ら御者をしてくれているモヒートさんがそう言って私を窘めてくる。

 そういう理由なら理解できるが、ムカつくもんはムカつく。


 にしても、話し合いの翌日に即出発とは、この人はこの人でフットワークが軽いよな。


 ガンボ村へは鍛冶ギルドの馬車で向かっている訳だが。

 馬車の中には私とセヨン、そしてツルハシやらの採掘に使う道具が乗せられている。

 コタロー便も流石に重量制限に引っ掛って使えなかったのだ。


 ゆったりとした馬車の旅。

 聞こえはいいが私の性には合わないな。


「んで? セヨンは何してんだ?」

「昨日トンボから貰うたコバルトで合金ば作っとーっちゃん」


 昨日の話し合いの後、ギルマスに奢らせて夕飯を食べている時に、セヨンがコバルトとミスリルを売って欲しいというから、一年間の食費免除で売ったのだ。

 相場よりはるかに安いと言われたが、私が持っていても使わないしセヨンになら友達価格ってことでいいだろう。


「合金?」

「コバルトは合金にすると強度が上がるっちゃん。それば基盤にミスリルで回路ば作って、魔道具ば作るったい。元々が同じ鉱物やけん、ミスリルとん相性もよかぞ?」

「ほーん、ようわからん」


 しかしセヨンの錬金術は見ている分には面白い。

 生前も物作りの特番で、工場の作業行程の映像とか流れていると、ついつい眺めてしまうのだ。

 詳しいことはわからないが、なんとなくスゲーってなるやつ。


「な、なんじゃありゃ!」

「どうした!」


 セヨンが楽しそうに作業しているのを、時間を忘れて見ていると、モヒートさんが突然驚きの声をあげたのだ。


 魔物か盗賊でも出たのかと、私はすぐに御者台に上がった。

 これでも名目上はセヨンとモヒートさんの護衛として来ているのだ。


「なんであんな所に砦があるんじゃ……ワシは地図を読み間違えたんか?」

「いや、方向は合うとったはず……そもそもラプタスん街近くに砦なんて無か」


 どうやらモヒートさんがガンボ村の壁に驚いただけらしい。

 私に続いて御者台に上がったセヨンと一緒に頭をひねっていた。

  

「なんだよ、驚かせんなよ。あれがガンボ村だよモヒートさん」

「なに! 村なのか?! あれが?!」

「あー、きっと自衛意識が高いんだろ?」


 壁は私が作ったんだけど、説明すると面倒になる。

 そう思い誤魔化すことにした。

 ガンボ村に着いたら村長さん達にも言い含めておこう。


「コボルトに襲われたんばいね? あれだけ立派な壁があれば襲われたっちゃ問題なかむぐっ!」

「こらセヨン。余計な事を言うな」


 勘のいいセヨンが私に疑いの目を向けてきたので、口を塞いで黙らせる。


「むぅ……とりあえず行けばわかるか」


 モヒートさんには聞こえていなかったらしく、馬車を進めることにしたらしい。

 ふぅ、危なかった。


「おーい! そこの馬車! 一体何者だ?」


 遠目に馬車を見つけたらしく、入口に立っている集団が声を掛けてきた。

 この声はザトシさんか。

 見れば村長さんの姿もある。

 どうやら昨日に引き続き、門の設計でも考えているらしい。


「村長さんザトシさん! 私だトンボだ!」


 こちらからも声を掛けながら近くまで馬車を進める。


「トンボさんか!」

「おお、トンボ殿! 昨日はありがとうございました。今日は何か忘れ物でもありましたか?」

「いや、今日は護衛依頼で……」

「護衛ですか? こんな村に……?」

「ミスリルの件で、ガンボ村の力になってくれそうな人をな」


 そう言ってセヨンとモヒートさんを紹介しようとしたら、二人揃ってガンボ村の壁と堀をガン見していた。


「こりゃ土を固めて石壁のように積み上げたのか? 相当な魔法技術がないとできんぞこれは」

「堀ば掘った土ばそんまま使うたんごたーなあ。それより固めた石同士ばくっつけとー接着剤が気になる。こげんのは見たことなか」


 この鉱物バカと研究バカ共!

 自由人過ぎるだろ。


「おい二人とも! 先ずは挨拶しろ!」

「むおっ! う、うむ、ワシはラプタスの街にある鍛冶ギルドのギルドマスター。モヒート・キュラソーじゃ」

「お、同じく鍛冶ギルド所属、カルーア工房んセヨン・カルーアや」


 私に怒鳴られようやく自己紹介するバカ二人。

 私のペット達より手間がかかりそうだな。


「なんと鍛冶ギルドの! これはようこそおいでくださいました。儂はこのガンボ村の村長をしているサンペと申します」

「俺は狩人のザトシです」

「うむ、実はトンボ嬢ちゃんから、この近くでミスリルの鉱床が見つかったという報告があっての。鍛冶ギルドと冒険者ギルドが共同で鉱床の埋蔵量などを調べに来たんじゃ」

「なるほど、確かにコボルトの巣にミスリルの鉱床が眠っていると、トンボ殿が教えてくださいましたが……」

「埋蔵量が十分ならガンボ村はミスリルの採掘拠点として大いに富む事になる。仮に十分な埋蔵量が見込めずとも、村の男を残ったミスリル採掘の人足として雇わせてもらう。勿論給金は渡すし、領主様へ援助の口利きも約束させられたわい」


 チラリと私の方を見てくるモヒートさん。

 私は顔を反らして口笛を吹く。

 ちなみに私はちゃんと吹ける人だ。


 そもそも私の優先度は、ミスリルよりもガンボ村なのだ

 だから調査に行く事が決まった後、モヒートさんに“お願い”したのだ。

 ミスリルの量が少ない場合は採掘にガンボ村の人を使って給金を出すようにと。

 

「なにがお願いじゃ、あれは脅迫と言うんじゃ」

「ちょっと商人ギルドへ話を持って行こうかなって言っただけだろ」


 巻き込む人間が増えればうま味が少なくなるのだ。

 ギルマスが他者の介入を嫌った時点で、脅は……いや、説得に使えると思っただけだ。


「つまり、この村は資金面でも助かると?」

「そういう事じゃな」

「トンボ殿! ありがとうございます! 貴女様は村の救世主! いや、守護女神です!」

「はぁ?!」


 ガバッと凄い勢いで土下座しはじめた村長。 

 勘弁してくれよ、女神って私はそんな柄じゃないだろ。


「トンボ照れとーな。あいらしかぞ」

「セヨンもからかうんじゃねぇ! とにかく頭を上げろよ村長さん」

「しかし、あながち間違っていないがな。この壁もトンボさんが用意してくれた物だし、本当に何から何まで世話になりっぱなしだ」

「あっ! ザトシさんシー!」

「ほほう、詳しゅう聞かせてもらいたかねトンボ」

「なぁにが自衛意識が高いじゃ」


 ニヤニヤしながら寄ってくるバカ二人。

 クソっ! 面倒臭ぇ奴らにバレた!

 

 この後鍛冶ギルド組からの壁についての質問攻めは、用意して貰った村長宅の寝床に入る間際まで続いた。

 


ーーー



 また茂みから飛んできた矢が壁に当たって弾かれた。


「なんと言うか、豪快じゃのう……」

「こげん方法もあるんばい……」

「俺は前もこれがよかったな……」


 感心したような呆れたような、どっちともとれそうな言葉が背後から聞こえる。

 ギルマスとセヨンとザトシさんだ。

 

 やっている事は簡単だ。

 私達全員を壁魔法で囲んで移動しているだけ。

 わざとコボルトの罠を発動させて無力化する。

 いわゆる漢解除ってやつだ。


 ギルマスははじめにやった方法でスルーしろと言っていたけど、斥候の派遣にどれだけ時間が掛かるかわからないので、洞窟までの道のりぐらいは安全にしておこうと、この形になった。

 

 今はガンボ村の鉱床調査二日目。

 といっても初日は村人全員に説明するので終わったけどな。


 ガンボ村の皆は、ミスリル発掘を前向きに受け入れてくれた。

 もっと変化を嫌う人がいると思っていたけど。

 

「そりゃコボルト退治や壁を作ってくれたトンボさん直々のお願いだったからな。皆本当に感謝してるんだ。村の中を歩いて感じただろ?」


 確かに、私が壁を作った冒険者だと知ると、皆口々に感謝を述べていったし、子どもの間じゃピンとエメトごっこなる、土で壁を作る遊びが流行っていた。

 ザトシさんの娘ちゃんは、ザトシさんに色々聞いたのか私のモノマネをしていたが、将来が心配だ。

 自分で言うのもあれだが、言葉使いとか。


「ジウロのお袋さんなんて拝んできただろ?」

「あれは本当に参った」


 村長といいお袋さんといい、お年寄りからの好感度がヤバい。

 マジでトンボ教を作りそうな勢いだった。


「冒険者は人に好かれてなんぼじゃ。嫌われ者はランクが上がらん。その点トンボ嬢ちゃんは冒険者として大成しそうじゃな。ロジャーが重用するのもわかるわい」

「トンボは優しか子やけんね。うちん命ん恩人や」


 ギルマスに重用されても嬉しくないが、人に誉められるのは恥ずかしい。

 

 ちなみに壁の件はなんとか「うちの子は優秀」で押しきった。

 なんだかんだ言いつつ、セヨンが「特別な方法で作った魔法生物」と後押ししてくれたのだ。

 いい加減セヨンには箱庭世界の事をバラしてしまおう。

 

 私この調査が終わったらセヨンに告白するんだ。


「着いたようじゃな。ここが件の洞窟か……」

「洞窟の中には罠はなかったはずだ」

「そしたら早速調査ばはじめるぞ! 馬車で新しゅう作ったミスリル共鳴探知機ん試運転や!」

「うむ! 行くぞセヨン!」


 鍛冶ギルド組はツルハシと、何かを計測するらしい魔道具を片手に洞窟へ突撃していった。


「罠はないけど魔物が新しく住み着いてるかもしれないだろーが!」


 研究バカと鉱物バカがまた勝手に動き出した。 信じられねぇ。あれで鍛冶ギルドのギルマスとカルーア工房の工房主なんだぜ。

 

 私とザトシさんは慌てて二人を追いかけた。


「うちんミスリル共鳴探知機によれば、埋蔵しとーミスリルん量は多そうばい」

「どういう原理なんだそれ?」


 セヨンが手にした棒を壁に向けて振りながら、確信したように言うので聞いてみた。

 見た目はピカピカ点滅する金属探知機なんだよな。

 セヨンの動きまでそっくりだ。


「ミスリルは魔法銀やけん当然魔力ば発しとー。魔力は同じ魔力同士引き合う性質があるけん、そん魔力と同じ魔力ば波長として流せば、引かれた魔力分ば光量で教えてくるーったい」

「つまり、ミスリルが多いほどよく光るってことか」


 実際にやってる事も金属探知機と一緒だった。

 しかし、凄い技術力だな。

 馬車に乗ってる半日位の間によく作ったもんだ。


「うーむ、地層を見る限りこのまま洞窟を伸ばすように掘り進めば、まだまだミスリルは出てくるな」


 モヒートさんは昔ながらっぽく、ツルハシで実際に掘って確かめている。


 ハイテクのセヨンとローテクのモヒートさん。

 二人共にミスリルの埋蔵量は多いと太鼓判を押してくれた。

 

「よしっ! やったなザトシさん!」

「あ、ああ、本当に村の近くにミスリルの鉱床があるなんて、驚きすぎて実感がわかないが……これで妻と娘を飢えさせなくて済みそうだ!」


 実感がわかないなんて言いながら、目に涙を浮かべているザトシさん。

 私だって昨日、可愛い娘ちゃんにも美人の奥さんにも会っているから、その目を見ていると嬉しくなってしまう。


「むっ! なんかここからおかしな魔力反応が返ってくる! ミスリル共鳴探知機に異常な反応が見らるー程ん魔力量や!」


 その時。セヨンがミスリル共鳴探知機が異常な魔力を検知したと伝えてきた。


 モヒートさんがその場所をツルハシで叩くと、先ほど掘っていた時とは違う音が響いた。


「この先に空洞でもあるようじゃ。どれ、叩き壊すから離れとけ!」


 そしてモヒートさんが壁を壊した先に、それはあった。


「こ、これは!」


 天然の洞窟を侵食するように広がる、明らかに人工の石畳と石柱。

 薄暗い洞窟を照らす篝火。


 モヒートさんが絞り出すようにそれの名前を口にした。

 

「間違いない。こりゃ……ダンジョンじゃ」

「なぁ……ガンボ村って呪われてんの?」


 そこには迷宮の入口が、まるで魔物の口のように開かれていたのだ。


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