七話
横目の道路に並ぶ車の列、その何割が仕事中の人なんだろうか。
そいつらは仕事を楽しめているんだろうか。
車の走る道路、この道を舗装した人は仕事が好きだったんだろうか。
あの道路標識を設置した人はやりがいを感じていただろうか。
さっき通り過ぎたコンビニ、店員は不遜な客の態度にも腹を立てずに接客できているのだろうか。
先月オープンしたというのに閑古鳥が鳴く回転寿司屋、誰も居ない席をまわり続ける寿司を見て、虚しくないのだろうか。
目に映る景色のあらゆる物が、誰かの仕事であり、そのほとんどが、仕事が嫌だと思いながら出来た物だとすると、そら恐ろしい。
なのに、表立って不満を口にせず、ごくごく少数の、労働に喜びを見出している人に無理矢理同調しようと偽っているんだ。
全くもっておかしな世界だなあ。
まるで地獄じゃないか。
じゃあ今の僕の立ち位置が天国かと言えばそれも違う。
世間に対して申し訳ない気持ちも僅かにあるし、
何よりお金が増える目処がない。
ああやだやだ。貧乏は心まで貧しくさせるのだもの。
じゃあ働くか?
馬鹿を言うな。僕は働きたくないんだ。
少なくともしばらくは充電したい。
だけど充電が終わればまた働かなくてはいけない。
働かなくては生きていけないなら、死んだように働くしか残されていない。
そのことを考えると憂鬱で胃がキリキリしてくるよ。
きっと親父も今、こんな気持ちなのかも知れない。
家に帰ったら、今後について親父と少し話してみようと思った。
仕事を辞めて一週間だ。
流石に親父も少しは何か考えているだろう。
「おう、おかえり。なんだ遅かったな。昼飯どうするよ?
ほら、最近できた寿司屋、出前やってるらしくてな。
寿司の出前とか一回やってみたかったんだよな。
特上いこうか特上!」
はっはー、この人さては、今に至ってまだ何も考えてないな?
結局、身のある話など微塵もなく、僕と父は昼間から酒を飲んで寿司を食った。
これを握ったのが職人だろうがバイトだろうが、仕事が好きかどうかなんてわからないが、寿司は美味かった。
こうやって世界はまわってしまうのだろう。




