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五話


あれから一週間がたつ。


ヒステリックがぶり返した姉と、完全に開きなおった父との口論はなかなかに見物だった。

アルバイトさえしたことない癖に、現実が見えていないと怒る姉。

仕事を辞めたというのに、どこ吹く風な父。


これが赤の他人達であったなら、最高に楽しめたことだろうが、

残念ながら身内でした。


かくして姉は家を出、今は彼氏のアパートに転がりこんでいるらしい。

養ってくれる存在がいるなんて羨ましいぜ。



「あー、そろそろ帰るか」


無職が二人家の中でゴロゴロしているのは、なかなか不健全な絵柄だろう。

そう考えて外をブラついていたが、

びっくりするほど何もする事がない。

かと言って仕事する気はもっと無いのが我ながら救えない。

仕方なく公園のベンチに座っていたが、そろそろ限界だ。

帰ってコーヒーでも淹れて飲もう。

気分的に、缶コーヒーを買う金さえ勿体無いのです。



さて、帰路を急げば家の門前に三十代くらいの男が居て目が合った。


「うちに何か御用ですか?」


「ああっ、もしかして山室さんのお子さんですか?」


男はスーツの小綺麗な身なりで、いかにも営業といった風情だ。

「そうですが」と応えると、慣れた手つきで名刺を僕に差し出してくる。


「申し遅れました。私、山室さんと同じ営業部署の三味屋と申します。

山室さんにお話があって来たのですが、呼び鈴を鳴らしても反応がありませんで」


「きっとまだ寝てんでしょ。最近は昼頃になるまで起きてきませんよ」


「それはまあ、なんとも、その、驚きです」


この三味屋さんは、バリバリ働く親父しか知らないのだろう。

驚くのも無理はない。僕だってあんなダラけた親父は目を疑う。


「良かったら中に入りません?父を叩き起こしますので。

それと、わざわざこんな年下に、敬語使わなくていいですよ。

僕は得意じゃないので、このままじゃあ僕だけ失礼なことを言ってしまいそうだ」


「そういうことなら、お言葉に甘えさせていただきますよ」


おいおい全然口調がかたいままですけど?


カチャンと鍵を開け、ドアを開こうかという時、三味屋さんが訊ねた。


「ところで、山室さんから息子さんはガソリンスタンドで働いていると聞いていたのですが、

今日はお休みなんですか?」


まあ、何気無い質問のつもりだったんでしょう。

だから、なるたけ僕も何気無い風を装って言ってやった。


「いや、ニートです」



「うぉぉ、マジかよアンタ…」



おいおいいきなり馴れ馴れしいぞ三味屋?

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