第13話 灯る
「私が教えてあげるわ。あなたがするべき戦い方を──」
「オレのするべき戦い方……」
「リヒト、もう一度手に火をだしなさい」
「こ…こうッスか…?」
リヒトは手に力を込め手のひらに火を出現させる。
「エイン、今の見てどう思った?」
「……俺は魔法のことはよくわからないんだが」
「わからなくてもいいわよ。素直に思ったことをいいなさい」
「……そうだな。手に力を込めてから火が出てくるまでに間があったな」
「そう、それよ。リヒトは体外に魔力を放出するのが苦手なのよ」
ホロスは正解と言わんばかりにエインに指を向けた。
少し間が空き控えめに、リヒトはおずおずと口を開く。
「……だから魔法を使うのが下手なのでは…?」
「そうだけどそうじゃないのよ。リヒト、今度はただ手に魔力を集中させなさい。火は出さなくていいわ」
「こうッスか…?」
「そうそれ! 自分で気が付かない?」
「え…? どういうことかオレにはさっぱり……」
リヒトは手に魔力を込めた状態で困惑。自分は何を試されているのか、何に気が付けていないのか、全く持って理解できていなかった。
「はぁ…。しかたないわねぇ。もう直接言っちゃうけどあなたは体外の魔力操作は下手だけど体内での魔力操作は異様に上手いのよ。手に魔力を集中させるのも速かったわ」
「……マジすか!? オレにそんな才能が!!!」
自分の隠れた才能を教えられ子供のように無邪気に喜びを見せるリヒト。しかしそれをエインが遮るように口を出す。
「……なあ、水を差すようで悪いが結局リヒトは魔法が下手ということには変わりないんじゃないか? いくら体内での魔力操作が上手くても体内で魔法を発生させたら大変なことになるだろう?」
「た…たしかにそうッスね……」
一転してリヒトはがっかりとした様子を見せた。ころころと分かりやすく表情を移り変えるその姿は子供のようにも大型犬のようにも見える。
「それも何の魔法を発動させるかにもよるのだけれどもね。まぁ一つ言えることは体内で火を出すのは自殺行為だということ。でも魔法を使わなくても強くなれるわよ。エイン、なぜかわかるかしら」
「俺に振るのか。…そうだな。たしか魔力は身体能力も向上させられるんだろう? 体内での魔力操作が上手いなら近接戦が強くなるんじゃないか?」
「正解よ。魔力は体に流すだけで身体強化できる。例えば脚に魔力を多く流せばそれだけ速く走れるようになるわ」
「そ、それくらいならオレも知ってます。でもオレ近距離戦闘に苦手意識があって……。魔力操作以前にシンプルに体の動かし方が下手くそというか……」
「だったら俺が鍛えてやろうか?」
エインはにやりと不敵に笑い、そっと刀に手をかざした。
「ひぃいっ!! 光栄ですけど怖いッス!!」
おもわずリヒトは後ずさる。殺気はない、悪意もない、魔力すらも感じない。それでもリヒトはエインから底知れぬ圧を感じていた。
「私のアドバイスはまだ終わってないわよ。むしろこっちが本命ね。リヒト、弓持ってエインに向けなさい。あ、矢もね」
「い…いいんスか…?」
「いいわよ」
「いや俺の許可取ってからにしろよ。まあ別にいいが」
「いいんだ……」と思いつつリヒトは遠慮がちに弓を構える。弦がしなり矢先が羅針盤の針のようにぴったりエインに向けられる。
「どうよ」
「ああ、なるほどな」
「え、え、なんスか!? わかってないのオレだけスか!?」
二人だけで通じ合っている様子を見てリヒトは困惑。更にこの構えている弓もいつまでエインに向けていていいのか分からずあたふたするばかりだ。
「エイン、説明してあげなさい」
仕方ないなという素振りを見せエインは話を始める。
「リヒト、お前が弓を持った瞬間お前と弓の気配が同化した。多分魔力を込めたんだろ?」
「そうッスよ…? なにかおかしいことでも…?」
「もう一度言うぞ。弓を持った瞬間だ。おかしいと思わないか? お前は体外の魔力操作が苦手なはずなのに」
エインはとある言葉を強調した。それを聞き、リヒトは何かを察したようで口から空気が漏れ出るように僅かに声が出る。
「あっ…………」
「もうわかったかしら? あなたは弓を自分の体と同じように認識しているの。だから弓に魔力を流すのが淀みなかったわけ。そして弓を自分の体のように扱えるのなら──」
──体内で魔法を発生させたら大変なことになる
「……弓に魔法を発生させればいい……」
瞬間、矢が灯る──
「やればできるじゃない」
「うおおぉ!! できました!! すごい!! 本当にお二人ともありが……あっ……」
興奮したリヒトはうっかり弦を離し燃え盛った矢がエイン目掛けて発射されてく。途端にリヒトの顔が青ざめるがエインとホロスは至って平静。
「全く…しまらないな……」
エインは刀を抜き切先を矢じりにあて受け止める。
「ごめ…すげっ…ごめんな…すげっ……いや、ごめんなさいエインさん!!」
やかましいなコイツ……
「でもやっぱり言わせてください!! エインさん凄すぎます!!」
「お前のもなかなかだったぞ。最初に喰らったやつより手に衝撃が響いた」
「エインさんマジでかっけぇ……」
リヒトは目を輝かせてエインを見つめる。
人の話聞いてるのかコイツは……
「というわけで弓を魔力の中継地点にして魔法を放つ。これがあなたに向いてる戦い方よ」
「弓を……中継地点に……」
リヒトは何を思っているのか感慨深そうに弓を見つめている。
「なあ、ホロス。これ俺に弓向けさせる意味なかっただろ」
「ちゃんと受け止められたじゃない」
「答えになってないぞホロス」
そんなやりとりをしているとリヒトが深々と頭を下げてきた。
「本当にありがとうございます! こうやってまともに魔法を放てるときが来るなんて……お二人に出会わなければオレはずっと燻ってたままでした」
「ホロスはともかく俺はなにもしてないと思うが」
「いえ、エインさんにも……」
「だから俺も手伝ってやるよ」
エインは鞘のついたままの刀を手に取る。
「へ?」
「魔力による身体強化。やっぱりそっちも必要だろう」
そしてそれで自身の左手をペシンペシンと叩く。
「はえ…?」
「ちゃんと魔力で強化しろよ。でなければ骨の一本や二本、簡単に折れる」
「ぎゃ~~~~~!!!!」
第13話 灯る




