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第一話:英雄の潰える日

※読者の皆様へ


本作には一部、戦場における暴力描写・残酷な表現(流血や部位の損壊など)が含まれます。苦手な方はご注意のうえお読みください。



ある日、桃から生まれた英雄が人里を襲う悪しき鬼を鬼ヶ島へ渡って退治して,めでたし、めでたし。


だが、母は教えてくれなかった。 生き残った鬼たちが、奪われた財宝と殺された同胞の血の恨みを抱えて、人間の里へ押し寄せてきたその後のことを。


奪っては奪い返し、殺しては殺される。 泥沼の連鎖は五十年絶えることなく燃え続け、「桃太郎」の名は討ち死にするたびに次の者へと引き継がれる『記号』となっていた。


「——くそっ、次から次へと……!」


雨が泥を巻き上げる戦場で、俺——凛は日本刀を叩きつけるように振り抜いた。 刃が雑兵鬼の首筋を浅く裂き、黒い血が飛散する。怯んだ隙に蹴り倒し、そのまま泥の中へ踏みつけてトドメを刺した。敵を率いている将がいる本陣へもうすぐらしい。


これで三度目の出陣になる。 俺には特別な才能も、物語に出てくるような英雄の力もない。ただ、人より少しだけ運動神経が良く、人よりは多少剣の振りがマシという程度だ。 だが、その「少しのマシさ」と、二度目の戦争で身につけた引き際の勘だけで、俺はこの地獄を生き延びてきた。


しかし——今日の戦況は、これまでのどれとも違っていた。


「ひぃっ、……あがっ!?」 前方を走っていた新兵の首が、前触れもなく飛んだ。 血の雨が降り注ぐ中、地鳴りのような足音が響く。


「退くな! 陣形を保て!」 隊長の声が上がるが、それを遮るように圧死するような殺気が戦場を支配した。


雑兵の群れが割り割れ、そこから「奴ら」姿を現す。 鬼どもの頂点に君臨する、上位三体。


巨木のような腕や足に漆黒の肌を持つ、黒鬼。

全身から炎のような熱気を放ち、異様な殺気を撒き散らしながら大剣を振り回す、赤鬼。

そして、鋭い眼光で戦場全体を冷酷に見渡す、青鬼。


青鬼は人間と同じくらいだが,黒鬼,赤鬼は人間より3回りほど大きく見えた


「な……なんだよ、あれ……」


二度の戦場を経験した俺の直感が、全身の産毛を逆立てて鳴り響く。 ——勝てない。 あんなもの、人間が束になって挑んだところで、ただの肉塊に変えられるだけだ。


絶望が伝染し、前線が崩壊しかけたその時。


戦場の頭上を疾風が駆け抜けた。


目の前にいる隊長が安堵の表情を浮かべる.


頭上から舞い降りたのは、鮮やかな吉備津の陣羽織。背には、誇り高き桃の紋章。 九代目 桃太郎だ。


「桃太郎様だ……!」 「助かった……! 桃太郎様が来てくださったぞ!」


兵士たちから怒号のような歓声が上がる。 初代から引き継がれてきたその名は、人類にとって唯一の希望であり、精神的支柱だった。 桃太郎が振るう大刀が一閃するたび、鬼が次々と消え,勢いが増していく。


これならいけるかもしれない。俺も、周りの兵士たちも一瞬そう思いかけた。


だが——鬼どもは、過去の失敗を繰り返すほど愚かではなかった。


「……コロセ」


青鬼が低く呟いた瞬間、三体が同時に動いた。 一対一の誉れなど、奴らには最初から存在しない。ただ「桃太郎」という概念を殺すための、徹底的な強襲。


青鬼が地面を滑るような速度で桃太郎の死角へ潜り込み、その刃で桃太郎の膝裏を深く切り裂いた。


「ぐっ……!?」


体勢を崩した桃太郎へ、間髪入れずに赤鬼が猛攻を叩き込む。重い大剣の一撃が大刀と激突し、甲高い音とともに、英雄の武器が遥か高空へと弾き飛ばされた。


「しまっ——」


膝をつき、丸腰となった桃太郎。 その頭上に、暗雲を遮るようにして巨大な影が覆いかぶさる。


黒鬼が、大樹のような金棒を両手で引き絞っていた。


桃太郎が凛の方を振り返り、何かを言おうと口を開かけた



——その瞬間。






——グシャッ!!






言葉よりも早く、鈍く重い音が戦場に響き渡った。 肉と骨と金属が混ざり合う、嫌な音。


最後の言葉すら残すことを許されず、頭部を叩き潰された英雄の胴体が、力なく泥の中へと崩れ落ちる。


「あ……」


声にならなかった。 周囲の歓声は一瞬で消え去り、耳が痛くなるほどの静寂が訪れる。





黒鬼が、血と泥に濡れた金棒を持ち上げ、天に向かって咆哮を上げた。それに応じるように、数千の鬼たちが地鳴りのような勝ち鬨をあげる。


「う、うわあぁぁぁああっ!!」



「桃太郎様が……桃太郎様が死んだぞーっ!!」


兵士たちが武器を投げ捨て、パニックを起こして逃げ惑い始める。


隊長と俺は、動かなかった。ううん、動けなかった。 泥にまみれ、首から上を失った陣羽織の骸を見つめたまま、足が地面に縫い付けられたように震えていた。


二回の戦争を生き延びた俺の経験と自信に、冷酷な現実を突きつけてくる。


光は消えた。 英雄は死んだ。


……俺たちは、これからどうやって、この終わらない戦争を終わらせればいいんだ?


(第一話 完)

読んでいただき感謝感激です!!!!!!!!!!!!

AIをふんだんに使用していますが

これからも「桃太郎を継ぐ者たち」をよろしくお願いします!

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