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終 章:約束の大地

 アラムが確保した襲撃者を回収した馬に積み、一行はハリルードを後にした。予め呼んでいたのかイスファ氏族の巡検隊が迎えに来ており、生きている襲撃者たちはそのまま連行されてゆく。この後、彼らは生き証人としてアルバに戻されるのであろう。ノーサであるのか、アルバであるのかだけの違いに過ぎないが、その命は限られたものになるはずだ。

 <草原の守護者(ジョイノーサ)>であるミュトはカイル達を放免したが、ノーサの地を、イスファ氏族領を血で乱した責は、どのような形であれアルバが果たさねばならない。彼らはその生け贄の一つだ。

 彼女が言うところの「アルバの兄弟喧嘩」はこれで落ち着くのであろうか。誰よりもカイルのために、そうあって欲しいと願うカロシュだった。


 結局、あの野生の【白獣】は、彼らが湧泉に移動する際には再び姿を消していた。

 邂逅こそ成ったものの、「会った」とは言いがたい結果ではあったが、カイルはそれ以上を求めなかった。予定されていた「白獣の森」への旅程は取りやめ、カイルとエアは一路アルバに帰還する。

 ミュトとサヴィルの主従は、巡検隊の一行と共に草原に戻る。アラムはそのままカロシュ達と行動を共にし、交易都市サマルまでカイル達を送る旅を続ける。

 交易公路を通り、寄り道もなければ、ハライヴァからサマルまでは約5日。サマルには、連絡を受けたアルバの迎えが大慌てで駆けつけていることだろう。カロシュ達の仕事は、そこまでだ。


 別れ際、ミュトはカロシュを呼んで告げた。

 ノーサの守護者として、彼女はノーサの民を導く者だ。本来、かの言葉には、ノーサの意思が込められる。だが、どうにも彼女の言動は……カロシュに安寧と、新たな困惑と悩みと、そして苦笑をもたらすものだった。


「あの子は森に戻ったが……どうもお前が気になるようだ? 【白獣士】に戻りたくなったら、いつでも言うがいい。カシュからお前を貰うことにする。アヴジャドもそれが本望だろう」

「あの方をご存じでしたか?」

「彼は“ノーサ”だったな。守れなくて済まなかった。誰にも依らない“ノーサ”である者を守ることが、私の使命なのにな」

「……多分、ジョイノーサであっても、あの方は“守られよう”とは考えなかったと思います。私が勤仕したのは、そういう方でした」

「実は私もそう思うぞ? こんな小娘に大人しく守られてくれるような男じゃなかった。だからこそ、面白い男だった。彼ならば、このノーサをもっと面白いものにしてくれただろうに。

 ――私が気に入ったノーサの者は、次々持って行かれる。残ってくれるのは、ジョシャ達だけだ。 ――お前はどうするのだ?」


 軽く、そして重い問いかけ。だがカロシュの心は既に定まっていた。


「……俺は“ノーサ”のままでいようと思います」


 ひとかけらの物惜しみも感じさせず、『ならば、それでいい』と、ミュトは言った。

 彼女もまた“ノーサ”だ。誰よりも孤独を誇りとする者。だが、孤独と寂しさは異なるものだ。孤独とは、ただ独りで生きてゆくことでは無い。


「知っているか? ジョシャやシュザは決して強い人間じゃない。むしろ弱い。だからこそ、相手を求め受け入れるのだ。

 カロシュ。『其方は“ノーサ”であり続けよ。』 それがノーサの意思だ。伝えたぞ?」


 預言者の、裁定者の瞳で、ミュトは彼を見据えた。カロシュが彼女の手を取ることはない。そのことを、初めから知っている者の瞳だった。


「さて。ここからはシュザとしての“頼み”だ。今後もアラムをよろしく頼む。……あれは私たちの側に置いておくと、却って暴走するからな……。時々、息抜きに戻してやってくれればいい。翼猫と同じだと思って、適当に構ってやってくれ」

「アラムが納得しませんよ? 悪い言い方ですが、彼の【飼い主】はミュト殿だけなのですから」

「大丈夫だ。あれは、どこまで行っても<ジョシャ>だ。躾けるまでもない。ちゃんと自分の居場所を知っている」

「ですが……」

「サヴィルでは無理だからな……。

 お前とアラムで、私に“遊び”をもたらしてくれると嬉しい。面白いことがないと、私は自分で引き起こしてしまうのだ。だからアラムは一生懸命“遊び”を探してもたらしてくれるぞ?」

「…………勘弁して下さい……」


 やはりアラムの主だ。ハライヴァでの彼の気持ちが、あの憔悴が、心底納得できた。


* * * * * 


 サマルに着いたその翌日。

 カイルをアラムに任せて、早朝からカロシュはエアと二人、草原に出た。サマルを南に2刻ほど行くと、そこはカシュ氏族領に入る。――どうしても、自分の大地で彼女と話したかった。


「明後日、カイル様と共にアルバに戻ります。この事態をどう収めるのか、そこはミュト殿やイスファ氏族の意向次第ですが、アルバは表沙汰にしないでしょう。――ただ、新たに一人の王族が、その地位を失うことになるでしょうが」

「カイルもそうだったのか?」

「いえ、とんでもない。カイル様は、前回3年前の騒動を上手く利用しただけです。結果だけ見ると、ノーサのおかげで解き放たれた形になりますが」


 馬を並べて草原を歩みながら、二人はいつもと同じように会話を続ける。その様子には、特段の変化は感じられない。


「この旅が終わるまでに、という約束だったな」


 騎乗し前を向いたまま、カロシュは意を決して言葉を繋いだ。


「俺は“ノーサ”であり続けるだろう。やはり“降りよう”とは思わない。

 そして、俺の目に映るお前――エアーシア・イーレン・ドナンという人間も、同じに見える」

「そう……。それでこそ、貴方ね」


 エアの答えは短く、半ばその回答を予期していたのかも知れない。誰にも寄らず、誰にも依らない“ノーサの民”である彼を、エアは好いたのだ。その覚悟はあったのだろう。


「私も……カイル様の守護騎士を降りようとは思っていないわ……。まだまだ甘やかして差しあげないと。油断すると、すぐに“以前のあの方”に戻ろうとなさるのだから」


 努めて平静を装う声。だがその語尾は僅かに乱れている。今のままでは共に歩むことの出来ない二人なのだ。そのことは、お互いが一番よく知っていた。


「これ……本当は返すつもりだったの。でも、やはり貰って帰ってもいいかしら」


 エアが懐から取り出したのは、あの夜、ニネヴェで彼女に手渡したカロシュの額帯だった。そういえばアラムの激高で忘れていたが、あのまま彼女が持っていたのか。彼女の白い手の中で、濃黄の細帯が揺れる。


「意味あるものだとは知っているわ。でも、だからこそ持っていたいの」


 エアはぎゅっと手の中の額帯を握りしめ、口元に運んだ。瞳を伏せ、強く(こいねが)うその想いを、カロシュは見つめる。


「――――いや、それは返してくれ」


 ビクッと震える彼女の肩。強く握りしめる手から垂れ下がる額帯の裾が、小刻みに震え始める。100を数える程の間だったろうか。彼女は、ただそうしていた。カロシュも、ただ静かに見守っていた。

 顔を上げた彼女は泣いていなかった。榛色(はしばみいろ)の瞳は僅かに潤んでいたが、そこには静かな覚悟だけがあった。


 手を伸ばしたカロシュに、エアは額帯を差し出す。細帯が手から抜け出てゆく様を、彼女は静かに見送った。

 再び手にした額帯を握り、カロシュは同じく口元に寄せる。だが、すぐさま無造作に懐にしまうと、馬から降りてエアに向き合った。


「さっき『意味あるものだと知っている』と言ったな? ノーサの民にとって、額帯が持つ意味は多様にあるが、どれについて言っている?」


 どこか挑戦的なカロシュの問いかけ。あまり見ることの無かった彼のそんな態度に、エアは答えを返しそびれた。


「ジョシャではないノーサの民にとっても、額帯がもつ最も大きな意味は、その帰属だ。自分に代わる、自分の存在だ。だから渡す相手は限られる」


 そう。ジョシャが主の額帯をまとうように、他人の額帯を持つことが出来る者は、その相手との強い繋がりを必要とする。それは家族であったり、勤仕する相手であったり、伴侶であったり――。


 カロシュは騎乗したままのエアを見上げ、強い意志を込めた真摯な眼を向けた。そして、おもむろに巻かれている自らの額帯を一つ外す。ゆっくりとしたその動作に合わせ、カロシュの白髪が揺れる。


「異性に額帯を渡すこと。――それは【ノーサの求婚儀礼】だ。

 ……俺はこう見えても儀礼には細かくてな。だから、きちんとやり直す(・・・・)

 『我、アブギダとパーリの子、カシュのカロシュ。ノーサの大地、ノーサの意思に告ぐ。

 今ここに、エアーシア・イーレン・ドナンを、我が伴侶に望む。願わくば、共に大地と風の守護を得んことを。』

 ――エア、受け取ってくれるか?」


 改めて差し出された額帯は、見た目は先ほど返されたものと同じだ。だが、そこには未だ彼のぬくもりがあり、込められた意味も想いも全く異なる。


「ノーサであることは止められない。だが、このままで終わらせたくない。

 付いてこいとも言わない。だが、離れるなとは言えない。

 俺は狡い。だが、お前に選んで欲しい」


 今度こそ、彼女は涙をこぼした。秀麗な顔をゆがませて、頬を濡らして。それでも彼女は美しかった。震える手で、エアは差し出されたその意思を受け取り、馬上から彼に躍りかかった。受け止め抱きしめたその身体は、ただ愛おしかった。


「……ノーサでは、この後どうすればいいのかしら」


 震える身体を抱きしめたままの時が過ぎ、涙を収めたエアがその胸の中で問いかける。


「どうする、とは?」

「儀礼なのでしょう? 何か、私も返さなければいけないのじゃないかと思って」

「ノーサの民ならば、自分の額帯を交換するだけだが……お前にはないからな。これだけで十分だ」

「それも何だか悔しいわね。……決めたわ。戻って貴方の色の布を買うわ。そして貴方の額帯を作るの。伴侶の仕事なのでしょ? ――再会するときには、全部入れ替えるから」


 だから新しい額帯は作らないで、今あるものも処分して、と。

 エアらしくもない可愛らしい悋気は、カロシュに新鮮なものとして映った。


「待っていてくれる? 私がこの額帯を頼りにするように、貴方は私の作る額帯で、その時を信じていてくれる? ……今はまだ、カイル様を一人にできないの。あの方には時間がまだ必要だわ。 分かってる、ひどいことをお願いしていることは。でも、貴方だから、貴方にしかお願いできないから――」

「最初にも言ったはずだ。俺もお前も同じだと。自分の選択を、一方的に降りるような人間じゃ無い。

 『付いてこい』とも言わない、といったはずだ。お前が来たくなったら来るといい。

 ――俺は待っている。ここで、このノーサで。ノーサの民として。いつでも待っている」


 今はまだ、共には居られない。“今は、まだ”。

 カロシュも自分自身を整理する必要がある。捨て置いたままのカシュ氏族を振り返り、ノーサの民としての自分の帰属を新たにするのだ。

 ノーサのどの地に住まおうと、ノーサのどこで生きようと。自分が立つ場所が自分の居場所だ。ノーサはそういう大地なのだ。誰も縛らない、誰も繋がない、誇り高き自由の大地。一所に留まらない、だがそこでしか吹かない風のように。カロシュは――ノーサの民は生き続ける。時には誰かと共に――。


* * * * *


「…………エアの荷物の中に、濃黄の布があるのだけどさ。あれ、置いていってもいいかな? 買い与えたの、アラムだろう?」

「案内人の最後の仕事として、エアさんから調達を頼まれましたからね。ノーサの案内人の誇りにかけて、ぜったい嫌です。勝手に置いていったとしても、アルバに送りつけますよ?」

「…………アラムが私の味方になってくれない……」

「ですから、私は貴方の味方にはなりませんってば。エアさんも一緒に帰るのですから、それでいいじゃないですか?」

「だから、そういう問題じゃないんだ……やっぱりカロシュを殴ってもいい?」

「貴方じゃ掠りもしませんよ。ノーサの白獣士を侮らないで下さい」

「だからアラムが彼を押さえておいてくれたら、その隙に……」

「ですから、私は貴方の味方じゃないと言っているでしょう!」


 出立の日。

 最後まで緊張感もなく、カイルはうじうじとアラムに絡んでいた。

 姉弟のような関係に見えたが、二人は、いやカイルがエアに抱く感情は、もっと複雑なものだったようだ。恋情や恋着とは明らかに異なるが、依存や執着に似たものはあったらしい。

 ある種、微笑ましいその光景を、カロシュとエアは愛おしむように眺めていた。これで最後かもしれない、この旅の間は“当たり前”であった光景。寂しさは感じる。だが惜しみはしない。ただ愛おしいだけだ。


「う~~っ。あの子もご主人の所に帰っちゃったし、私を癒してくれる存在が居ない。なんて不幸なのだろう。何だか頭が軽くて寂しいよ」

「……なんであの頭の重さに慣れてしまってるのですか。第一、翼猫はノーサの地以外には棲みませんよ。誰かが連れていったとしても、必ず帰ってきます。どれほど遠くとも、どれほど時間がかかろうとも。あれもまた“ノーサ”の生き物です」


 あの黒い翼猫は、やはり黒銀の白獣士サヴィルの飼い猫で、彼と共に草原に戻っていった。最後までカイルの頭を気に入って乗っていたが、別れはあっさりしたものだった。それもまた、カイルの機嫌の悪さに拍車をかけているのだろう。


「それにあの子――スミは、サヴィルのものですから。彼が手放すことはありませんよ。スミも彼の側にしか居ないと思います。……貴方に懐いたことが、そもそも驚天動地でしたから」


 おかげで珍しいものが見られました、とアラムは続ける。『僕、“あのサヴィル”が理不尽な顔をするのを、初めてみましたよ』と。

 あの対峙の時。カロシュ達にはとてもそんな余裕はなかったが、あの翼猫がカイルの頭に降り立ったときのサヴィルの表情は見物だったらしい。あの場で笑わなかった自分を褒めてあげたいよ、とアラムはいつもの柔和で人好きのする笑顔で言った。


 人々が騎乗する音が聞こえる。そろそろ出立の時だ。エアは何も言わず、ただカロシュの目を見つめた後、振り返ることなく自分の馬に向かった。カロシュも声をかけない。別れの言葉は必要ない。


「じゃあ、カロシュも。――色々理不尽だけど、とにもかくにも、ありがとう。最大限の感謝を、貴方に」


 カロシュに歩み寄ったカイルは、おもむろに両膝を大地につけた。そして両手を肩を抱くように交差させる。

 周りで、アルバから来た人々がぎょっとする気配がする。彼が、カイルが今示した動作は、アルバにおける第一礼式、最も正式な謝意の礼だ。アルバの彼らにとっては未だ王族としての扱いが抜けないカイルが、一介のノーサの民に行うものとはにわかに信じられないのだろう。


「ありがとう、カロシュ。私を、ただのカイルとして扱ってくれて。ありがとう、“ノーサ”に会わせてくれて」


 彼を見上げるカイルの表情と眼は、冴え渡るノーサの蒼穹のように澄み渡っていた。訊きたかった言葉がそこにあった。彼が求めたものを、カロシュは届け守ることができたのだ。


「――“ウシュクベーハ”だったか? お前もそう(・・)なんだろうな。

 カイル、元気でな」


 長い年月をかけて熟成させるというアルバの「生命の水」。完成された彼は、どのような味になるのだろう。いつか、その味を本当に味わうことができるだろうか。


「うん。カロシュも。

 そうだ、教えておきたいことが2つあったんだ。忘れるところだった」


 膝を払ってカイルは立ち上がり、悪戯な眼でカロシュに向き合った。


「まずは、ひとつめ。

 『兄弟喧嘩』に巻き込まれないためには、どうしたらいいと思う? いろいろ考えたのだけど、これが一番名案だと思うのだけど、どうかな?

 ――近くに居なければいいのだよね、きっと。今よりももっと“逃げればいい”と思わない? 兄弟喧嘩に巻き込まれないほどに遠く、彼らが手を出せない所に。ただのカイルとして生きられる所に」


 一呼吸遅れて、その言葉の意味をとらえたカロシュに、カイルは心からの笑みを見せた。諦めるのではなく、望むことで何かを捨て去ろうとしている強い瞳のまま。


「生きられるかどうかは分からない。でも私は生きるよ。そして再び“ノーサ”に会うから。また来るから。翼猫のように、必ず帰ってくるから」


 『その時は覚悟しておいてね?』と告げる彼に、『何の覚悟だ?』と空惚ける。これも彼の選択のひとつだ。自分とは違う理由で、だが自分と同じように、その立つ場所を決めたのだ。


「そして、ふたつめ」

「……まだ、言いたいことがあるのか」

「うん、大事なことだと思うよ? これはカロシュには教えておかないと、大変だから。

 ――エアは見ての通り、ずっと騎士として暮らしてきていてね。彼女には兄が3人も居て、幼少の頃から剣と戯れてきたような生活だったらしいよ?」

「……それで? 別に俺は気にしないが」

「だから、ね。ちょっと女性らしい嗜みには疎いらしいんだ。特に針仕事が絶望的に駄目でね。騎士服の繕いはおろか、針に糸を通すことすら危ういらしいんだ? 当然、刺繍なんて、騎士になって以来、やろうとしたこともないらしいよ」

「刺繍……?」

「そう。だから……カロシュの額帯が大変なことになっても、許してあげてくれるかな? まさか駄目出しなんかしないよね?」


 ――カロシュは絶句した。

 実の所、ノーサの女性は大概にして針仕事に長けている。だから、カロシュは失念していた。気にすることもなかった。


「ね? 大事なお知らせでしょう? だから布を回収したかったのだけど。アラムに止められたから仕方ないよね?

 ……でも、これくらいは意趣返しさせてもらわないと、ね」


 悪戯を成功させた子どもの顔で、カイルは声をあげて笑った。そして、どんな顔をしていいのか分からず固まるカロシュを置いて、そのまま一行の元に向かった。

 型どおりの挨拶だけを交わし、一行はサマルを出立する。残されるのはノーサの民だけだ。


「行ったな……」

「うん、静かになったね。さてと。次の仕事は、いつ頃持ち込めばいい? 今度は、普通の隊商護衛で勘弁してあげるよ?」

「……いつでも構わん。今度からは、カシュ氏族領に入る仕事でもいいぞ」

「それは嬉しいな。やっと仕事の幅が広がるよ」


 そうして、いつもと変わらない毎日が戻ってくる。


 変わらないものがある。変わりゆくものがある。変わらずにいて欲しいものがある。変わって欲しいものがある。


 それは遠い約束。生きとし生けるものが皆、生まれ抱いてきた約束。

 ここは約束の大地。風と共に、その大地に生きる者たちの物語。



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これにて完結です。お読みいただき、誠にありがとうございました。


お話を創る際、全体の主題となるような歌を勝手に決めることが多いです。

このお話では、中島みゆきさんの『with』がイメージ曲です。

あの歌の“僕”を誰に充てたとしてもイメージに合うように、と意識していましたが、やはり元歌が偉大過ぎました……。

「なろう」さんでは歌詞は一部たりとも引用不可なのでご紹介できませんが、本当に良い歌なので、この作品を少しでもお気に召していただけたのならば、ぜひ聞いてみてください。


元々、ミュトとサヴィルを軸とした話を創作しており、その余話として生まれた話でした。

うまく話を構成できたか不安ですが、「ノーサ」の設定は好きなので、いつかまた話を続けてゆきたいと思います。


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