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猫型ロボットは居なかったので
「羽根が無いから空なんて飛べない」
そんなことを言って少女は泣きました。
「羽根なんて無くても空なら飛べるさ」
ちょっとかっこいい、茶色の髪をした男はそう言って白い粉を差し出しました。
「羽根なんて無くても空なら飛べるさ」
ちょっとかっこ悪い、白い肌をしたオタクはそう言って漫画やアニメDVDを差し出しました。
「まあ素敵。これで私も飛べるのね!」
少女は笑みを浮かべながら白い粉を手に取りました。白いオタクには「キモッ!」と唾を吐きました。
少女と男が去り、ひとり残されたオタクは呟きました。
「これさえあれば空だけじゃなく、何処にだって行けるのにな」
どちらにしろ、何処へも行けやしないのに。
その後、少女と男がどうなったのかは誰も知りませんし、オタクがどうなったのかも誰も知りません。