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『AIバディ・ポチの事件簿 〜エリートを捨てた男と柴犬ポチ、AIキャロルの優しい正義〜』3話or4話のオムニバス SFコメディファンタジー  作者: 曲木 六円


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第九章 中編:『甲羅ハックと、現場のひっくり返し戦法』

これは、黄金の座布団を蹴り飛ばした男と、電子の姿で蘇った柴犬が、下町の小さな「消えた幸せ」を取り戻す物語です。怪我をする人はいません。安心して、練乳より甘い午後のひとときにどうぞ。

第九章 中編:『甲羅ハックと、現場のひっくり返し戦法』


【あらすじ】

一族は政財界に名を連ねる名家。亜那(あだ)あちねはエリートの座を蹴り飛ばし、自らドブ板の便利屋へと落とした。相棒は、亡き愛犬の魂が宿る愛車、SAI・ポチC。

前章では、地球の小学校のいじめっ子たちを「真空投げ」で涙の更生へと導いたあちね。休む間もなく、大親友となったミケタン・クロタン両大使から「湖だらけの我が星の大養殖工場が危ないニャ!」と涙の依頼を受け、再び宇宙へ。

しかし、新敵『ブラックカメタン海兵隊』のガチガチな甲羅と、緑アミーバ軍師の放った『ドロドロ液』のせいで、ポチのハッキングが完全遮断! のろのろと迫るカメたちを前に、あちねは生身の勝負に挑む!


本文

ガチガチの防壁と、にじむ焦り


ズ……シン……。ズ……シン……。

時速3キロという驚異的なのろさで、しかし確実に、カメタン海兵隊の精鋭たちがミケタン湖の第二工場へと迫る。


「猫どもめ、無駄な抵抗はやめい。我がカメタン海兵隊の甲羅は、いかなるハッキングも物理攻撃も通じぬ。このまま工場を包囲し、チュルチュルの利権をすべてブラックカメタン星のものとする!」

カメタン兵曹長がガチガチの重装甲を輝かせ、不敵に言い放った。


「チクショウ、ポチ! やっぱりハッキングは使えねえか!」

あちねは竹箒を構えたまま、額から汗をたらりと流した。


「はい、あちね殿……! 緑アミーバ軍師のドロドロ液が、電子回線という回線を物理的に塞いでいます。このままでは、工場の制御コンソールに直接パスワード『1234』を打ち込むことも不可能です!」

用務員カートの中で、ポチのドット絵がノイズ混じりで苦しそうに歪む。


「ひえぇぇ、あちね殿、早く何とかしてニャ〜!」

麦わら帽子をかぶったミケタン・クロタン連合軍の猫たちも、カメたちの圧倒的な防御力の前に、自慢の爪も通じず完全に腰を抜かしていた。



現場の閃き! ひっくり返し戦法


のろのろと、だが着実に距離を詰めてくる漆黒の甲羅軍団。

万事休すかと思われたその時、あちねは首筋から『エゴイスト』の渋い香りをふわりと漂わせ、真っ赤な鼻をピクリと動かした。


(待てよ……いくら宇宙の精鋭だか何だか知らねえが、あいつらの見た目はどう見ても『カメ』じゃねえか。ってことは、現場の理屈(ルール)は地球のカメと同じはずだぜ……!)


あちねはニヤリと不敵に笑うと、愛用の竹箒をバシッと両手で水平に構え直した。

「おい、ポチ! ハッキングが使えねえなら、現場の泥臭い物理技の出番だ。猫のモフモフども、オイラに続け!」


「えっ、何をする気だちゅ!?」

後方でドロドロしながら様子を見ていた緑アミーバ軍師が、驚いて形を歪ませる。


「そりゃっ、現場のひっくり返し戦法だぁぁーー!!」

あちねは神速のフットワーク(高速の寄せ)で、のろのろ進むカメタン海兵隊の最前線へと突っ込んだ。そして、一番大きな甲羅を背負ったカメタン兵曹長の足元へ、竹箒の先端をテコの原理でバシッと滑り込ませたのだ!


フンッ!! とあちねが細い腕に現場の火事場力を込め、箒を思い切り跳ね上げる!



甲羅のハックと、バタバタの兵曹長


ゴロンッ!!!


「ど、どわああああーーーっ!?」

銀河一の防御力を誇っていたはずのカメタン兵曹長の巨体が、あっけなく宙を舞い、そのまま背中から地面へと転がった。


カメはどれだけ堅くても、一度ひっくり返れば、短い手足をバタバタとさせて起き上がることができない!


「な、何ぃ!? 兵曹長ーーーっ!?」

「うわっ、こっちもだニャ!」

あちねの動きに合わせたミケタン・クロタン軍の猫たちも、一斉にカメたちの足元へ潜り込み、肉球パワーで次々とカメタン海兵隊をゴロンゴロンとひっくり返していく。

戦場は一瞬にして、ひっくり返って手足をバタバタさせるカメたちで埋め尽くされ、形勢は一気に大逆転した!


「フハハハハ! 兵曹長、私のドロドロ細胞の隙間から、工場の自動洗浄システムが起動してしまいましたちゅ! パスワードを入れるまでもなく、アミーバ液が洗い流されていきます〜〜!」

緑アミーバ軍師が、またしても余計な解説をしながら大慌てでプルプルと震えだした。


「軍師……貴様、また悪い癖が出たな……! 敵に有利な状況を大声で説明するなと言っているだろうがぁぁ!」

ひっくり返ったまま真っ赤になってバタバタするカメタン兵曹長の嘆きが、ミケタン湖の空に虚しく響き渡る。


「あちね殿、ドロドロ液の除去を確認! システム、オンライン! 仕様変更(アップデート)――『甲羅データ書き換え』、起動ケロ!」

復活したポチの目が液晶の中でキラリと鋭く光った。


勝負は決した。だが、あちねは竹箒を肩に担ぎ直し、ひっくり返って涙目のカメたちを見つめて不敵に笑う。

ただ追い払うだけじゃ、現場の便利屋の名がすたるってなもんだ。ここから、カメもアミーバも巻き込んだ、銀河のペロペロ大団円が始まろうとしていた!


(第九章・後編 完へ続く)


【結びの一句】

春の湖(うみ) カメ引っ繰り返り 足バタバタ


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


『AIバディ・ポチの事件簿』、あちねとポチの凸凹コンビを、これからものんびり見守っていただけたら幸いです。

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