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幽霊だと思っていたらご存命でした~心霊に興味を持った私の恋は生霊から始まる  作者: 悠日 里


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6/6

コード

「いきりょう……」


 生霊って、特定の相手に向けて恨みの念を飛ばすっていうあの……。


「まーた俺を疑う。こっち見ながら眉根を寄せない。恨んでないから安心してって、信用して大丈夫だから」

「だ、大丈夫だからなんて。信用出来ません……っ」


 顔を背けても追い掛けてくる。私を覗き込む男性の表情には余裕があって、ちょっとムッときた。

 ちょっと? いやいや、甘い甘い。私は大いにムッときているのだ。


「大いにムッとって。またおかしなことをいう子だな。まあ何であれ、その怒った顔も可愛いんだけどさ?」

「え?」


 何でわかったの。私、ムッときたこと言葉に出していないよね?


「もっ、もしかして私の心の声……?」

「うん。読めるよっ」


 えぇ~~!?


「あぁでも、(なか)に入ってる時だけかな? 心の声が聞こえるのは」

「中?」

「ほら」


 そう言って落とす視線を辿ってみると、男性の膝上から腰にかけての部分が、私の身体と重なっていた。


「どこか一か所でもこういうところがあれば、君の心の声、つまり考えていることがわかるんだ。だからこんな風に動くと――ね……?」

「あっ」


 電気が走ったかのようだった。自分の身体の中で脈打つ男性に、私は思わず吐息を漏らす。男性も熱っぽく息を零しながら、自分の腕に凭れ掛かる私を抱き留めた。


「ゃぁ……」

「嫌じゃないでしょ……心の声聞こえてるから……」

「あっ、だめ。ゃぁ……」


 意識して鏡を見ないようにした。恥ずかしいくらい、しおらしい声が溢れてしまう自分の顔なんて、きっとさっきより酷いから。


「お風呂入るんでしょ……入ろう? 一緒に」

「ま、待って……っ」


 だめだめっ、やばいやばいっ。身体を支える芯の部分に力が入らなくなってきている。

 追い打ちをかけるように肩紐を下ろされて焦った私は、エスカレートする男性を制するように言い放った。


「そっ、そんなことする人なんて嫌いです!」




 膝を抱えつつもジト目を向けてくる男性の隣で、私はご飯に手を合わせる。


「い、いただきますっ」


 さて、気にせず食べるぞ。思い上がったことを言ってしまった恥なんて、数分前であっても過去の話。それに今日の夕ご飯は贅沢に中華弁当だっ。


 細かく切った自家製焼き豚とネギがアクセントになった、黄金色のチャーハンを主体に、厚みがありプリッとした食感が期待できる海老が2尾入ったエビチリ。それから、ででーんと鎮座する大きな焼売(しゅうまい)と小さめな春巻きが一つずつ入っている。しかも春巻きにはピンクの漬物が添えてあるのに、なんと大きいザーサイまで付いているのだ。

 うん。野菜がほぼ無い。けれどこれで半額の550円。ビバ残業!


「そっか……バイト時間、延長されちゃったんだね。大丈夫?」

「え。あぁはい。店長が体調を崩しちゃって」


 そうなのだ。遅番の店長が急な腹痛で来られなくなってしまったのだ。

 だから今日私は、取れるはずだった休憩時間分と少し、残業をしてきたってわけである。


「仕方ないですよ。そもそもうちのお店、通常は3人で回してますから。お互い様です」


 一人暮らしの身。誰かにご飯を準備してもらえることもないので、中番の今日はいつも通り、休憩室で食べるはずだったんだよね。しかも早めに家でお昼済ませてからバイトに行くから、最初の短い休憩時間に食べるおやつが楽しみというか救いだったのだけれど、はぁぁ。今日はそれが無くなっちゃったからなぁ。すごくお腹空いてるんだよねぇ……早く食べようっと。


「大変だったね……」

「ちょ、ちょっとあの」


 何を最初に食べるか迷っていると、不意に頭をよしよしされた。男性から労わるように優しく撫でられ、勝手に私の鼓動は速くなる。


 い、いつも突然なんだから……。


「気にしないで食べて。すごくお腹減ってるんでしょ? 楽しみにしてたおやつも食べそこなっちゃったんだから。可哀想に……」

「は、はぁ……あれ? 何でそれを。今、私とあなたの身体は別々ですよね?」


 すると男性は私に左手を見せた。まるで指切りするように、小指を立てて。

 左手の小指には、細くて赤い紐が結んである。


「それは? えっ、私にも付いてる!」


 何かに左手を小さく引っ張られた感覚がして見てみると、いつの間にか小指に同じような紐が結んであった。


「と言うかあなたと繋がってるんですけど! 何ですかこれっ」

「コードだよ」

「コード?」

「うん。俺と君を繋ぐ赤い糸(コード)。これが付いている限り、俺は君の心と身体を共に出来る」


 男性と私を繋ぐ……?

 それなら!


「どうしたの? 突然立ち上がって。まさかコード(これ)を切ろうとした?」

「わっ」


 ハサミを取って来ようと閃いたけれど駄目だった。駆け出した私を小指が引き留める。気にかけた途端さらに引っ張られ、私は男性の腕の中へと包まれた。

 感じる熱が自分のものだと気付くのには、そう時間が掛からなかった。


「無理だよ。俺からは(のが)れられない」

お読みくださりありがとうございます。エブリスタのコンテストに参加するため、完結に向けて週一更新を目指し頑張っていきますので、応援頂けると嬉しいです。

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