7話 シャンタク鳥の卵
「それでどうするのさ、コレ……」
とりあえず、カゴの中のクッションの上に置かれた卵を見て、何の卵か説明を受けた鵜久森が指をさす。
「うーん。あのまま置き去りにするわけにもいかなかったから、とりあえず持って帰ってきたのはいいものの……」
『いっそのこと、料理して食べるのはどうだい?』
羽化したらマスコットの座を奪われそうなラプスが残酷なことを言う。
「夜闇鴉に聞くところによると、美味しいらしいんだけど」
「美味しいの!?コレ?」
「食べた後に何かあったらすまないから、食べるのはナシで」
ましろはバッテンを作り、首を左右に振った。
「でも、いいのかい?このまま何もせずに羽化を待ってて」
「マーブル社に渡すというルートもありますけど」
「可哀想なことになりそうだから、それもナシで」
「クトゥルフ生物なんだし、卵から産まれた時点で危険かもよ……」
「……私、侵食度が上がる危険性を承知の上で、シャンタク鳥について調べてみたのですが……。聞きますか、皆さん?」
「……」
来夢の言葉に、その場に居る全員が無言で頷く。
「では……」
こほん、と来夢が一幕置いた。
「シャンタク鳥とは、クトゥルフ神話における架空……の筈の飛行生物ですわ。鳥、と言いますけど、地球上のどんな鳥ともコウモリとも似つかない生物ですの」
「うーん……。どんな姿で産まれるか想像できないや」
「主にドリームランドという夢の世界に生息しており、ナイアルラトホテップに仕えている奉仕種族ですわ」
「ナイアルラトホテップ?」
「今は外なる神、と呼ばれているものとだけ言っておきましょう」
「クトゥルフ神話に出てくる神様に仕えている鳥なんだね」
「へぇ……って、ええーーっ!!?」
ましろのまとめに生半可な返答をしていた鵜久森が、シャンタク鳥の卵が入ったカゴを指差す。卵の殻が割れて、中から馬のような頭部、鱗に覆われた身体、コウモリのような翼を持つ個体がコロンと出てきた。
「キィ」
『どうやら、ホラーチックな外見のようだね。マスコットの座に食い込むまではいかないようだ』
ラプスは二本足で立ち、シャンタク鳥と並んでふんすと踏ん反りかえる。
「問題は、これからどうするか、だよねぇ」
ましろが顎に手を当てて考え込んでいると、みんなからの視線が集まっていることに気付く。
「皆さん、学校に通っていますし……」
「……つまり、自主学習中のボクが飼えと?」
一同、一斉に頷く。
「名前、何にします?」
林檎がましろに尋ねる。
「んー、シャンタク鳥だからシャンシャンとか?」
「キィ!キィ!」
まるで人間の言葉を理解しているかのようにシャンタク鳥のシャンシャンは喜んだ。
◇◇◇
「シャンシャン、おやつ食べるかなぁ?」
自室の枕元のサイドテーブルにカゴを置く。
ましろはチュロスを取り出して、カゴの外から差し出してみると、シャンシャンはパリパリと美味しそうに食べ始める。
「キィ、キィ」
『ましろ、本当にこのまま飼うつもりかい?』
「……猫琉さんを探して、預かってもらえたらなって思ってるんだけど」
『そうだね。それがいい。僕も賛成だよ』
「問題は今夜だよ。またルタルの時みたいに夢の世界に連れて行かれたら困るし」
『寝ないつもりかい?』
「うん。猫琉さんを探そう」
ましろは半袖のパーカーを羽織り、シャンシャンの入ったカゴを持って部屋のドアを閉めた。




